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レノファ山口:新潟に力負け。連戦初戦を落とす

上田真之介ライター/エディター
現実を突きつけられた=28日、山口市(筆者撮影。この記事の他の写真も)

 J2レノファ山口FCは4月28日、山口市の維新みらいふスタジアム(維新百年記念公園陸上競技場)でアルビレックス新潟と対戦し、1-2で敗れた。順位は3位のままだが、2位との勝ち点差は4に広がった。

明治安田生命J2リーグ第11節◇山口1-2新潟【得点者】山口=小野瀬康介(後半19分) 新潟=磯村亮太(前半16分)、安田理大(後半51分)【入場者数】6374人【会場】維新みらいふスタジアム

 「残酷な結果になりました」。試合後の記者会見で、霜田正浩監督はそう切り出した。「最後の最後まで勝ち点3を取りに行く試合をしたいと思っていたが、勝ち点1すらも取れなかったのは反省すべき点だ」。新潟に先制点を与えるも、小野瀬康介のゴールで追いつき、後半は片手では足りないほどの数多くの決定機を創出。それでも次の点を手にしたのは流れを引き込んでいたレノファではなく、勝ちに飢えていた新潟だった。

丸岡(前列左から2人目)が先発するが、負傷で途中交代
丸岡(前列左から2人目)が先発するが、負傷で途中交代

ボールは持てども、パスが出ず

 レノファは前節からは一部のメンバーを入れ替え、インサイドハーフでは「大崎は非常に運動量が多くて、攻撃もやって、守備もやって、点を取ることも求められてという中で疲れが溜まっていた」(霜田監督)という判断から、これまで先発してきた大崎淳矢ではなく丸岡満が先発。フレッシュな選手を入れることで中盤の活性化を狙い、前線は好調な3トップの組み合わせを維持してゴールを目指した。

 新潟とは天皇杯での対戦があるとはいえ、同じカテゴリーでのリーグ戦は初めて。手の内の探り合いから始まったゲームは、序盤から落ち着いた展開とはならず長いボールが目立った。セットプレーも双方に多く、レノファは前半13分、池上丈二が入れたCKにインサイドで渡辺広大が合わせるが、右に逸れてしまう。

気温はぐんぐんと上がり、ハーフタイムで30度を超えた
気温はぐんぐんと上がり、ハーフタイムで30度を超えた

 スコアが動いたのは主導権がどちらにも渡っていなかった同16分だった。新潟の原輝綺が右サイドからクロスを入れると、そのクリアボールをファーサイドで回収した磯村亮太が振り抜き、新潟が先制する。レノファにとってはクリアボールのこぼれた先が悪かったと言えるが、「松本戦、水戸戦と同じやられ方で、中に入った中盤を掴まえにいって大外の選手がフリーになった」(霜田監督)という失点シーンで、相手選手の掴み方には多少なりとも修正が求められる場面となった。

 また、このゴールに至る途中の接触プレーで丸岡が負傷。レノファは急きょ山下敬大を投入する。

 それでもゲームの中では序盤。十分に同点、逆転へと試合を運んでいく時間が残されていた。しかし、レノファのこの試合での問題点がはっきりと見えてくるのは失点して以降だった。

 アンカーの三幸秀稔にボールは収まっていたが、そのあとのパスが繋がらず、簡単にボールをロストする。新潟の寄せが特別に厳しかったとは言えないものの、コースをしっかりと消され、結果的にタイミングが外れたところでのチャレンジングなパスが増加。出し手と受け手の呼吸が合わず、「前半は探してパスを出すという感じだった」(小野瀬康介)。パスが引っ掛かってカウンターを何度も受け、シュートブロックやGK藤嶋栄介の好セーブでなんとかしのいでいくが、そこから効果的な攻撃に転じることはできなかった。

小野瀬が一矢。オナイウに並ぶ6点目

 「探してパスを出す」という状況を打開するべく、ハーフタイムで霜田監督は「一人一人がボールを持つ時間を短くしよう」と指示。気温が32度まで上がったことも若い選手が多いレノファにとっては追い風となり、後半のレノファは縦をコンパクトに、幅は広く使った攻撃が見られるようになる。前半は思うようなタイミングでボールが得られず、窮屈になっていた小野瀬康介にもパスが入り、一列後ろの前貴之も積極的にオーバーラップ。この二人の関係から何度となく右サイドを崩していく。

相手を交わしてシュートに持ち込む小野瀬康介。個人技が冴えた
相手を交わしてシュートに持ち込む小野瀬康介。個人技が冴えた

 決定的なチャンスも大幅に増えるが、あと一歩が及ばない。後半2分、小野瀬からのクロスに山下敬大が合わせようとするが枠を捉えられず、同8分のオナイウ阿道のミドルシュートもポストに嫌われる。

 それでもボールを高い位置で保持し、同19分、前貴之のパスを受けた小野瀬が電光石火のドリブルで相手を交わしてシュート。「夢中でやっていたのであまり覚えていない」と振り返る気持ちの入った一撃を左隅にしずめ、レノファが同点とした。小野瀬はこれが今季6ゴール目で、オナイウとともにゴール数ランキングでリーグトップに立った。

 なおもレノファはセカンドボールを拾ったり、縦の早い展開からチャンスメークし、オナイウや高木大輔が次々とシュートを狙う。だが、やはりゴールが遠い。いい流れのときに決めきれないと流れが相手に渡ってしまうのはよくあること。3枚の交代カードを全て前線の選手に使った新潟が最終盤で攻勢に出ると、レノファはその勢いを正面から浴びてしまう。後半アディショナルタイム。クロスボールへの対応でレノファはPKを献上し、これを安田理大に決められて万事休す。1-2でゲームを閉じ、今季3敗目、ホーム戦ではシーズン初の黒星を喫した。

慢心はなかったか。練習から意識改善を

霜田監督は練習に取り組む姿勢から改善を促す
霜田監督は練習に取り組む姿勢から改善を促す

 前半から続いたパス交換のもたつきやミス、それに最終盤での失点。要因はどこにあり、修正は可能なのか。

 ベテランの坪井慶介は「誰もボールに寄せていないとか、誰かがさぼっているとか、そういうことではない」としたが、改善には「普段の練習から突き詰めていかないといけない」と指摘。また、霜田監督も同様にトレーニングからの意識向上を求めた。「日頃からこういうテンションで練習しているかどうか。試合だからと急にできるわけではない。日々の生活や練習に取り組む姿勢。そういうところが出てくる」。

 開幕戦から上位に立っていることで、どこかに強者のおごりがあったかもしれない。昨シーズンを苦しんだチームであり、順位表の下のほうからスタートしたという現実を、こういう試合のあとは再認識したい。パスのクオリティーで劣り、シュートは枠を捉えられなかった。1対1の場面では確かに体を張っていたが、後ろがなんとかしてくれるという慢心はなかったか。

 結果を見れば1-2の拮抗した試合と言える。とはいえ、冷静に見れば、小野瀬の個人技によって救われたような一矢を放ったのみ。連戦のために猛省ばかりをしている時間はないが、このチームが持つべきチャレンジャー精神を思い出し、練習から激しい戦いでぶつかり合い、それを試合で再現してほしい。

 先発した池上丈二は「これから連戦が続く。反省すべき点をしっかり反省し、連戦なのですぐに試合が来るので、落ち込んでいても仕方がない。次に向けてやっていきたい」と引き締め直す。

高木大輔(右)と高木善朗の兄弟対決が実現したが、マッチアップは少なかった。試合後に兄弟で取材に応じていた
高木大輔(右)と高木善朗の兄弟対決が実現したが、マッチアップは少なかった。試合後に兄弟で取材に応じていた

 連戦はアウェー戦が続き、5月3日にヴァンフォーレ甲府と、同6日に京都サンガF.C.と対戦する。次のホーム戦は同12日で、維新みらいふスタジアムに東京ヴェルディを迎える。

※大崎の「崎」は異体字(大の部分が立)が登録名

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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