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レノファ山口:闘志前面、小野瀬が一矢報いる一撃。苦杯にも光

上田真之介ライター/エディター
後半途中から出場し1ゴールの小野瀬康介(右)=7日、維新公園(筆者撮影。以下同)

 J2残留に向け、負けられない試合が続くレノファ山口FC。10月7日はホームの維新百年記念公園陸上競技場(山口市)に高い攻撃力を誇る4位名古屋グランパスを迎えた。試合はMF佐藤寿人のゴールなどで名古屋が3点を先行、レノファも相手を上回るシュートを放ったが1-3で敗れた。ただレノファにとって終盤戦を戦い抜くヒントが見えた試合にもなった。

明治安田生命J2リーグ第36節◇山口1-3名古屋【得点者】山口=小野瀬康介(後半18分) 名古屋=玉田圭司(前半10分)、佐藤寿人(同36分)、田口泰士(後半13分)【入場者数】6902人【会場】維新百年記念公園陸上競技場

レノファは前節からは4人を入れ替えた
レノファは前節からは4人を入れ替えた

名古屋が巧みなパスワークで先行

 チームの軸となっているMF小塚和季が出場停止でケガ人も多く抱える中、レノファは今節、中盤を大きく入れ替えた。MF鳥養祐矢、MF池上丈二など4選手を新たに先発起用し、システムも4-4-2に変更。カルロス・マジョール監督は「中盤の選手の特長を考えるとボールを持って安定させるのにはこの4人のほうがいいと判断した」と狙いを説き、中盤勝負に備えた。

 だが、中盤で主導権を握りたいという思惑とは裏腹に、現実は中盤勝負まで持って行けず、名古屋の勢いが勝ったままの展開となった。「相手に的を絞らせないだけのパス回しの早さ」(風間八宏監督)で名古屋がゲームを動かし、前半10分にFWガブリエル・シャビエルの巧みなヒールキックからFW玉田圭司が抜け出て先制ゴール。同36分にはDF宮原和也の鋭いクロスにMF佐藤寿人が頭で合わせ、リードを拡大する。

試合を決定づける田口泰士のヘディングシュート
試合を決定づける田口泰士のヘディングシュート

 後半に入っても名古屋がレノファ陣内でのプレーを続ける。セットプレーのチャンスも多く、そのうちの一つが追加点に。後半13分、名古屋は右からのCKをシャビエルが入れると、MF田口泰士がマークを振り切って飛び込み、豪快にゴールイン。試合を決定的なものとする3点目を決めた。

 レノファが敷いた4-4-2の布陣は相手とマッチアップしていたが、短い練習期間で落とし込めていたとは言えず、守備時の連係にはほころびがあった。シャビエルの巧みな球出しや、タイミングを外したところからのクロスに対応できず、失点が連続。田口のゴールで3点差にまで広がった。

 この時点で勝敗はほぼ決したが、しかし、粘りを見せたのは2節前の松本山雅戦で2点差をひっくり返したレノファイレブンだった。

小野瀬、佐藤らが途中出場。流れを変える

 失点から間もない後半18分にレノファはMF佐藤健太郎とMF小野瀬康介を同時投入し、ボールを動かせていなかった中盤にメスを入れる。特に小野瀬は先発から外された悔しさもにじみ、投入直後から全開で猛進。ドリブルで敵陣を切り裂き、投入から1分とたたない内にミドルシュートを左隅に突き刺した。「パスの選択もあったが、ディフェンスが下がってシュートコースが見えたので、思い切り振り抜いた」。小野瀬の結果へのこだわりが生んだゴールとなった。

追撃点となるミドルシュートを蹴る小野瀬康介
追撃点となるミドルシュートを蹴る小野瀬康介

 その後も小野瀬は高い位置でボールを収めてシュートを連発し、相手ディフェンスに風穴を開ける。2点差を背負いながらもレノファが高い位置でボールを動かすようになり、DF前貴之のミドルシュートやMF鳥養祐矢のパスなどから何度かのチャンスを作る。しかし、最前線での連係が合わず、小野瀬とFWレオナルド・ラモスが交錯する場面も。最終的には相手よりも一つ多い13本のシュートを放ったが、ゴールは1本にとどまり、レノファは1-3で黒星を喫した。

 単純な敗因はコンパクトにボールを回す相手の攻撃に振り回され、守備が崩れたことだろう。ボールホルダーを挟んで奪い取ったり、パスの受け手を潰したり、何らかの策を講じることはできたはずだが、実際には名古屋のパス回しは抑えられなかった。ボールホルダーに二人以上が寄せても奪えず、なおかつ、パサーに複数の選択肢を与えていた。DF渡辺広大、DF福元洋平のキーマン2人が出ていないという状況があるにしても、守備の共通理解を深め失点を減らせるよう取り組んでいくしかない。

気持ちと走りで貢献できる布陣を

宮城雅史はドリブルで駆け上がった
宮城雅史はドリブルで駆け上がった

 その一方で光を見た試合でもあった。小野瀬が途中出場にもかかわらずチーム最多の4本のシュートを放ち、負けゲームながら次への望みを見せてくれた。また、小野瀬以外にもDF宮城雅史がボールを持ち出し、ドリブルで中央を駆け上がるシーンがあった。未だ戦術は一定しないが、こうした攻撃姿勢は存分に見せていくべきだろう。

 宮城は「負けている状況だったので、行くしかないという気持ちが出て前に行った。勝ちたいというのを全員が前面に出してやっていきたい」と話す。サッカーは気持ちだけで勝てるほど甘くはないかもしれないが、気持ちがなければそもそも勝利への挑戦権さえ得られない。途中出場した佐藤健太郎も「自分たちの力を上げていくしかないし、内容よりも勝ちにこだわってやる。粘り強く諦めずに最後までやる。それが大事だ」と強調した。

残り6試合。サッカーを楽しみ、結果も呼び込みたい
残り6試合。サッカーを楽しみ、結果も呼び込みたい

 7日のJ2リーグではツエーゲン金沢が勝って順位を上げ、残留圏内との勝ち点差は7または8に拡大。残り6試合でひっくり返すには容易ならざるギャップとなった。ただ諦めるにはまだ早いし、戦わざる者に這い上がるチャンスは訪れない。上述した宮城はこう続けた。「松本に勝ったときのようにみんなで前に上がり、全員攻撃全員守備でやっていきたい。飛び抜けた選手がいるわけではなく、運動量でカバーするしかない。もっと走っていかないといけない」。

 短い時間ながら見せたクラシカルな、それでいて強さを内包する攻撃的なサッカー。その披露が3点を追う状況になってからだというのは悔やまれるところだ。前半から戦うサッカーを展開できれば勝機は見いだせる。残り6試合、走ることを厭わず、戦う気持ちを抱いた集団で、前を向いて駆け抜けたい。

 次戦はアウェーゲームで、15日にトランスコスモススタジアム長崎(諫早市)でV・ファーレン長崎と対戦する。次のホームゲームは21日。下関市営下関陸上競技場に水戸ホーリーホックを迎える。午後2時キックオフ。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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