レノファ山口:難路の暫定体制 町田に0-1、自動降格圏に沈む

猿澤真治体制での初陣。前節から5人が入れ替わった

猿澤真治監督を暫定的な指揮官としたJ2レノファ山口FCは5月27日、下関市営下関陸上競技場でFC町田ゼルビアと対戦。準備期間の短い中、システムやメンバーを変更して臨んだものの0-1で敗れ、自動降格圏に後退した。

明治安田生命J2リーグ第16節◇山口0-1町田【得点者】山口=なし 町田=中島裕希(前半26分)【入場者数】3369人【会場】下関市営下関陸上競技場

PKで先制点献上。厳しい結果に

上野路線の継続か、新風を吹き込むのか-。5月23日に上野展裕監督が事実上解任され、レノファは今節から暫定的に猿澤真治監督が指揮を執る。今節までのスケジュールが中5日と短く指導ができた期間はわずか。猿澤監督の採用したスタイルは変革を選んだように見えたが、実際には特有の事情が絡んでの帰結だった。

セットプレーやロングボールから打開を図るがシュートは5本に留まった
セットプレーやロングボールから打開を図るがシュートは5本に留まった

ゲームを簡単に振り返ると、レノファは前線でFW岸田和人とMF加藤大樹、ボランチにMF池上丈二を起用するなど前節から5人を入れ替え。DF渡辺広大が復帰した最終ラインは3バックを採用した。戦術面でも動きがあり、足下で繋ぐのではなくサイドチェンジと裏を狙った縦パスを多用、大きな展開が目立つゲーム内容となった。

イーブンのボールを取り合う状態が続く中、レノファは今節も先制点を相手に渡してしまう。前半26分、ペナルティエリア内での競り合いの中、町田の中島裕希に対してプッシングのファールを冒してPKを献上。これを中島自身に決められ、早くも追いかける状態となった。

ただ、失点後もロングボールを使って岸田を走らせたり、ピッチを横断するダイナミックなボールでオープンスペースを使ったりとチャンスメーク。前半36分にスローインの流れから佐藤健太郎がシュートを放ったり、後半立ち上がりには小野瀬康介がゴール前まで持ち込むなど見せ場を作った。しかし単発の攻撃が多く前節が孤立気味。ゲームを通してシュートはわずか5本に留まった。相手にはPK以外の大きなチャンスは与えなかったが、早い時間の失点を返すことはできず0-1で敗れた。

ロングボール中心。背景に不自由さの影

渡辺広大は「積み上げてきたサッカーをもっと出せれば違った展開になった」と話した
渡辺広大は「積み上げてきたサッカーをもっと出せれば違った展開になった」と話した

システムやメンバー変更といった要素よりも、この試合で目を引いたのは奪ったボールをロングフィードでFWに繋げていくというスタイルだった。もっとも相手のコンパクトな陣形を考慮すれば、背後を取ることを得意とする岸田和人やスピードのある加藤大樹を走らせる策は有効な手だて。猿澤監督も「自分たちでボールは繋ぎたいが、相手がコンパクトならば背後に(出す)というのは定石だと思う」と説明する。しかし、レノファが取られたオフサイドが前後半あわせて8本に上ることからも分かるように、余りにもロングボール一辺倒に。渡辺広大は「(町田対策として)サイドチェンジと裏のボールを増やそうとやっていたが、増やしすぎてしまった」と話した。

レノファといえば細かくボールを動かす地上戦のパスサッカーがお家芸。この試合内容で判断するならば、レノファは築き上げてきたサッカーを捨て、新たなチャレンジに出たという評価をすることになる。とはいえ、短期的な結果のために相手に応じてサッカーが変化することはある。相手のウィークポイントを狙うのは当然のことで、今節ならば背後を突くというのは有効策。今節をもってスタイルを決めつけるのは早計だろう。

そもそもレノファはスモールラインナップで、地上戦をするための戦力構成。上野展裕前監督が目指してきたサッカーを志向する選手やそれに魅了されたサッカーファンも少なくないだろう。にもかかわらず、ロングボール中心にならざるを得なかったのには主に二つの理由がある。

全面緑色の芝だったが、バウンドの読みにくい硬さだった
全面緑色の芝だったが、バウンドの読みにくい硬さだった

一つは下関のピッチコンディションだ。芝は生えそろっていても、地面が硬くイレギュラーバウンドしやすかった。町田の相馬直樹監督は「山口さんにしては長いボールが多かった。ピッチコンディションが硬めだったり、風が強いという要素があってどちらもボールを落ち着かせて動かす展開ではなかった」と指摘。上述の渡辺も「細かいパスが跳ねたりパススピードが変わる。それは言い訳に過ぎないが、そういうところでのズレがあった」と振り返った。

レノファは試合前日に下関で練習を行っているが、細かなパスを通すには厳しい状況。ピッチ状況の改善は進んできているとはいえ、ミスを誘発しそうな細かなパスワークは控えざるを得なかった。

猿澤真治監督。次期監督が決定するまでの間の暫定的な指揮となっている
猿澤真治監督。次期監督が決定するまでの間の暫定的な指揮となっている

もう一つはアカデミーダイレクターを務めてきた猿澤監督が暫定的な監督だという点だ。そもそもトップチームのコーチ陣からの昇格ではないため、上野展裕前監督の細かな戦術を引き継いだ上で修正を加えるというやり方は難しい。また長期的な視点に立って猿澤監督なりの方法でチームを構築することも、いわば中継ぎ役のために限度がある。猿澤監督自身も「準備させてもらってやれるなら、町田のようにコンパクトに4-4-2でやりたいという思いがある」と話し難しさを滲ませる。自由度が少ない中で、「一戦一戦勝ちに行くという中での逆算」でトライした結果がこのサッカーだった。

こうした二つの大きな障壁を考えれば、今節のサッカーが新生レノファのスタイルだと決めることはできない。

戦う姿勢を見せ続け、確かな移行を

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レノファらしいサッカーができず得点こそ生まれなかったが、無収獲に終わったわけではない。PKを覗けばセットプレーからの失点がなかったことはプラスだ。大きな展開をするというサッカーも、相手によっては効いてくる場面もあるだろう。それにケガで離脱していた選手が復帰してきていることも今後に向けては心強い。

もっとも、本稿で次へ繋がりそうなポイントや修正点を挙げたとしても、あまり意味は為さない。繰り返しになるが、いまは上野体制から次期監督の体制への移行期。このモラトリアムは相手に合わせたサッカーで勝利を目指すことと、レノファの原点たる最後まで戦う姿を見せること以外に選択できるものは少ない。左足靱帯のケガから復帰した三幸秀稔は「球際で戦うところや走るところという自分たちの基本に返る。そのあとにレノファらしいサッカーが付いてくる」と強調した。

本来なら上野メソッドの上に何を付け加えるかを考え戦うべきだが、そのステップはもう少し先になる。次戦も猿澤監督のもとで戦う。辛抱強く勝利を目指したい。