宮代大聖がJ初ゴール! 守備陣も奮闘、福岡を零封/レノファ山口

宮代(38番)はJ初ゴール。笑顔がはじけた=筆者撮影、この記事の他の写真・図も

 J2リーグ第34節11試合のうち、7試合が9月28日、各地で行われた。レノファ山口FCは維新みらいふスタジアム(山口市)でアビスパ福岡と対戦。宮代大聖のJリーグ初ゴールなどで得点を挙げ、2-0で勝利を飾った。

明治安田生命J2リーグ第34節◇山口2-0福岡【得点者】山口=宮代大聖(後半37分)、池上丈二(同46分)【入場者数】5822人【会場】維新みらいふスタジアム

前節とメンバーは同じだが、最終ラインの立ち位置を入れ替えた
前節とメンバーは同じだが、最終ラインの立ち位置を入れ替えた

 パーフェクトと表現してもいいようなゲーム運びだった。ゲームの入りから落ち着いてボールを動かして失点を防ぎ、最大のピンチもGK吉満大介がファインセーブ。流れを引き寄せた後半は主導権を握り、宮代大聖がセットプレーからJリーグ初ゴールを決めて先制する。さらに池上丈二が追加点を決めてリードを広げ、複数得点かつ無失点の快勝となった。

楠本を左サイドバックに起用

レノファの布陣。楠本は左サイドバックで起用
レノファの布陣。楠本は左サイドバックで起用

 レノファは前節と同じスタメンで臨んだが、最終ラインで選手の立ち位置を変更。センターバックを前貴之と菊池流帆の組み合わせとし、センターバックでプレーしてきた楠本卓海を左サイドバック、川井歩を右サイドバックに配置した。

 「楠本が左サイドバックもできるという信頼が一つと、(前)貴之を中央で使いたいというのが一つ。(川井)歩はやはり右で使ったほうが持ち味が出る。この三つが重なったため、このシステムにした」

 霜田正浩監督は狙いをそう紐解く。前節の金沢戦では最終ラインからのビルドアップでミスがあり、カウンターを招いていた。今節は前のセンターバック起用でその部分が落ち着き、フィールドプレーヤーの重心を高い位置でキープ。楠本は左サイドバックが本職ではないが、霜田監督は相手のウイングバックに対するハードディフェンスという楠本の良さが生きるタスクを与えた。

楠本は試合が進むにつれて攻撃参加も増えた
楠本は試合が進むにつれて攻撃参加も増えた

 最近の試合では立ち上がりの失点が多かったレノファ。今節は序盤でのリスクを負った攻撃を避け、相手の出方をうかがいながら慎重にゲームに入った。その分、ミドルシュートを打たれたり、セットプレーから相手にチャンスを作られたりしたが、前と菊池のセンターバックを中心に対応。楠本は福岡のウイングバック・石原広教が自由にクロスを上げないよう確実にアプローチする。

 最終ラインの配置が奏功し、鬼門とも言えた入りの15分を無失点で切り抜けた。

 ただ、その後も主導権の所在がはっきりせず、攻撃しては守備をするような時間帯が続いた。もっとも福岡がブロックを築いたディフェンスをするため、レノファにとってみれば、ボールを持って攻撃している時間と、ボールを失ってカウンターに対応する時間の二つに分かれるのは必然の流れ。とはいえ、ボールを持たされているような感覚に陥ってしまえば福岡の術中にはまってしまう。どこかでポゼッションのスピードアップが必要だった。

 前半33分。前が自陣から縦の浮き球を送り、それに反応した池上が相手最終ラインの背後に抜け出してシュートを放つ。枠は捉えられなかったが、センターバックから一発で裏を取る動きはリズムに変化を付けるプレーになった。この時間帯からはビルドアップのサポートに回っていた高宇洋、山下敬大らも前向きにボールを動かし、同35分以降は三幸秀稔、宮代などがシュートを積極的に放っていく。

 ところが同42分、クロスの競り合いから福岡にPKを献上してしまう。流れを引き込んできていた中での暗雲低迷を予感させるピンチ。それでも「気持ちのところで負けていると止められない」と気を吐いたのはゴールを守る吉満だった。

吉満がPKをファインセーブ。試合を左右するプレーとなった
吉満がPKをファインセーブ。試合を左右するプレーとなった

 「駆け引きと情報量」で上回れたと話す吉満は、ヤン・ドンヒョンのキックを読んで右に飛び、こぼすことなくボールを手中に収めた。試合結果を大きく左右する値千金のファインセーブだった。

流れを引き込み、宮代と池上がゴール

 0-0で迎えた後半は、レノファが立ち上がりからシュートゾーンまでボールを運び、三幸のクロスや佐藤健太郎のスルーパスなどから宮代がゴールを狙う。いずれもゴールネットは揺らせなかったものの、前半終盤のビッグプレーで確実にしたレノファのモメンタムを離さず、相手陣に押し込んだ。

 福岡は城後寿、田邉草民を矢継ぎ早に投入。対するレノファは後半22分、ゴールに向かうプレーに迫力がある高井和馬をピッチの中へ。高井は左サイドから仕掛けたり、敵陣の中央でボールを引き出したりと自由にボールに触れてかき回し、攻撃を活性化する。

 レノファのペースの中、同37分、左からのコーナーキックを獲得する。ボールをセットした池上は、「(菊池)流帆に飛び込んでくるようコミュニケーションを取った」と話し、計算尽くのボールをニアサイドに供給。菊池が触ってコースを変えると、さらに宮代が合わせてゴールに送り込んだ。

宮代はコーナーキックの直前にも好機に絡んだ
宮代はコーナーキックの直前にも好機に絡んだ

 宮代は年代別代表に選ばれてきた若きストライカー。ただ、J1川崎では出場機会をつかめず、今年7月にレノファに期限付き移籍。直後から試合には起用されてきたが、硬さが取れずゴールに見放されていた。

 決まったシュートもこの日の5本目で、宮代は試合後、「試合を通じて苦しい時間が続き、迷惑を掛けてしまった面はある」と吐露。それでも勝利につながったゴールには違いなく、「流帆くんのいい逸らしがあった。当てるだけだったが決められて良かった。これをきっかけに次の試合に向けて、得点が量産できるように頑張っていきたい」と先を見据えた。

 勢いに乗るレノファは、後半アディショナルタイムにも好機をものにする。途中出場の工藤壮人が高い位置で相手ボールを奪うと、こぼれ球を拾った池上が相手ペナルティーエリアに侵入。相手選手に引っ掛けられて倒れ、今度はレノファがPKのビッグチャンスを手にした。そのまま池上がキッカーを務め、落ち着いて右隅へ。レノファがスコアを2-0とする。

 後半だけで6分30秒弱の長いアディショナルタイムとなったが、レノファは冷静なゲーム運びで失点を許さず、そのままのスコアで白星を奪取。対福岡戦は今季は2戦2勝となった。

経験値を積み上げる勝利に

 試合の勝敗に大きく関わったのが最終ラインの選考だ。

 霜田監督は左サイドバックに起用した楠本に「(センターバックのときに)サイドバックに何をしてもらいたいか。何をされたら嫌か。そういうことを意識しながらプレーしなさい」と話し、試合中も楠本に身振り手振りで指示。縦パスが相手に奪われる場面こそあったものの、楠本はハードディフェンスをやり抜いて無失点に貢献した。山下や佐藤が楠本の動きを助けようとボールを受けに動いた場面もあり、チームワークの良さを垣間見る90分間でもあった。

(左から)三幸、前、吉満。試合後には安堵の表情が浮かんだ
(左から)三幸、前、吉満。試合後には安堵の表情が浮かんだ

 また、前に関して言及すれば、4バックの布陣でセンターバックを務めるのは今季3度目で、結果は3戦3勝。前は「普段、右サイドバックをしているときにセンターバックに要求していることを、自分がセンターバックになったときに100パーセントやった。その中でたまたま3戦勝っただけ」と謙遜したが、ビルドアップが安定しただけでなく、相手ウイングバックの背後を狙うようなチャレンジングなパスでもエラーを起こさなかった。

 前、高、佐藤、三幸というビルドアップやリスク管理に長けた選手でセンターラインを構成し、今節は相手に合わせてサイドバックでも思い切った采配をした。適材適所という言い方をするべきかは分からないが、霜田監督の狙い通りのゲーム展開になったのではなかろうか。

声援に応える宮代
声援に応える宮代

 サッカーはミスのスポーツだと言われるが、ゴールが入りにくくなった現代サッカーではミスを待つだけでは新しい展開は生まれない。いかに主導権を握り、先に相手にミスを起こさせるか。ミスが起きなくても能動的にアタッキングエリアまでボールを運べるか。アクションを起こして戦わなければならないチームにとって、欠かせないのは経験値と判断を下せるサッカーIQだ。初ゴールの宮代、初めてサイドバックに入った楠本など若い選手たちが何を学び、次に生かしていくか。単なる1勝にはせず、意味を持つ白星にしていきたい。

 レノファの次戦は10月6日午後7時から、岐阜市の岐阜メモリアルセンター長良川競技場でFC岐阜と対戦する。次のホーム戦は下関市営下関陸上競技場での開催。京都サンガF.C.を迎え、同12日午後2時キックオフ。