ギラヴァンツ北九州:課題浮き彫りのミクスタ2勝目。MF小谷はJ初ゴール

快晴のミクスタ。ホームでは1カ月ぶりのリーグ戦開催となった

「手放しでは喜べない。自分たちでゲームを苦しくした」--。GK山岸範宏は硬い表情を崩さなかった。

明治安田生命J3リーグ第6節の8試合が4月29、30日の両日、各地で開催。ギラヴァンツ北九州は30日、ミクニワールドスタジアム北九州(北九州市小倉北区)にYSCC横浜を迎え、MF小谷健悟のJ初ゴールなどで3-2で勝利した。しかし最下位のYS横浜に先制を許すなど課題をあぶり出したような試合になった。

明治安田生命J3リーグ第6節◇北九州3-2YS横浜【得点者】北九州=花井聖(前半24分)、池元友樹(前半40分)、小谷健悟(後半4分) YS横浜=仲村京雅(前半15分)、辻正男(後半29分)【入場者数】6192人【会場】ミクニワールドスタジアム北九州

決定力は改善してきたが…

ギラヴァンツの原田武男監督は試合2日前、「改善点は決定力。そこを上げていかないと勝負にならない。取るべき時間帯に取るべき選手が取れればチームはもっと上向きになる」と話し、練習を通してゴールを強く意識させていた。一方でビルドアップに関わる選手は流動的で、練習ではメンバーを大幅にシャッフルしながら複数回のゲームを実践。「普段の練習からメンバーを変えているのでいい意味で競争があるし、みんなとコンビを組んでできる」(DF加藤弘堅)という環境で選手間の連係を強化してきた。

実際にゴールへ向かう姿勢はゲーム立ち上がりから見られ、開始早々にFW池元友樹のクロスから決定機を作り出すと、直後のコーナーキックにはFW小松塁が合わせてゴールに接近。得点こそ生まれなかったが、YS横浜に対して攻撃力の高さをいきなり見せつけた。

ただ、YS横浜も出鼻のピンチでラインをずるずると下げてしまうということはなかった。最初の10分を耐え抜くと、前半15分にカウンターから素早く展開。ギラヴァンツのブロックができるよりも前に、MF仲村京雅が判断良くコースを突いたミドルシュートを放った。これが左隅に刺さりYS横浜が先制、2年ぶりにYS横浜でプレーする仲村はこれがJリーグ初得点となった。

花井が同点弾。池元、小谷も続く

早い時間に試合が動いたこともあり、両チームともにゴール前でのプレーが増えていく。ギラヴァンツは中央からサイドに振り、それを中に戻していく際に何度もコーナーキックを獲得。前半24分、DF石神直哉が蹴った左からのコーナーキックに「プレッシャーを感じずにヘディングできた」と話すMF花井聖が合わせて同点とした。

その後も決定的な場面をより多く作ったのはギラヴァンツ。しかしシュートが枠を捉えられなかったり、YS横浜のGKフィリップ・ウィフマンの好セーブに阻まれたりと、ゴールが遠い。それでも同40分、小谷の縦パスに池元が抜け出ると、ドリブル突破で道を開いて逆転弾。決めるべき選手たるFW池元が左隅にしずめて前半のうちにゲームをひっくり返した。

ミクスタにはJ3の今節最多の6192人が来場した
ミクスタにはJ3の今節最多の6192人が来場した

後半の立ち上がりには、右サイドの高い位置で得たスローインを起点にテンポ良く展開。前半からチャンスに絡んでいた小谷が今度は自ら左足でシュートを狙うと、好セーブを見せていたGKも及ばず、実質的な決勝点となるゴールを挙げた。小谷もこれがJリーグ初得点。「狙い通りのゴールだった。やっと決められてほっとしています。初めて親がミクスタに来ている中で決められて親孝行できた」と笑顔の一撃となった。

YS横浜に主導権。ギラは対応に遅れ

だが、このあとからゲームが難しくなっていく。

YS横浜は後半14分、先制点の仲村からFW辻正男にメンバーを代え中盤の枚数を増やす。樋口靖洋監督の「セカンドボール勝負を意識していた。間延びして取れなかったのを解消するために3ボランチにして真ん中を固めた。それで奪えるようになった」という意図通りにYS横浜がイーブンのボールを回収。サイドでの攻防でもYS横浜が押し切る場面が増え、同29分にはDF後藤京介の左からの低いクロスに辻が合わせて1点差となった。

主導権はYS横浜が握り続け、流れの中に加えてセットプレーでもシュートに持ち込む。ギラヴァンツはGK山岸のセービングで難を逃れるが、YS横浜の勢いは収まらない。試合最終盤、ギラヴァンツもカウンターから途中投入のMF茂平とFW平井将生が連続してシュートを放つも、GKフィリップ・ウィフマンがビッグセーブで応戦。にわかにGK対決の様相を呈するようになる。

アディショナルタイムは1点を追いかけるYS横浜がウィフマンも上がった状態でのパワープレーとなるが、最後はギラヴァンツのGK山岸がゴールマウスを守り抜いた。3-2でギラヴァンツがなんとか逃げ切った。

試合運びに課題。J3をどう戦うか

GK山岸は「さまざまな点が反省点に挙がる。収獲よりも反省点のほうが多い。勝ったからOKでは成長はない」と厳しく指摘。DF加藤弘堅は「後半の早い段階で小谷が取ってくれたが、もう少しうまく(時間を)使えたら内容は変わっていたと思う。どこでシフトチェンジするかをうまく僕ら(DF)が伝えないといけない」と話した。

原田武男監督は「マイボールを増やすべきだったが、『槍』ばかりになった」と話した
原田武男監督は「マイボールを増やすべきだったが、『槍』ばかりになった」と話した

指揮官の言葉も同様で、「後半に入るときに次の1点が勝負になるという話をしたが、取ったあとの試合運びが新たな課題になった」(原田武男監督)というところは疑いを挟む余地はない。ゲームの進め方をはっきりできず、結果が相手に転がっても不思議ではないほどに苦しい内容となった。特に3-1となったあと、追加点のために前に運ぶのか、点差をキープするべくリトリートするのか、意思疎通が十分だったかは検証が必要だろう。

また、第5節の鹿児島ユナイテッド戦(●1-2)でも見られたが、相手の選手交代に対して対応が遅れている。YS横浜が辻を投入して以降、「プレッシャーが掛けられずズレが生じていた」(花井)という時間帯がやや長く続いた。J3では試合開始時に4-4-2のシステムを採用するチームが多いものの、ゲーム中に4-3-3や5バックに組み替える選択肢は多くが持っている。降格がないリーグゆえに成熟度の高さはJ2以上で、臨機応変なシステム変更が利きやすいのもJ3の特徴と言えよう。

今節はゴール前のシーンが多く、GKのビッグセーブが連発するという、ある意味では見どころの多い試合になった。だが、J2に再昇格するには安定した戦い方が必要。立ち上がりから主導権を握ると同時に、練度の高いチームが繰り出す変化球を上手くいなすだけの賢さも持っていたい。

ギラヴァンツは今後、栃木SC、ガイナーレ鳥取というJ2経験があるチームと戦っていく。彼らもまたJ3の戦い方に苦しんできたチームだ。いかなる攻防を繰り広げうるか、1週間の間での修正力が試される。

ギラヴァンツ北九州のホームゲームに関しては2試合に1回程度の予定でゲームレポートを載せている。スタイルはJリーグ公認ファンサイト「J’s GOAL」でマッチレポートが掲載されていた時期(14年度まで)のものや、「九州J-Park」に掲載していたものを踏襲している。

なお、現時点で14年シーズンまでの各クラブ担当者やそれ以降の担当者などが、メールマガジンやウェブメディアの形で情報発信しているケースがかなり多い。アウェーゲームのレビューに関しては相手側媒体も参考にしてほしい。