レノファ山口:三幸秀稔が決勝点。厳しい内容も守備陣奮闘、9戦ぶり無失点

後方から飛び出してゴールへ=27日、下関市(筆者撮影。この記事の他の写真も)

 J2レノファ山口FCは5月27日、下関市営下関陸上競技場でカマタマーレ讃岐と対戦し、1-0で勝利した。今月23日に25歳の誕生日を迎えたばかりの三幸秀稔が開幕戦以来のゴールを決め、チームはこの1点を死守。順位は2位のままだが、首位大分トリニータとは勝ち点で並んだ。

明治安田生命J2リーグ第16節◇山口1-0讃岐【得点者】山口=三幸秀稔(前半45分)【入場者数】5034人【会場】下関市営下関陸上競技場

前節の大分戦と同じメンバーで臨んだ
前節の大分戦と同じメンバーで臨んだ

 相手の割り切った戦い方、つまりは引くところは引き、引っ掛けられたらカウンターでチャンスメークするという戦術は、レノファにはくみしにくいものだ。長身のセンターFWを置いているわけではく、ブロックを個人技やセットプレーで打破するには限度がある。人とボールを動かしてサッカーをするレノファにとって、こうした相手を突き崩すための有効策は大きく分けて二つが考えられる。一つはパスやシュートの精度を上げてブロックの中に針刺すばかりのコースを見出すこと。もう一つは流動的に動いたりサイドチェンジを入れたりしてブロックに隙を作り、自分たちの使えるエリアを広げること。いずれにしても主導権を握って自分たちからアクションを起こさなければ、それらは成立しない。

 それらの作業が上手くいったかどうかは、霜田正浩監督の試合後の会見が物語る。「僕らがもっと成長するためには、こういうゲーム内容ではなかなか上にはいけない」。

3月以来の無失点試合。攻撃面は攻めきれず

 試合を通してレノファがボールを持つ時間が長く、讃岐から受ける攻撃もカウンターが中心だった。予想し得た展開だったが、レノファはパスが正直すぎてスピードアップしなかったり、シュートが枠を捉えられなかったりと、肝心の精度が上がらない。相手を揺さぶるためのサイドチェンジも「前半は狙っていたが風で止まった」(前貴之)とうまくいかず、同サイドから同サイドへと動かすゲーム展開の中で、クオリティーが戻るのを待つしかなかった。

 そのため試合開始からしばらくは質が低く、サイドを深く突いてもなかなかシュートまで持ち込めない。セットプレーのチャンスは何度も手にするが、ターゲットに渡る前にカットされてしまった。

GKとの1対1。池上が体勢を崩しながらもゴール方向へと送り出す
GKとの1対1。池上が体勢を崩しながらもゴール方向へと送り出す

 前半30分を過ぎる頃になって、縦方向のパスが効果的に通るようになりレノファが決定機を作り始める。同33分、小野瀬康介のスルーパスに反応した池上丈二が背後へと抜け出し、すぐにゴール方向へと蹴り出すが、ギリギリのところで相手DFがクリア。続く同37分には今度は左からのCKを起点にボールを繋ぎ、大崎淳矢が右足で振り抜くがこれもゴールとはいかなかった。ただ、球離れが良くなり、相手を動かすことには成功する。

 主導権を握ったレノファは前半終了間際、カウンターから改心の一撃を放つ。自陣からボールを持ち出した高木大輔がドリブルで敵陣深く入っていくと、ゴール前を横断する緩いクロスを供給。ファーサイドでオナイウ阿道がボールを拾い、後方から勢いよくスプリントした三幸秀稔が預けられたボールをネットに突き刺した。「アンカーだからといって取れないというわけじゃないと霜さんから言われていた。そのためには運動量を出して、スピードを上げない」と結果にこだわった三幸の今季2点目で、レノファがようやく先制する。

 ところが、ハーフタイムで霜田監督が「ワンタッチで前線に入れることで相手のディフェンスラインを動かしていこう」と指示を送るものの、相手を動かすよりも前に急いでシュートに行ったり、パスを受けてからの球離れが再び悪くなったりして、前半終盤で復調していたクオリティーがまた下がってしまう。

 前半からボールの受け渡しの軸になっていたのが三幸と池上だったが、後半は両サイドバックも高い位置を取り、前、鳥養祐矢も起点として作用。小野瀬は持ち前のドリブルで右サイドからカットインしていく。さらには山下敬大、岸田和人を入れて前線の活性化を試みたが、「一人のボールを持つ時間が長く、今まで通りのスピーディーなサッカーができなかった」(三幸)という状況に変化は加えられなかった。

好セーブでゴールを守り抜いた藤嶋栄介
好セーブでゴールを守り抜いた藤嶋栄介

 終盤は讃岐のカウンター攻撃を浴び、原一樹や途中出場した高木和正にサイドや背後への突破を許す。それでも、「シュートに対する準備ができ、全体も見えていたので、カウンターでやられてもどこでシュートに来るかはしっかりと見えていた」と話すGK藤嶋栄介が好セーブを連発。試合終盤でピッチに立った高柳一誠が落ち着きを与えたほか、その他のフィールドプレーヤーもシュートブロックに入り、全員守備で三幸の1点を守り抜いた。1-0で試合を閉じ、レノファは3月31日の第7節モンテディオ山形戦以来、9試合ぶりに無失点で試合を飾った。

質の上がるトレーニング。再現性には波

 必ずといっていいほど失点していたレノファが無失点で勝てたのは収穫点。どういう展開に陥っても勝ち点をつかむという勝負強さを見せつけ、首位の大分とは勝ち点で並んだ。

霜田正浩監督は勝利と守備をたたえたが、「それ以外は非常に悔しい内容」と話した
霜田正浩監督は勝利と守備をたたえたが、「それ以外は非常に悔しい内容」と話した

 しかし、笑顔がはじける勝利とはならなかった。左サイドバックの鳥養は「勝ちはしたが納得のいく内容ではなかった」と振り返り、「守備でゼロで抑えられたのは良かったが、自分たちのミスからのカウンターがピンチを招いた。引いてくる相手に対してどう崩すか。もっともっと多くのパターンでやっていかないといけない」と課題を列挙。指揮官も笑みを浮かべず、「クオリティーを求め、一本一本のシュート精度にこだわって、内容と結果の伴った勝ち点3にしなければ、僕らはまだまだ上にはいけない」と語気を強めた。

 険しい表情の背景に「もっと成長しなければならない」という欲がある。

 実は今節を前にした練習期間で、レノファのトレーニングは一段階、ギアを上げたように見えた。戦術に関わってくる可能性があり詳述は避けるが、選手たちにとってはプレー選択の判断精度やスピードがこれまで以上に求められる内容。三幸は練習後に「幅を狭められても横や斜めに出す。考えて動かないと横に出せないし、斜めに入れられない。クオリティーがより必要で、一層みんながやらないといけない」と話していた。

 今節に限れば、練習内容の試合での再現率はかなり低く、端的に言えば判断スピードは遅かった。厳しい言い方をすれば、レノファが苦手とする引いてくる相手に対して、まだ90分を通して通用するクオリティーにも至っていなかった。それでも霜田監督は、相手のウィークポイントを突くための練習も、自分たちのサッカーを成熟させるような練習も、高いレベルで継続していくだろう。それはチームに成長の余地が広く残っているためで、霜田監督は試合後、「こんなところで満足してほしくない。もっとできるのになぜやろうとしなかったのか。チームとしても上に行きたいし、個人としても成長してほしい。こういう試合を通じて成長するのが一番。彼らにはもっと要求していかなければいけない」と強調した。

ここまで10得点のオナイウだが、今節は三幸のゴールをアシスト
ここまで10得点のオナイウだが、今節は三幸のゴールをアシスト

 5月の戦績は3勝2分0敗。上位戦を含んだ5月を無敗で終え、十分な勝ち点を積み上げた。スタジアムに訪れるサポーターにゴールと勝利を見せ、プロチームとしての仕事は間違いなく果たした。それでもレノファは現状に満足せず、個人とチームの成長を目指すべく、次の段階に歩み出そうとしている。

 迎える6月はアウェー戦が多くなるが、維新みらいふスタジアム(山口市)で行われる6月9日のホーム戦は上位のファジアーノ岡山を迎える試合で、注目の一戦となる。また6日は同スタジアムで天皇杯2回戦が行われ、再び大分トリニータと対戦する。

 勝利とともに成長の実感も得られるような夏の戦いにしていきたい。

※大崎の「崎」と高柳の「高」は異体字が登録名