欠けた一体感。ミスから崩れ逆転負け/レノファ山口

レノファは逆転負け。厳しい試合が続く=筆者撮影、この記事の他の写真・図も

 J2レノファ山口FCは4月3日、維新みらいふスタジアム(山口市)で徳島ヴォルティスと対戦し、1-2で逆転負けを喫した。

明治安田生命J2リーグ第7節◇山口1-2徳島【得点者】山口=田中パウロ淳一(前半46分)徳島=清武功暉(後半9分)、小西雄大(同25分)【入場者数】3806人【会場】維新みらいふスタジアム

小野原和哉(後列右から3人目)、高井和馬(同2人目)などが先発
小野原和哉(後列右から3人目)、高井和馬(同2人目)などが先発

守備への負担、全員で分け合えるか

 レノファは戦術的にボールを動かし、守備と攻撃を分けないサッカーを目指している。J1経験クラブがひしめくJ2にあって、11人全員の戦力を単に足していっても、力のある相手にはなかなか及ばない。足りない部分を戦術と相手以上のハードワークで埋め、戦力のあるチームに伍して戦いたいというのが、根底にある精神だ。

 選手それぞれが攻撃にも守備にも相応の負担をしなければならないが、ここまでの試合を見ていくと、負担量のばらつきも見えてくる。

 ただ、前節の琉球戦では左ウイングで先発した高井和馬が守備を厭わず、厳しいチェックを続けた。スピードがあり攻撃に力を割ける選手だが、守備にもハードワークすることで、左サイドで先手を取れただけでなく、中盤やサイドバックの負担も軽減。「試合を通して和馬が自分の判断でプレーできていた。自分としても前に引っ張られたいい試合だったと思う」(三幸秀稔)と、一人のプレーが好影響を及ぼした。

ボールを扱う高井和馬。瀬川和樹(左)との連係も良かった
ボールを扱う高井和馬。瀬川和樹(左)との連係も良かった

 今節、霜田正浩監督はその高井を引き続き先発で起用。個でのディフェンスに強い小野原和哉もスタメンに入れ、トップ下でピッチに立たせた。ボールを動かせる選手が揃う徳島の中盤に対応するためで、試合の立ち上がりこそ落ち着かなかったが、徐々に相手中軸への守備がはまり、奪えきれなくとも相手の選択肢を削ることに成功する。

右サイドの攻撃が改善。先制ゴールも

先発布陣
先発布陣

 攻撃でも変化があった。左サイドでの組み立てが多くなっていたレノファだったが、今節は右ウイングの田中パウロ淳一が、相手ボランチの脇を使うように内側に絞り、サイドバックの前貴之が追い越していく場面が増加する。「サイド(に張った状態)だとタカ(前)に返すか、自分で仕掛けるかしかなかったので、ワンパターンになっていた。真ん中にいると、タカ、小野原を走らせたり、(工藤)壮人くんに当てたり、全部できる」(田中パウロ)。試合が落ち着いた前半15分過ぎからはレノファは左右両サイドで敵陣を深く突いていく。

 前半35分には、高井の左からのクロスを受けた佐々木匠がゴールに迫り、同43分には田中パウロの縦パスに小野原が抜け出してペナルティーエリア内に侵入。折り返しのボールに高井が飛び込んだりと、決定的な場面を何度か作った。アディショナルタイムには左サイドでFKのチャンスを獲得。三幸が右サイドに振ると、小野原が巧みにボールをさばいて浮き球をゴール前に供給する。これに合わせたのが田中パウロで、マークを外して最終ラインの後ろに飛び出すと、落ち着いて左足でゴールに送り込んだ。

田中パウロ淳一はサイドに張るだけでなく、積極的に内側にも進出した
田中パウロ淳一はサイドに張るだけでなく、積極的に内側にも進出した

 もし田中パウロがサイドに張ることに集中していたら、彼自身が左に流れてシュートを打つことも、小野原が右で触ることもほとんどなかっただろう。霜田監督は「外で1対1で生きる場面もあるし、中に入ってゴール前に飛び出していくシーンもある。サイドアタッカーはウイングではないと言っている」と強調。田中パウロのプレー選択が結実したゴールシーンとなった。

後半は一転して相手ペース

 しかし、後半は一転してレノファのもろさが露呈する。もろさというのは、とりもなおさず冒頭に述べた守備方向へのハードワーク不足。それにドストンと菊池流帆を並べたセンターバック陣の経験不足も、チームとして補えなかった。

 徳島は後半のスタートから布陣を変更。岩尾憲のワンボランチだった中盤を、岩尾と小西雄大のダブルボランチに組み替え、使われていたスペースを消した。さらには清武功暉や野村直輝、岸本武流などの個の力もある攻撃陣を残したまま、さらにFWの押谷祐樹を投入。攻撃にも厚さを持たせて、残り45分に入っていった。

 布陣変更は徳島に勢いをもたらし、後半の立ち上がりから攻勢に出る。後半9分、徳島は右のライン際を藤田征也が突破し、深くえぐっていく。

 レノファにとっては左サイドを破られた形だが、適切に対応すればピンチになるような場面ではなかった。だが、ここに菊池がつり出されてしまい、手薄になった中央にクロスを送られてしまう。岸本にほとんどフリーの状態でヘディングシュートを打たれ、ポストに当たった跳ね返りを、やはりフリーになっていた清武に押し込まれた。これでスコアは1-1の振り出しに戻る。

 同点になってからも前線に人数を揃えた徳島が主導権を掌握。レノファは自陣からボールを運び出せなくなる。同25分にはパスミスをカットされ、レノファは徳島のカウンター攻撃を浴びる。岩尾に中央突破を許すと、パスを受けた小西に鮮やかなミドルシュートをしずめられ、2失点目。シュートは見事だと言わざるを得ないようなものだったが、ドストンが引っ張り出されたほか、岩尾をフリーにし、プレッシャーがほとんど掛かっていなかった。1失点目同様に守備の拙さを浮き彫りにするような失点劇となった。

チーム力の復活へ、一体感の醸成を急げ

 開幕戦以降、ホームでまだ勝てていないレノファ。2失点後はケガから復帰した池上丈二、序盤3試合で3得点を挙げている山下敬大をピッチに送り、ディフェンスの背後を突ける高木大輔もつぎ込んでゴールを目指した。ただ、攻撃は単調で、中央のボールホルダーから左右に飛ばし、深い位置でクロスを送るというパターンが連続した。

 結局は追加点を奪えないままでホイッスル。レノファは1-2の逆転負けを喫し、再び21位に順位を下げた。

 ゲーム最終盤の攻撃はなぜ単調なものになってしまったのか。

大卒ルーキーの小野原和哉は攻守両面で活躍
大卒ルーキーの小野原和哉は攻守両面で活躍

 後半26分に池上を投入して、三幸とともに中央のラインに起点を作る一方で、左サイドでゲームを構築していた高井と瀬川和樹を下げ、より得点能力の高い選手を入れた。勝つには2点が必要だったレノファにとって、手数を少なくしてゴールを狙いたいという思惑があったかもしれない。だが、実際には中央から一足飛びでFWに付けるパスはなく、サイドを何度も経由する各駅停車の攻撃になってしまった。田中パウロにも前半のような快活なプレーは見られなかった。

 2節前の栃木戦の終盤では、菊池を最前線に置くパワープレーを行ったが得点できず、今節もDFを削って前線の枚数を増やしたものの、追加点は奪えなかった。やはり、相手にリードされた状態で迎える終盤は、どれだけ枚数を増やし、いかに放り込もうともブロックを破るのは容易ではない。前半は厚みのあるオフェンスをサイドに関係なく実践できていただけに、やむを得ない面はあるにしても、選択肢を減らして実質的なパワープレーのようになったのはもったいなかった。

 田中パウロは「点を取っても、もう1点狙う姿勢を出していかなければいけない」と厳しく試合を振り返り、「奪ったあとを大事にする。もっと共通意識を持たなければいけないと感じている」と力を込めた。

 もっとも、それ以上に足を引っ張ったのが守備面だ。1失点目は相手のセンターFWをフリーにし、2失点目はパスミスと判断ミスが重なった。崩された失点とは到底言い難く、またしても自滅した。攻撃同様に前半はミスがあっても三幸や前、高井などのハードワークでカバーできていたが、後半は連戦ゆえか全体のスピードが落ち、前線からも追い切れなくなった。崩された失点ではなかったが、チームでの守備は崩れていた。

 霜田監督は「後ろ向きに戻るときに全力で戻らないといけない。それはサッカーの基本中の基本。きれいに崩されたわけではないが、攻めに行こうと思っていた途中でボールを失い、ひっくり返ったときに、どれだけ相手より早く戻れるか」と基本に立ち返るよう促す。加えて、若いセンターバックに対して有効な指示をピッチ内外から飛ばせていたかも分析と修正が必要になりそうだ。

 攻守の負担を分け合いながらプレーできていたかといえば、まだ及第点には達していない。

 三幸は「根本のところで勝ち点3を引き寄せられていない。みんなの気持ちが一つになっていないからこそ、相手に勝ち点3を奪われたり、追いつかれたりするシーンが多く出てきていると思う」と悔しさをにじませ、一体感醸成に声を出す。「もう一度、スタートから100パーセントで、前向きなエネルギーを使ってどんな状態でも勝ち点3を取って帰ってきたい」。

 次戦は中3日で、敵地でV・ファーレン長崎と対戦する。求められているのはチーム一丸となったプレーの連続。今節前半のようなダイナミックな攻撃で先手を取り、全員で負担を分け合いながら守りたい。チームで戦うことこそがレノファのフィロソフィーだ。