12回目のダービーに挑むギラヴァンツ北九州。チーム戦で「9連勝阻止」へ(福岡戦プレビュー)

高橋大悟(左)不在でダービーに挑む=筆者撮影。この記事の他の写真も

 昇格圏内で戦っているJ2ギラヴァンツ北九州が重要な一戦を迎える。10月4日の対戦相手は3位アビスパ福岡。ダービーとして順位とは無関係に競ってきた相手だが、今の勝ち点差はわずかに「2」と接近している。リーグ戦はまだ多くの試合を残しているとはいえ、J1昇格を見据える両チームにとって、落とすことのできない白熱のダービーマッチになるのは間違いがない。

 ギラヴァンツにとってのダービーマッチとはどういうものか。過去の試合を振り返り、敵地に乗り込む今節を展望する。

戦い方を鮮明にしたダービーマッチ

 ギラヴァンツから見たアビスパ戦の対戦成績は2勝0分9敗と大きく負け越している。ただ、アビスパ戦はチームの成熟度を示すゲームになってきた。

 過去に勝利しているのは2012年と14年の2回。12年は三浦泰年監督の就任2年目で、ギラヴァンツのJ2時代としては最多の19勝をマークしたシーズンだ。同年1回目の対戦こそ0-1で敗れたが、ポゼッションスタイルの攻撃的なサッカーを繰り広げ、8月19日に市立本城競技場(北九州市八幡西区)で行われた2回目のゲームでは4得点を奪取した。

 「クラブの歴史が、ダービーに(勝つことで)1ページめくることができた。我々はJリーグの大先輩のアビスパさんに追いつこうとするのではなく、違う道を進んで行かなければ彼らの上にいくことはない。そういう意味では、自分たちが違う道を見つけて進む第一歩、スタートが切れた」(三浦監督)

練習中の池元友樹(左)と冨士祐樹(右)=2014年10月、本城運動場(北九州市八幡西区)
練習中の池元友樹(左)と冨士祐樹(右)=2014年10月、本城運動場(北九州市八幡西区)

 J2の中でも異彩を放った熱量のあるサッカーで、対アビスパ戦に初勝利。確実にボールを運んで池元友樹や端戸仁、常盤聡など前線がゴールを重ね、この頃のギラヴァンツが模索していた「違う道」に自信を深める試合になった。

 14年はシーズン序盤の第10節で勝利している。ギラヴァンツは後半27分にFKを得ると、内藤洋平が蹴った跳ね返りから冨士祐樹がミドルシュートを決めて1-0。この時期に指揮していた柱谷幸一監督のスタイルは堅守速攻で、アビスパに押し込まれる時間もあったが、それを耐えて白星を手中に収めた。勝ち点2差でアビスパを追っていたギラヴァンツが順位をひっくり返し、最終順位はクラブ最高位の5位にまで上り詰めている。

 J1クラブライセンスを手にできていなかったギラヴァンツは、柱谷監督時代に堅守とフェアプレーを優先。試合後に柱谷監督は「ダービーは自分たちにとっても特別なもので、サポーターにとっても特別なもの。その試合を、いい内容で、なおかつイエローカードをもらわず、フェアな態度で勝てたのは非常に良かった」と語っている。やはりダービーマッチがクラブにとっての一つの時代を象徴した。

組織サッカーでアビスパに対抗

 小林伸二監督が率いる現在のギラヴァンツも、スタイルは組織的かつ攻撃的だ。ボールを持つことでリズムを作り出し、幅を使って攻めていく現代的なサッカーは、「アビスパとは違う道」を選んだ時代と重なる。

 残念ながら今季開幕戦で5年ぶりに対戦した時は、J3時代に培ってきた攻撃力を出せず、0-1と惜敗している。通用する部分があったとはいえ、若いチームが独特の雰囲気に萎縮した面も否めず、受けに回ったディフェンスの隙を突かれて遠野大弥に決勝点を許した。

オンライン取材で意気込みを語る小林伸二監督=10月2日
オンライン取材で意気込みを語る小林伸二監督=10月2日

 それでも小林監督は開幕戦で得た経験値が、その後の上位進出に好影響を与えたと振り返る。10月2日の練習後、小林監督はオンラインでの合同取材に対応。「ダービーで伸びていくという経験してきた」という過去の経験を踏まえ、次のように話した。

 「開幕の時には我々は負けて、(アビスパに)パワーがあるなと思いつつ、それからはコロナ(による中断)もあったが、伸びてきた。今回は伸びている形でぶつかり、前回との変化を表現できる。福岡さんは調子がいいが、そういう中で戦え、お互いにプラスになる」

 小林監督は「連動して動き続けられるかどうか」を勝負のポイントに挙げ、ギラヴァンツらしさにこだわっていく構えを示した。

 チームが置かれている状況は少し異なる。ギラヴァンツは9連勝や3連勝といった連勝街道を突き進んできたものの、直近3試合は1分2敗と足踏みをしている。一方でアビスパは8連勝中と絶好調だ。開幕戦で勝利を呼び込んだ遠野のほか、フアンマ・デルガド、城後寿など前線のオプションは豊富。前節は決め手を欠く中、福満隆貴が直接FKをしずめて栃木SCに競り勝っている。

 ギラヴァンツはアビスパの分厚い攻撃陣と堅い守備に立ち向かわねばならない。3戦勝ちなしで、10番を背負う高橋大悟(※「高」の登録は、はしご高)が累積警告で不在と、トピックだけを拾っていけば必ずしも明るい話題ばかりとは言えないが、小林監督は踊り場にいるからこそ原点回帰ができると前向きに受け止める。

 「もっと質を上げたり、もっと強く行く。強気が必要なところがある。必死だったのが、(連勝で)少し当たり前になって圧が掛からなくなった。そういうことを感じていたが、戻ってきている」

ボールポゼッションのカギを握る加藤弘堅=8月24日、ミクニワールドスタジアム北九州(ミクスタ、北九州市小倉北区)
ボールポゼッションのカギを握る加藤弘堅=8月24日、ミクニワールドスタジアム北九州(ミクスタ、北九州市小倉北区)

 前節のFC町田ゼルビア戦では、視野広くパスを散らす加藤弘堅をボランチから最終ラインに下げ、センターバックの村松航太を右サイドに出すという新しい試みを実行に移した。加藤は従前から下がって動かす場面はあったが、ポジションを明確にしてボール回しを改善。村松は相手のサイドアタックを削り、夏場から見られた立ち上がりの悪さを払しょくした。

 試合の早い時間帯で高橋のスルーパスから椿直起がゴールを決め、先制点を奪取。後半に村松のサイドを突かれる形でPKを許したとはいえ、連敗を止める勝ち点1を得た。小林監督が話すように、前向きなボールポゼッションや池元の先発起用もあって前線からの愚直な守備も取り戻した。

推進力を出し、ゴールにも絡む椿直起=9月13日、ミクスタ
推進力を出し、ゴールにも絡む椿直起=9月13日、ミクスタ

 選手にとっても自信を深める試合となった。椿は町田戦をターニングポイントに、ダービーでも前向きに戦う意欲を見せる。

 「守備に回れば押し込まれるので、前から行くサッカーで自分たちが押し込んで行ければと思う。立ち上がりに先制点を取ることが大事。町田戦はいい形で取れ、攻撃は悪くなかった。ペナルティーエリアにどう入るかを合わせながらやっていきたい」

9連勝チームが、「9連勝阻止」へ

 3戦勝ちなしだが、ギラヴァンツらしいチャレンジャーとしてのアグレッシブさは戻ってきている。さらに、ダービーでのモチベーションを高めているのが「9連勝の阻止」だ。小林監督自ら「(ギラヴァンツが)9連勝というところを今年作った。福岡さんは今、8連勝。そこは阻止したいと思っている」と気持ちを込める。

 もちろん個の力でアビスパが上回っているのは明らか。対するギラヴァンツはテクニックのある高橋が不在で、今季10得点を挙げているディサロ燦シルヴァーノも直近2試合はベンチ外。ただ、こうした外部要因も、内部要因も、ギラヴァンツが組織サッカーに集中できるという要素にはなり得る。

 「キーマンを潰すという守備的なチームはある。どこでボールを奪うかを決めてくると思うが、みんなでボールを回し、ポジションを変えながらやっていくと、決めどころが難しくなる。そういうプラスはある」

 小林監督はそう話し、高橋の不在を逆手に取ってチーム戦術に集中。「細かくテンポ良く回せば穴は空く。(アビスパに)個人の強さはあるが、連動ではうちが勝るようにしたい。そこにはこだわってやる。強さでは分が悪くても、1対1を2対1にしてしまえばボールは回せる」と連動性で勝機を見いだしてく考えを示した。

守備の中心として成長が著しい村松航太=8月15日、ミクスタ
守備の中心として成長が著しい村松航太=8月15日、ミクスタ

 ギラヴァンツがどれだけ長く主導権を握れるか。今節のギラヴァンツで注目すべきは特定の誰かではなく、ボールが黄色いチームの中にあるかどうか。そのために小林監督は今節も奇策を含むさまざまな手を用意するはずだ。

 ただ、勝負を最後に分かるのは挑もうとするハートだろう。ダービーで勝利をつかむには全力で挑まなければならない。

 全てを懸けて挑み、アビスパという壁を越えることで過去のギラヴァンツも自分たちのサッカーを鮮明にした。チームスローガンを「アグレッシブチャレンジャー」とした今年は、挑戦に何らの障害はない。守備陣の軸になってきている村松は選手全員の野心を代弁して、勝利を誓った。

 「チームは戦い方を変えているわけではなく、気持ちの持ち方も変わらない。ただ自分たちはチャレンジャーであり続けるべきだということだけを持ってやっていく」

 ダービーは10月4日午後4時から、福岡市博多区のベスト電器スタジアムで行われる。ギラヴァンツのクラブ史に書き込まれるべき特別な試合にしたい。