レノファ山口:実った4トップ&2バック 超攻撃策で逆転勝利!

岸田和人が今季初ゴール=12日、山口市(筆者撮影。この記事の他の写真も)

 J2レノファ山口FCは5月12日、山口市の維新みらいふスタジアム(維新百年記念公園陸上競技場)で東京ヴェルディと対戦。前半に2失点するが、オナイウ阿道の2ゴールに加え、途中出場した大崎淳矢と岸田和人が得点を重ね、4-3で逆転勝ちした。暫定2位。他チームの13日の試合を含めても3位以上を確保した。

明治安田生命J2リーグ第14節◇山口4-3東京V【得点者】山口=オナイウ阿道(後半26分、同47分)、大崎淳矢(同37分)、岸田和人(同39分) 東京V=李栄直(前半12分)、ドウグラス・ヴィエイラ(同32分)、奈良輪雄太(後半48分)【入場者数】4893人【会場】維新みらいふスタジアム

前半は流れを手放す。自滅の2失点

 レンタル元との対戦となったため高木大輔が試合に出られず、今シーズン初めて3トップの顔ぶれが変わった。中央にオナイウ阿道、右ウイングに小野瀬康介という並びはこれまでと同じだが、高木がプレーしていた左ウイングは清永丈瑠がスタメンを勝ち取った。また、山下敬大が中盤の攻撃的な位置で先発し、左サイドバックでは3試合続けて鳥養祐矢が出場。前節の京都戦を2-1で勝っていたレノファは、この新しい顔ぶれで連勝を目指してピッチに出て行った。

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 試合開始時点で、気温は33度超。風もほとんどない状態で始まったが、立ち上がりにボールを持っていたのはレノファ。前半8分に鳥養のクロスから小野瀬がポストを叩くヘディングシュートを狙い、さらにこぼれ球から前貴之がシュートを放つなど、ゴールとはいかないまでも早い時間からチャンスを作っていく。

 ところがレノファがゲームを主導していた中で、先制したのは守勢に立っていた東京Vだった。前半12分、東京Vは右サイド(レノファにとっては左サイド)を攻め込み渡辺皓太が深い位置からクロス。中央のドウグラス・ヴィエイラは収めきれなかったものの、ファーサイドに入り込んだ李栄直がゴールに振り抜いた。

先発した清永丈瑠。45分間の出場だったが積極性を見せた
先発した清永丈瑠。45分間の出場だったが積極性を見せた

 追いかけるレノファは右サイドを中心軸に攻撃を組み立てるが、小野瀬やオナイウの動けるスペースが潰され、徐々に攻撃が手詰まりに。サッカーの幅を広げられず、同32分にはパスミスからショートカウンターを受けて2失点目。むざむざと相手にボールを渡してしまう展開に、霜田監督は「回されて崩されて点を取られたというよりは、自分たちの自滅で取られてしまった」とほぞをかんだ。

 攻撃が窮屈になったのは必然的なもので、4-3-3のレノファに対して相手も4-3-3のフォーメーションで迎え撃ち、小野瀬には奈良輪雄太が張り付いた。これまでの試合では反対側サイドの高木が効果的に動いてズレを作ってきたが、新しいコンビで挑んだ前半は連動性に乏しく、にらみ合うフォーメーションに穴を開けられなかった。立ち上がりこそチャンスを作るも、右サイドの不自由は加速するばかりで、2点のビハインドを背負ってハーフタイムに入っていく。

終盤のゴールラッシュ。岸田は今季初得点

 後半は日差しが和らぎ、気温は25度近くにまで落ちてきた。この後半、レノファはスタートと同時に大崎淳矢を入れ、後半18分にはストライカーの岸田和人を投入して攻撃的なカードを切る。「1点差であればまだ分からないが、2点差だった」(霜田監督)ことから、最終ラインの枚数を削るパワープレーを仕掛け、逆転勝ちを目指した。

オナイウ阿道は2得点を挙げ、チーム内のライバルを引き離す
オナイウ阿道は2得点を挙げ、チーム内のライバルを引き離す

 東京Vが前にボールを飛ばさずにつないできたことも、レノファにとっては追い風になった。大崎や小野瀬のハードワークが実を結んで、高い位置で相手のパスを引っ掛けるようになり、敵陣でのプレー時間が増加。後半19分には三幸秀稔のフィードをオナイウがつないで大崎がシュートに行く決定機を作る。この場面こそ決めきれなかったが、同26分、CKの流れから三幸がクロスを上げると、これに反応したオナイウが強烈なボレーシュートを叩き込んで1点差に詰め寄った。

 このあと霜田監督は意外とも言える策に出る。センターバックの坪井慶介を下げ、瀬川和樹を起用したのだ。瀬川はレノファでは一貫して左サイドバックで出場してきた選手。一見すればディフェンシブな交代に映ったが、起用位置はサイドバックではなく、指揮官は「あくまでも攻撃的なウイングバック」としてピッチに送り出した。

 4-3-3で入ったゲームは、3バックを経て、最終的には渡辺広大と前貴之を最後列に残した2-4-4へ。これらの交代によって、点を取りに行くぞというメッセージは十分に選手たちに伝わった。

 後半37分、小野瀬のクロスに「うまくディフェンスの裏に走り出すことができた」と話す大崎が飛びつき、同点となるシュートをゴールイン。さらにその2分後には小野瀬が粘ってつないだパスから池上丈二がセンタリング、これに岸田がヘディングで合わせて逆転に成功する。岸田はこれが今季初得点となり、「いいクロスが入ったのでしっかり入って行けた。シュートで終われるのはいい状態なのかなと思う」と笑顔を見せた。

超攻撃策を続けた霜田監督。「僕らは下がってはだめだ」と話す
超攻撃策を続けた霜田監督。「僕らは下がってはだめだ」と話す

 スコアは3-2で、後半40分を経過。それでもレノファの攻撃はまだ止まらない。霜田監督は「逆転したからといって『守りましょう』ということではきっと追いつかれていた。3点目を取れたら4点目も取りに行く」とテクニカルエリアの最前線で声を枯らす。アディショナルタイムにはカウンターで追加点。渡辺のロングボールにオナイウが抜け出してゴールに迫り、落ち着いて右足を振り抜いた。

 最終盤は奈良輪に決められて1点を返されるが、少ない人数になっても守備の集中は途切れず、GK藤嶋栄介の好セーブなどでピンチを跳ね返し、レノファが大量4得点で勝ちきった。

奏功した超攻撃策。練習と試合がリンク

 後半26分からの約20分間で4点を決め、試合をひっくり返したレノファ。オナイウはそのうちの2点を決め、J2ゴールランキングのトップを譲らぬ今季計9点目となった。「後半、後ろは1失点に抑えてくれた。後ろがしっかりやってくれているというのがあっての前線の得点。チームの力で取れた勝ち点3だった」。オナイウはそう話して、チームの勝利のために黙々とゴールを目指す姿勢を示した。

ヘディングシュートを決める岸田和人
ヘディングシュートを決める岸田和人

 霜田采配とチームの成熟が噛み合った逆転劇だった。超攻撃策の2-4-4の中、前線の選手たちがはつらつとしたプレーで特徴を発揮。オナイウや岸田など点の取れる選手がしっかりとゴールを決め、小野瀬や池上が能力を生かしてその場面を作り上げた。第6節松本戦、第12節甲府戦(いずれも引き分け)でも見せてきた超攻撃策はついに勝利にまでつながった。

 練習で実践している攻撃連係が再現されている。とりわけ後半の再現性は高く、練習と試合とを結ぶひもは確実に太くなってきている。「試合の中でいくつかシステムを変えても適応できるチームになってきた。後ろの経験豊富な選手たちの存在は大きいが、前線の若い選手たちが順応し、成長しているという実感がある」。霜田監督が頷く成長ぶりだ。

 その一方、ゴールを決めた選手とは好対照に、GK藤嶋栄介は険しい表情を見せた。「0-2から4点ってひっくり返して勝てたのは大きな成長につながったが、3失点したのは突き詰めていかないといけない。甘さがあればつけ込まれる。改善できるようみんなと話し合っていきたい」。得点力は存分に示しているが、失点を減らす作業はまだ道半ば。パスミスを拾われての失点に加え、後半アディショナルタイムではノープレッシャーでのミドルシュートを被弾した。

 それでも勝ち点を拾うのがレノファで、お家芸のようにJ3時代から2失点を許した試合を攻撃力でひっくり返してきた。とはいえ、チーム計27ゴールを挙げながら、失点数もほとんど変わらず、得失点差のプラスはわずかに6。戦力が拮抗するJ2リーグでは得失点差が順位表の上下に関わってくる可能性があり、得点力の維持と失点数の減少に向けて注力し続けたい。

 もっとも、決めるべき選手が得点を決め、オフサイド判定に泣いた1点を含めてレノファが計5回もネットを揺らしたのはポジティブな要素だ。岸田と大崎にもゴールが戻り、コーチングスタッフからはスタメン選びに嬉しい悲鳴が上がることだろう。

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 サッカーの醍醐味はやはりゴールシーンにある。応援しているチームが得点を重ねる試合というのは見ていて楽しいもの。レノファは今年、ホーム戦での無得点試合がなく、観戦に行けば必ず得点が見られるという状態にある。痛快な得点シーンを見届け、なおかつ勝利を喜ぶべく、いっそう多くのサポーターが集まることを期待したい。

 レノファは次節はアウェー戦で、20日午後2時から大分トリニータとの上位直接対決に挑む。2週間後の次のホーム戦は下関市営下関陸上競技場で開催。5月27日午後3時からカマタマーレ讃岐と対戦する。

※大崎の「崎」は異体字(大の部分が立)が登録名