J2レノファ山口FCは10月21日、維新みらいふスタジアム(山口市)で2位徳島ヴォルティスと対戦し、0-3で敗れた。

明治安田生命J2リーグ第28節◇レノファ山口FC 0-3 徳島ヴォルティス【得点者】徳島=オウンゴール(前半42分)、垣田裕暉(同47分)、西谷和希(後半18分)【入場者数】1323人【会場】維新みらいふスタジアム

 今節を振り返る前に、レノファの前節までのチーム状況を見ておこう。

 レノファは9月の連戦から守備の修正を図り、前掛かりに守備を仕掛ける部分とブロックを築く部分のメリハリを持たせた。全員で前向きに守備をしていくというコンセプトでシーズンに入っていたが、それが裏目に出て、相手のカウンターをまともに受けていたためだ。

 「失った瞬間にカウンターを受けずに、ある程度相手が時間を掛けてくれたら、僕らはしっかりミドルブロックを作る。そこから出て行く。その戻るところがはっきりした」(霜田正浩監督、10月6日の取材で)

ピッチサイドで戦況を見つめる霜田正浩監督
ピッチサイドで戦況を見つめる霜田正浩監督

 守備が安定し、攻撃陣もセットプレーやクロスから複数得点できるようになってきていた。だが、10月10日のV・ファーレン長崎戦とツエーゲン金沢戦はいずれも4点を奪われる大量失点。守備の再修正が求められるような苦杯を喫してしまう。

 ただ、セットプレーから失点を繰り返したり、ロングカウンターを受け続けた夏場までの状況とは異なり、黒星の2戦ともに自陣でボールを失ってショートカウンターを食らっていた。それまでの修正が生きて高い位置でボールを失った場合の対応は及第点だったが、自陣でボールをつなげずに距離の短いカウンターを受けてしまっていたのだ。

 したがって修正が真に求められたのは守備ではなく、「ミドルブロック」を築くラインよりも手前でボールを失ったビルドアップの方策。とりわけ相手のプレスをかわして、集中力高くボトムサードから抜け出せるかが新たな課題となった。

 前節は4失点の金沢戦と同様にフィジカルの強いFWを擁する京都サンガF.C.と対戦。霜田監督が「全員で点を取り、全員で守備をする。帰陣する。前にも後ろにもスプリントをしないと勝利に貢献できない」(前節試合後の会見で)として修正を図り、自陣側の3分の1の空間で相手にボールを渡す場面は減少。ケガから復帰した菊地光将の決勝点で1-0で勝利した。

レノファの先発布陣
レノファの先発布陣

 自陣での戦術と敵陣での戦術が噛み合った状態で白星を手にし、今節は上り調子の状態で5試合ぶりのホーム戦に臨んだ。左サイドバックに慶應大在学中の橋本健人を4試合ぶりに起用。小松蓮が最前線、武岡優斗がボランチでスタメンに名を連ねた。

集中力高く守れていたが…

 万全の布陣で臨んだレノファだったが、ゲームの入りから苦しい展開を強いられる。

 相手の徳島は昇格争いのただ中。前節の試合を落としていただけに、短い時間でも修正を徹底したと考えられ、試合序盤から攻勢に出てレノファの陣内でサッカーを展開する。「勝つことに集中して、気持ちを切り替えて臨めた」と話す西谷和希を右サイドに置いた4-4-2をベースに、攻撃時には流動的にシステムを組み替えてボールを動かしていく。

 徳島は前半23分に入った飲水タイムまで、ほぼ一方的にゲームを支配する。レノファは小松蓮や池上丈二が前線からチェックして起点をつぶそうとするが、徳島はボランチの役割をする選手を少なくとも3枚、分散して配置。レノファが前のめりにプレスを仕掛けるには人数不足で、小松のピンポイントのチェックがはまった場面を除けば、前線で相手ボールを奪う機会はほとんどなかった。

 必然的にレノファは、自陣に築いたブロックで相手の攻撃を受け止めねばならなくなった。ただ、ブロックがほつれて背後に走られる場面はなく、セットプレーのピンチでも集中力が途切れず、ゲームを無失点で進めていく。

高井和馬(右)がサイドでボールを持ち、橋本健人(中央)が内側から駆け上がる場面は多い
高井和馬(右)がサイドでボールを持ち、橋本健人(中央)が内側から駆け上がる場面は多い

 飲水タイムのあとはレノファがボールを進める時間帯も出てくるようになり、左サイドの外側を張る高井和馬と、内側を駆け上がる橋本健人の絶妙なバランスから好機を創出。右サイドからは浮田健誠がアーリークロスを受けて、ゴールへと向かう場面を作り出す。

 もちろんレノファが相手陣地にボールを入れていくと、今度はロングカウンターを食らうリスクが不安要素になってくるが、少なくとも前半40分までは押し込んだあとのカウンターには冷静に対応。高い位置で橋本が奪い返してシュートまで持ち込んだり、高宇洋がパスカットしたりと、素早い切り替えで二次攻撃に転じた。

 だが、徐々に2位に位置するアウェーチームの力を見せつけられるようになる。変幻自在なシステムに対して後手に回り、後ろ向きの守備をさせられる場面が増加。同40分前後から垣田裕暉などに背後に走られるピンチが連続する。同42分には西谷の突破を許すと、その後ろ向きのディフェンスが災いし、垣田へのクロスを処理を誤ってオウンゴールを献上してしまう。

 前半のアディショナルタイムには、今度は逆サイドからのカウンターと背後へのスルーパスを受け、垣田にあっさりと追加点を決められる。

3点を追う展開も、攻撃は空回り

後半から出場のイウリ
後半から出場のイウリ

 点差が開き、後半は早めに交代カードを切って巻き返しを図る。後半のスタートと同時にインサイドハーフの池上丈二を下げて、FWのイウリを投入。4-2-4とも言える顔ぶれにして、挽回を目指した。

 ところが、徳島にボランチの脇を突かれたり、不揃いな最終ラインの背後にボールを放られたりと、思惑通りにはゲームを進められない。攻撃の開始地点が低くなってパス精度も低下。全くシュートまで持ち込めないまま、後半18分にはジエゴのクロスから西谷に試合を決定づけるゴールを奪われる。

 3点差が開くと、多くの試合ではリードしているチームが引き気味になり、負けているチームがボールを握れるようになる。そういう状態で一矢報いて3-1くらいのスコアに落ち着くのが良くある展開だが、徳島は攻撃の手を緩めず、なおもボールを持ってレノファの陣内でプレーする。

 レノファが重層的な攻撃を仕掛けられたのは後半40分を過ぎてから。それまでは単発の攻撃がほとんどで、FWを前線に揃えながら迫力は出せなかった。自陣での攻撃も、相手陣での攻撃も噛み合わず、0-3のまま試合終了。対徳島戦は前回対戦(0-4)と同様の大量失点で今季2度目も黒星を喫した。

40分を90分に広げるために

田中陸は右サイドバックで先発。バランスを見ながら攻撃参加
田中陸は右サイドバックで先発。バランスを見ながら攻撃参加

 前半40分までは相手の攻撃を遅らせたり、敵陣で奪い返してシュートまで行ったりと、押し込まれながらも前方にベクトルを向けてサッカーができていた。もし時計を40分で止められたなら、「上位に対して善戦した」と評価できたかもしれない。

 だが、試合時間は90分である。もっと厳密に言えば、前後半のアディショナルタイムを合わせて96分12秒(手元の時計による)のプレー時間があったが、善戦した40分よりも長い56分間は、相手のプレッシャーを跳ね返せず、パスの精度も上がらなかった。

 レノファらしい形での決定機はなく、修正していたはずのパターンで失点。1-0で勝った試合が幻影のようで、枯れ野を駆け回って果実を探すようなゲームは、当然の帰結を迎えた。

 試合後の記者会見で、長年取材している地元局が霜田監督に優勝争いをしているチームとの差を問いかけた。指揮官は間髪を容(い)れず、「いろいろな意味で大人のチームにならなければいけない」と返答。さらにこう続けた。

 「ゲームコントロール、基本的な技術、判断のところ。良いときはやれているが、良くないときはやられてしまう。皆がやられながら覚えているが、そういうところを成長させていかなければならない」

 その言葉の通りだろう。荒野を耕し、目指すサッカーを育て、相手が強くてもレノファらしく振る舞えるチームを作るしかない。レノファには近道も、特別な肥料もない。愚直に40分を90分に広げる地道な作業を続け、いつしか誇れる成果を日々収穫できるチームにしていたい。今節はもう一度種まきをする試合になった。

 レノファは次戦もホーム戦。10月25日午後3時から、水戸ホーリーホックと対戦する。