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レノファ山口:遠い維新での勝利。シュート少なく、町田に完封負け

上田真之介ライター/エディター
声援は続いた=17日、山口市(筆者撮影。この記事の他の写真も)

 J2レノファ山口FCは10月17日、維新みらいふスタジアム(山口市)で台風接近で延期となっていた第26節FC町田ゼルビア戦に臨み、0-1で敗戦を喫した。

明治安田生命J2リーグ第26節(延期代替試合)◇山口0-1町田【得点者】町田=杉森考起(後半31分)【入場者数】3133人【会場】維新みらいふスタジアム

 今夏は台風や地震などの自然災害が多く、Jリーグも試合中止が相次いだ。レノファは1試合、町田は2試合が未消化で終盤戦に入り、今週は両チームにとっては3連戦となった。フィジカル面では厳しい日程になったものの、互いに他チームに比べて勝ち点を3または6を積み上げるチャンスを残しているとも言えた。

 レノファにとってはプレーオフ圏への進出可能性を残すため、町田にとってはJ1ライセンスがないものの自動昇格圏にトライするために負けられない試合。また、町田の順位はJ1残留争いにも影響を与えることから、注目の集まるゲームとなった。

連戦中日。中盤での攻防激しく

メンバーを4人入れ替えた
メンバーを4人入れ替えた

 連戦になり、レノファは前節福岡戦からスタメンを4人、町田は前節大分戦から5人を変更する。レノファに関して言えば最終ラインで渡辺広大と廣木雄磨が先発に復帰。FWでは大石治寿が今シーズン初先発となり、霜田正浩監督は「練習ゲームでもいつも点を取っているストライカー。彼の得点能力や嗅覚できっとチャンスが一つ、二つ出てくる」と期待を込めて送り出した。

 町田との前回対戦では、レノファはコンパクトな形状でのパスワークから、効果的なタイミングでサイドチェンジ。逆ワイドでフリーになっていた選手を使ってゴールに迫った。今節もベースは変わらず、大石や岸田和人が開いてボールを受けられる位置を確保した。ただ、町田も素早い切り替えでフリーになる選手をケア。レノファはサイドにボールを入れるものの、寄せの速さから自分たちのボールとしてキープし続けられなかった。

 一方で守備面ではセオリー通りの前線からのプレッシャーを効かせ、先発した廣木も粘り強くアタックに付いていった。町田としてもペナルティーエリア内に入れず、「長いボールが多くルーズボールを拾い合うゲーム。お互いにかなりラインを上げ合う中で、どっちがチャンスを決めきるか」(町田・相馬直樹監督)という内容で試合が進展する。

クロスを折り返す岸田和人。今節はフル出場した
クロスを折り返す岸田和人。今節はフル出場した

 レノファにとっての最初のシュートチャンスは前半28分。カウンターの流れから高木大輔が左サイドからクロスを上げると、岸田がファーサイドで折り返し、ゴール前から大石が右足でボレーシュートを放つ。大石起用の狙いが表現された瞬間だったが、シュートは枠を捉えられず上へと逸れてしまう。また、同37分にはGK吉満大介の鋭いフィードが相手ディフェンスの間まで飛び、岸田が抜け出してゴールに接近するも、町田のGK福井光輝に阻まれ、ゴールとはならなかった。

 前半はスコアが動かないままで経過。45分を通してのシュート本数がレノファ4本、町田0本で、数字も中盤でのつばぜり合いが続いたことを示した。

後半に失速。一転して町田のゲームに

 長いボールの逆サイドへの展開で多少なりとも優位に立っていたレノファだったが、後半は町田のサッカーが息を吹き返し、レノファは後手に回る。

 同じ連戦でもホーム戦が続いたレノファは前半から運動量を出して攻撃に比重を置き、中2日で敵地に乗り込んだ町田は5人を入れ替えていたものの、前半はタフな戦いには持ち込まなかった。こうした状況で迎えた後半はフィジカルコンディションでのレノファのアドバンテージがなくなり、戦術やベーシックな技術での勝負という様相へと移っていった。

 後半の立ち上がりから町田がボールを保持し、振り回され始めたレノファは自陣内でファールを冒し、FKのチャンスを与えてしまう。集中が途切れなかったために失点こそ喫しなかったものの、後半5分までに2本のFKからシュートまで運ばれ、セットプレーを狙いのひとつとした町田の術中にはまってしまう。

攻守に存在感を示した三幸秀稔。ただ、後半は守備に力を使うことに。右はレノファでもプレーした奥山政幸
攻守に存在感を示した三幸秀稔。ただ、後半は守備に力を使うことに。右はレノファでもプレーした奥山政幸

 守備から攻撃に転じた瞬間も、逆サイドへ飛ばすことのほうが先に立ち、パスの精度が下落。自陣でボールを取られ、「つまらないファールをしてしまって相手にセットプレーをたくさん与えてしまって、時間を作られる」(霜田監督)という悪循環に自らはまってしまう。

 渡辺も自陣からのビルドアップに課題があったとし、「町田のサッカーに対して練習はしてきたが、ピッチも濡れていて精度の高いボールを出せなかった。急いでしまったのもあると思うが、町田に対してどのチームもやってきた戦い方。研究し、もう一つ上に行かないといけない」とほぞをかんだ。

 後半31分、町田は右サイドでテンポ良くボールをつないでいき、平戸太貴が低いクロス。ドリアン・バブンスキーが潰れて後ろに流れたボールを杉森考起が収め、体を翻してゴールに振り抜いた。レノファは人数では相手と同数でペナルティーエリア内を締めていたが、出足が遅れたり、ポジションが重なってスクリーンになったりして、シュートを抑えられなかった。

 ゲームの流れは残りの15分間も変わらず、杉森の一撃が決勝点となって町田が勝ち点3を奪取。町田は2位に順位を上げ、レノファは前日に行われたゲームの結果などから11位に後退した。

二人が出場停止。次戦は「総力戦」

大石治寿は後半26分まで出場。シュート2本を放った
大石治寿は後半26分まで出場。シュート2本を放った

 前半同様に、数字がゲームを物語った。前半0本のシュート数だった町田が5本に増え、逆にレノファはシュートまで行けずに3本にとどまった。それだけではなく、霜田監督が指摘したようにファール数にも違いが出て、レノファが与えたFKは前半は5本だったものが、後半は12本に倍増。ファールによるFK自体は致命的なものとはならなかったが、このうちの3本はイエローカードの対象となり、累積警告3枚だった前貴之と高木大輔にも出されてしまった。

 ゲーム展開を考えれば、決めるところを決めていればという考えにも至るが、チャンスらしいチャンスは大石の1本のみ。大石は「ああいう形でチャンスが来るというのは選手自身でも話し合っていて狙い通りの形だった。あれを決めきらないとこういう展開になってしまう。FWとして結果を残せなかったのは非常に悔しいし、責任を感じている」と話したが、個人の責任ではなく、逆サイドに振って途中までは上手くボールを動かしながらも、シュートレンジまでは運べなかったチーム全体の反省点と言えそうだ。

平日にもかかわらず報道も多く集まった。試合後の監督会見ではセカンドボールへの対応や運動量などに厳しい質問も出た
平日にもかかわらず報道も多く集まった。試合後の監督会見ではセカンドボールへの対応や運動量などに厳しい質問も出た

 レノファはまた中3日で次の試合を迎え、敵地でカマタマーレ讃岐と対戦する。この試合にゲームメークのキーマンと言える前が出場できず、ハードワーカーの高木も不在。ケガ人も相次いで出ており、厳しい戦いを強いられる。町田のサッカーが特徴的だったとはいえ、次戦もシュートまで確実に持ち込めるようなボール運びが求められる。

 「下を向いている暇はない。累積で出られない選手も出ているし、ケガをして帰ってこられない選手もいるが、今いる選手たちでもう一度、総力を挙げて残り5試合をしっかり戦いたい」(霜田監督)。残り試合で得られる最大勝ち点は15で、J2昇格初年度に記録した勝ち点53を上回って、総計66まで伸ばすチャンスがある。最終盤に待っていた試練を乗り越えて、一つでも上の順位を目指したい。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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