J2レノファ山口FCは7月11日、維新みらいふスタジアム(山口市)でジュビロ磐田と対戦し、2-2で引き分けた。勝ち点1にとどまったが、島屋八徳と川井歩がゴールを挙げ、首位チームの連勝を8でストップさせた。

明治安田生命J2リーグ第22節◇レノファ山口FC 2-2 ジュビロ磐田【得点者】山口=島屋八徳(前半12分)、川井歩(後半35分)、磐田=山本義道(前半22分)、ファビアン・ゴンザレス(後半40分)【入場者数】3560人【会場】維新みらいふスタジアム

 後半戦のスタートとなるが、今年は第23節の終了後に東京五輪の中断が入るため、チームとしての明瞭な区切りは次節を終えてから。渡邉晋監督は7月7日の練習後に、「チームにはあと二つ、中断までは突っ走ろうという話をしている」と語り、2試合多い前半戦の締めくくりに向けて強い覚悟を示した。

 レノファにとっては2試合ともにホーム戦。今季の初勝利を挙げた相手で首位のジュビロ磐田、前回対戦では人数の優位性を生かせずに引き分けに終わったブラウブリッツ秋田を迎える。このうち、今節の磐田戦はチームの現在の実力や成熟度を測る重要なゲームとなった。

島屋が先制点

 試合は序盤からレノファがボールを積極的に動かし、主導権を掌握する。前線の関係性が良く、ワントップの高井和馬、シャドーの島屋八徳と池上丈二が流動的に動いてスペースでボールを受け、さらにテンポを遅らせることなくシュートにつながるパスを送り出す。

 前半12分には早くもレノファが先制点を挙げる。敵陣中央で島屋がボールを引き出すと、左サイドに流れていた高井に預けてゴール前へと侵入。高井はスピードに乗って相手の守備をかわし、ゴールライン際でクロスボールを供給する。ピンポイントのボールに島屋が飛びついてゴールイン。スピードとコンビネーションで相手を置き去りする鮮やかなゴールシーンとなった。

 「和馬の動き出しも良く、シンプルに預けて中に入り込もうと思った。和馬はドリブルスピードが速く、けっこうなスピードで入っていかないと間に合わないと思ったが、相手DFとポジション争いしながら体を前に入れ込んで、前に入っていけたのがゴールにつながった」(島屋)

高井和馬(左)のクロスを引き寄せる島屋八徳(右)
高井和馬(左)のクロスを引き寄せる島屋八徳(右)

 しかし、スコアが動いて以降は磐田に主導権が移ってしまう。先制される試合そのものが少ない磐田は、失点を契機に明らかにギアが上がり、レノファへと襲いかかる。前線からのプレスでレノファからボールを奪い、ゴールに何度も接近。セットプレーのチャンスも増え、その一つが同点ゴールにつながった。

 磐田は同22分、右からのコーナーキックを得ると、遠藤保仁のニアサイドへの速いキックに山本義道が頭で合わせ、ゴールにたたき込んだ。同18分から約1分毎に続いたコーナーキックの4本目。レノファにとってはゾーンディフェンスの隙を遠藤や山本に読まれた形になったと言えるかもしれない。

ピンポイントのコーナーキックで失点する
ピンポイントのコーナーキックで失点する

 なおも試合は磐田のペースで進む。レノファは自陣からボールを出せず、ハーフコートゲームの展開になってしまう。気温も蒸し暑く、試合開始当初こそ風がバックスタンドからメーンスタンドに向けて弱く吹いていたが、前半20分を過ぎる頃にはぴたりと止まり、最序盤から強度高く戦っていた選手には厳しい条件へと変わっていった。それでもレノファはGK関憲太郎を中心にゴールを守り、前半を1-1で折り返す。

後半に再加速

 後半は再び強度の高い攻防でスタートするが、暑さの影響からか前半よりもスペースが開き、シュートまで結びつきやすい状況となる。レノファが島屋のミドルシュートでゴールを脅かせば、磐田も山田大記がディフェンスラインの背後を突いてゴールに接近。ネットが揺れる瞬間こそなかなか訪れなかったが、見ごたえのある応酬で試合が進んでいく。

 試合の雰囲気は1-1で終えるようなものではなく、両指揮官は攻撃力のある選手を投入。レノファは特別指定選手の橋本健人を約4カ月ぶりにピッチに送り出す。

シュートを放つ橋本健人
シュートを放つ橋本健人

 橋本は後半32分、自ら敵陣中央を切り裂いてボールを運び、GKさえも背後に回すような巧みな動きでゴールに迫る。ここでのシュートこそブロックされてしまうが、疲労のたまってくる時間帯にスピードを武器にした選手がピッチに立ったことで、相手の警戒点が分散。その3分後に、レノファが勝ち越し点を手にした。

 レノファは同35分、池上のスルーパスを川井歩が引き出し、敵陣の右サイドを突破。「チャンスと思ったのでスプリントしたらいいボールが来た。一瞬、中を見て(クロスボールを)上げようかと迷ったが、前にも相手がいたので」と話す川井は、「思い切ってシュートを打った」と浅い角度からゴールの右隅へと突き刺した。

右足でシュートを放つ川井歩。右隅を狙い澄ました
右足でシュートを放つ川井歩。右隅を狙い澄ました

 勢いに乗るレノファは河野孝汰と草野侑己をピッチに送り込み、次の1点を狙いに行く。ところが、同40分、投入されたばかりの磐田のファビアン・ゴンザレスに同点ゴールを許してしまう。少ないタッチ数のパスで簡単にゴールまで迫られ、「あれだけ人数がいれば中をやられずに、我々のゴールから遠ざけなければいけない状況だった」(渡邉監督)が、ゴールを守り切れなかった。

 無風のピッチの中で、後半30分以降はレノファが追い風を得ているような空気感があり、5分間のアディショナルタイムも浮田健誠のミドルシュート、コーナーキックからの楠本卓海のヘディングシュートなどを見せたが、追加点は得られなかった。後半50分6秒に勝点1を分け合う笛が吹かれ、激闘は2-2で幕を閉じた。磐田の連勝は8で止まり、レノファは2試合連続で勝ち点1を手にした。

手応えと覚悟

 この90分間で、レノファの今を見せることができた。相手よりも立ち位置で上回るというフットボールは前線の3人を中心に表現でき、若い田中陸と神垣陸のボランチも積極的にボールを供給。両ウイングバックはタフに上下動し、幅を生かした攻撃をする重要なパーツとなってきている。

 前節の水戸ホーリーホック戦から続く高強度のプレーも披露。失点こそ喫したが、終盤に攻撃的な選手を投入し、前掛かりにゴールへと向かっていく獰猛(どうもう)さには、これぞレノファと胸を打つものがあったかもしれない。

 だが、勝利のためのあと1点は近づかず、一瞬の隙を突かれての失点も悔やまれる。渡邉監督は試合後、「結果だけを見れば満足できるものはない」と話し、数字上の後半戦のオープニングマッチを次のように総括した。

 「(開幕戦の)引き分けでのスタートと、21試合を終えたあとの後半戦の再スタート。同じ勝ち点1だが、中身を見れば成長や進歩は間違いなく示せたと思う。小さいながらも、我々の自信にしようと選手には伝えたし、そうは言っても勝ちきれなかった悔しさをエネルギーに変えていこうという話もした」

強敵相手の激闘。自信と悔しさが混じり合う
強敵相手の激闘。自信と悔しさが混じり合う

 首位チームから得た勝ち点1の手応えは大きいが、次戦で勝ち点3を取ってこそ、この日の勝ち点1が意味を持つだろう。レノファは次節、ホームでブラウブリッツ秋田と対戦する。7月17日午後7時キックオフ。

 また、磐田との試合後、サポーターは選手たちがゴール裏に挨拶に来るまで太鼓をたたき、手拍子を送り続けた。堅守の首位チームを相手に2点を挙げた内容をたたえつつ、まだやれるはずだという期待とも叱咤激励とも言える感情がにじむ響きだった。

 レノファはまだ上を目指せる。無風ならば、風を巻き起こせばいい――。悔しさの中にも自信を深めた90分の戦いだった。