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後輩が第三者に失礼な言動を取った時、先輩たちはどう対応するのか

てれびのスキマライター。テレビっ子
『くりぃむナンタラ』(テレビ朝日)のTVerサムネイルより

『くりぃむナンタラ』(テレビ朝日)では9月6日と13日に2週にわたって名物企画「裸の王様度チェック」がおこなわれた。

これは芸歴が長くなると何をやっても注意されない「裸の王様」になっているのではないかと、芸人仲間の前であえて問題行動をとり注意してもらえるかを検証するという企画だ。

これまでは後輩芸人を相手に検証していたが、今回は先輩芸人を相手に実施された。

上下関係の厳しい芸人の世界で後輩から注意をするのは難しい。先輩からも注意されないとなると、それはもう「裸の王様」だというわけだ。

そんなドッキリ検証企画でその趣旨を超えた意外な結果が得られることになった。

Aマッソ加納×にしおかすみこ

最初に検証したのは、Aマッソ加納。ターゲットは同じ事務所の先輩・にしおかすみこだ。

とはいえ、2人は数年前に営業で一度一緒になった程度の関係性。ほとんど接点はない。

しかも、近年勢いのある加納に対し、にしおかはバラエティ番組への出演が約7年ぶり。引け目があり、言いにくいことが予想される。

偽企画の打ち合わせで加納に課せられたミッションは以下の通り。

1 ディレクターに何を言われても『オモんな』と悪態をつく

2 台本を丸めてディレクターに投げつける

3 くりぃむしちゅーの悪口を言う

難易度レベル1から始め、注意をされなかったらレベルを上げていく。

ディレクターから企画説明を受けると「オモンなそう」「いや、オモんないやろ」「何がオモロい?」などと悪態をつく加納。

これに対してにしおかは、困った顔でチラチラと見ながら「がんばります」「楽しそうな気がする」などと加納の言葉を打ち消すように言う。

加納に対しても「やってるうちに楽しくなるかも知れないから」となだめるにしおか。

加納が台本を投げつけるとにしおかは即座にそれを証拠隠滅するかのように回収していく。

スタッフが一旦退出すると、不満げな加納に、にしおかは心底心配した表情で言うのだ。

にしおかすみこ:

「なんでなんで?なんにも腹立たないよ、大丈夫だよ」

「ストイックに考えすぎだよ。やれるって。全然大丈夫だって」

疲れてる? 睡眠不足? お腹空いてる?

スタジオで見ている上田晋也が「いいヤツ」と称したように、加納の失礼な言動を咎めるよりもまず彼女の精神状態を本気で心配していたのだ。その振る舞いはとても素敵だった。

説明不要だろうが、にしおかすみこといえば、「にしおか~すみこだよっ」とSMの女王様の格好で登場し、「どこのどいつだ~い?」「あたしだよっ!」などと語る漫談で2007年頃に大ブレイクを果たした。

しかし、多忙を極めた彼女は、その後、生放送中にネタがうまくできず泣いてしまったり、空回りしたりもして、傍目から見ても精神的に追い詰められているのが見て取れた。

そうした実体験があるからこその対応だったのではないか。

加納に注意しなかった理由を尋ねられ、にしおかはこう答えている。

にしおか「本当に心が疲れているんだと思って、そこで注意したらパンパンになっちゃうから

(※前編はTVerで、9月21日の1:32まで視聴可能)

インパルス板倉×チャンス大城

続いて検証をしたのがインパルス板倉。ターゲットはチャンス大城。

こちらもちゃんと話したことがないほぼ初対面という間柄だ。関係性が薄いためか、先輩のチャンスは板倉に敬語で接している。

板倉に課せられたミッションは以下の通り。

1 打ち合わせ中、ヘッドホンをしてゲームで遊ぶ

2 ディレクターに輪ゴムを飛ばして遊ぶ

3 魔術でくりぃむしちゅーを呪おうとする

ヘッドホンをしだした板倉を見ると「おぉぅ…」と驚きの声をあげ、「あ、あの…」と注意しようとするがハッキリとは言い出せない。

代わりにスタッフに向かい小声で、「板倉くんはこの番組で結構な位置なんですか?VIP扱い?」などと確認。そうではないとわかると、やはりチャンスも「ちょっと精神的にきてる?」と心配の方にシフトしていく。

その際、「色々ありましたから、相方のこととか」などと仕掛け人の板倉を無意識に刺していくのが可笑しい。

板倉の失礼な言動が度を超えていくと、チャンスの必死さも増していく。

チャンス大城:

「板倉くん、あの……もうあっちに行っちゃった?

ちゃんと社会生活できてるのか? 事件起こすぞ 絶対犯罪してない?

気持ちはわかる、相方がああなったから!

さらに違法な薬物の使用を疑い始めたチャンスはカバンをチェック。

皮肉にも「魔術でくりぃむしちゅーを呪う」というミッションのために入っていた小道具を見つけてしまう。

チャンス「板倉くん、洗脳されてるやろ?

チャンスの制止を振り切って、くりぃむしちゅーの2人に呪いの儀式を始める板倉。

チャンスもまた、長い下積み時代、ネタ探しのために怪しい宗教などに体験入信したりしていた経験があるという。だから「自分に返ってくるって!」と必死に止める。

チャンス大城:

マジでやめろって!帰ってこいって!

今なら間に合う!ちゃんとせい!」

初対面にもかかわらず、親身になって涙ながらに説得する真っ直ぐさが、可笑しくもあり、胸を打つものだった。

どちらもが、怒りよりも心配に向かったというのが、自分や周りを含め精神的に病んでしまう人が多い世界をあらわしているようで、非常に興味深い結果だった。

ちなみに最後の検証は上田晋也×渡辺正行。渡辺の人の良さからコントのような展開になるのが最高に面白かった。

(※後編はTVerで9月21日の1:33まで視聴可能)

「100万円争奪金網デスマッチ」

チャンス大城といえば、その“おかしな方向への真っ直ぐさ”が爆発的な面白さにつながったのが、同じ9月6日に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS)だ。

この回におこなわれたのは、「100万円争奪金網デスマッチ」。

春日俊彰、あかつ、みなみかわ、そしてチャンス大城が参加し、金網で囲まれたリングから、100万円と鈴の入ったボールを持って一番先に脱出できた人が勝ちという企画。

一定時間ごとにアイテムや食事が与えられるというルールで、チャンスは15秒間電気を消すことができる「停電ボタン」を獲得した。暗闇になっている隙に金網を登ることができるというわけだ。

しかし、チャンスはそれを思わぬ目的で使用し、大爆笑を生むのだ。

みなみかわ「ドリフじゃないですか!

直情的でまっすぐな行動が度を超えたら、誰も予想できなかったことが起こる。チャンス大城の存在はそれを証明している。

(※本企画はTVerで視聴可能)

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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