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ギラヴァンツ北九州:森下仁之監督が就任会見。トータルフットボール掲げ「絶対に昇格」

上田真之介ライター/エディター
会見に臨んだ森下仁之新監督 =11日、ミクスタ(筆者撮影。以下同)

 J3ギラヴァンツ北九州は1月11日、ミクニワールドスタジアム北九州で森下仁之監督の就任会見を開き、新指揮官は「覚悟を持ってこの仕事(監督)を続けている。絶対に昇格したい」と意気込みを語った。森下監督は12年から16年までツエーゲン金沢を率い、14年にはJ3を優勝してチームをJ2に昇格。17年は九州産業大の監督を務め、天皇杯県予選でギラヴァンツと対戦していた。

 ギラヴァンツは16年シーズンにJ2で最下位となり、J3に降格。17年はコーチングスタッフを入れ替えてJ3リーグに挑んだが、上位勢に勝ちきれず9位に終わった。昇格圏の2位以内には遠く及ばず、体制を再び一新。今年は監督交代だけでなく、クラブ本体や強化部門のトップも入れ替えた。

 社長には北九州市出身で西日本新聞社北九州本社代表などを務めた玉井行人氏が就任。強化育成本部長には日産自動車・横浜マリノスでプレーし、昨季まではJFLヴェルスパ大分の監督だった佐野達氏を招いた。

スタジアムの観客席を見上げる森下仁之監督(右)
スタジアムの観客席を見上げる森下仁之監督(右)

「トータルフットボール」への変革

 クラブは今季の強化方針として、昇格への本気度を常に表現▽組織的な連動性と統一感▽ハードワーク▽一体感--の四本柱を掲げ、J2昇格経験のある監督の中から人選を進めた。

佐野達・強化育成本部長
佐野達・強化育成本部長

 就任会見に同席した佐野本部長は、方針設定の背景を「(昨シーズンは)戦う姿勢が足りなかった。ゴールへ向かう強い姿勢を練習から示し、ピッチで分かるように表現しないといけない。75分からの残り15分で失点が多いのも致命的だった」と説明。「さまざまなチームのスタイルがあるが、全員守備全員攻撃に勝るものはない。70年代にオランダのフットボールが掲げたものだが、これに勝るものはない。どこからでも誰でも点が取れて、全員が守れるスタイルで戦っていきたい」とし、新監督には厳しい規律を設けてのチーム作りや戦術の柔軟性を求めた。

 森下監督は「(金沢では)J2の残留争いをするのではないかと言われたチームを率い、選手とチームの位置付けの中から堅守速攻というスタイルでやってきたが、それ以前は攻撃的な部分でやってきた。自分自身は攻撃的とか、守備的とか、どちらにも偏らずにできると思う」と応じ、こう強調した。「北九州のJ3での位置付けを考えれば、昇格は狙える。全員が関わるサッカーは今の時代では当たり前のこと。全員が攻守に関わっていける距離感やアイデア、メカニズムを規律を含めて植え付けたい。理想だけではできない部分も出てくるが、どのような攻守の共通意識を持って戦うのか、しっかり連携を取れるようにやっていく」。

 ギラヴァンツは13年からの4年間は現実路線に近い堅守速攻スタイルで戦い、J2での上位進出とJ3降格を経験することになった。トータルフットボール路線が定着すれば、三浦泰年監督(現鹿児島ユナイテッド監督)が率いた11、12年シーズン以来となる。

 ただ運動量が求められるのもこのスタイルの特長で、チームは若返りを図ると同時に、森下監督は「チームの約束事を確立させる。奪われたときに奪い返すとか、そういうのがスタンダードになれば一人一人の能力が上がる。質を上げたり、約束事を作って運動量を上げたい」と語り、めりはりを付けてゲームを戦っていく姿勢を示した。

 会見での主な発言は次の通り。

森下仁之監督

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-就任を決めた理由は?

 名前が挙がったことと、こういったスタジアムで指揮を執ってみたいというのもあった。このような大事なタイミングで自分にオファーをいただいた。そのやりがいの部分で、ここで指揮を執らせてもらうことに自分自身、決意を固めた。

-ギラヴァンツの印象は?

 金沢時代にも戦っているが、そのときも選手個々にポテンシャルがあるという印象を持っていた。昨年は(九州産業大の監督として)天皇杯で1試合、夏に練習試合で1試合を戦ったが、戦っている選手たちにプロのプライドが少し見えなかった。熱さやプライドが足りないのかなという印象だった。

-強化の柱は?

 強化部長とコミュニケーションを取りながらやってきた。上のカテゴリーで出ていなくても、同じカテゴリーで出ている選手のほうが重要ではないかと思っていたので、その点はお願いした。

-J2昇格のために重要な点は?

 今のJ3は力のあるチームが増えている。降格がなく、昇格もないというチームと対戦しないといけない。難しいリーグ。金沢がJ3で優勝できた理由を一つに絞るのは難しいが、新幹線開通で金沢が行政を挙げて一つになっていたタイミングで、選手も一つになって街のために、クラブのためにと戦った結果と思う。いかにいいサイクルを生み出していくか。16日から練習が始まるが、北九州でもそれは重要な要素だと思っている。

-街を巻き込むために考えていることは?

 昨年、イベントなどで選手が街に出て行く回数が少なかった。そのために協力してくださいと言われている。時間を割くことでコンディション面でいい方向に出ないかもしれないが、それをやった中で結果が出たら素晴らしいと考えて協力していきたい。

-改めて目標を。

 自信を持って昇格を目指す。「目指したい」ではなく、「昇格します」。覚悟を持ってこの仕事を続けているし、覚悟を持ってここに来た。絶対に昇格します。

佐野達強化育成本部長

-森下監督にオファーを出す決め手になった点は?

 この監督に昇格を任せられると思った。戦術的なオプションや柔軟性がある。そのあたりが決め手になった。

-選手編成のコンセプトは?

 19人の選手が残った。もともとポテンシャルがあり、十分に戦える。そこに足りない部分を補強した。大型補強ではないが、ポイントで。センターバックが少なくなっているのでそのポジションと、得点を取るところ。池元友樹、平井将生という強力なFWがいるが、それに関わるFW。センターライン中心で考えている。

-クラブはJ3で2年目。編成に掛けられる費用は変わったか?

 若干減った。細かいことは申し上げられないが、やはり昨年同様ではない。

-育成の方針はあるか?

 ユースはまだ県3部。何が何でも2部に上げないといけない。Jクラブにとってアカデミーは非常に重要なところ。練習にも顔を出し、サポートできればと思う。トップとの関わりもやっていきたい。

安藤、本山と契約更新。練習は16日から

 ギラヴァンツ北九州は1月11日、MF安藤由翔、MF本山雅志の両選手の契約更新と、阪南大4年の藤原奏哉選手の加入を発表した。11日時点での登録選手は計26人。練習は1月16日に新門司球技場(門司区)でスタートし、21日には九州学生選抜との練習試合を行う。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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