今年3月末から『グッとラック!』に代わって始まった麒麟・川島明による「日本でいちばん明るい朝番組」『ラヴィット!』(ともにTBS)。

開始当初は、視聴率が芳しくないだとか、MCが川島では地味すぎるなどといった批判的な声もあがっていたが、いまやお笑いファンを中心に支持を集めてきている。

『ラヴィット!』は「お気に入り」を意味する英語の"Love it"がタイトルの由来。従って、社会問題やスキャンダルなどを扱うことはまったくなく、コンビニやファミレスなどの商品の中からプロが選んだ一番おいしいものや便利なものをランキング形式で紹介したり、注目のスポットを紹介したりといったVTRが番組の中心。だが、それぞれのVTRの合間には「この商品が人気になった便利な機能とはどういったものか」といったクイズが出題される。すると、ここから盛大な“大喜利大会”が火蓋を切るのだ。出演者の多くがこの番組を「大喜利番組」と呼ぶ所以である。なにしろ川島は大喜利大好き。出演者がボケ始めると「大喜利番組じゃないですよー」などと言いつつ川島は喜々とした表情ですべてを拾い、ツッコんでいく。「情報番組」のフリをした「お笑い番組」なのだ。

果たして『ラヴィット!』はいかにしてお笑い色の強い情報番組となったのか。番組立ち上げプロデューサーのひとりである山家稔貴氏に話を伺った。

出演者の皆さんは、今をときめくお笑いの方々に集まっていただいていますし、スタッフもほとんどバラエティーしかやってこなかったディレクターが多いので、基本的にバラエティーとして面白いものを作ろうという意識で作っています。とはいえ、情報番組なんで、スタッフとしては視聴者のみなさまが興味のある情報を届けられるような内容にしつつ、あとはいかに、芸人さんたちが自由にできる隙間を残して、その面白さを発揮してもらえるかを考えています。

夏休み中は、お笑い好きの人たちが見てくれて、いい意味で朝っぽくないというか、こういう番組もやっているんだと目を向けてくださって、とてもありがたいです。川島さんの面白さが話題になっているということもあって、他の局との目線の違いというのは打ち出せているのではないかと思います。

番組開始直前には『万年2番手だった麒麟川島が転生したら千鳥おぎやはぎ山里を従えるメインMCだった件』(テレビ東京)という番組が放送されるほど「2番手」というポジションが定着していた川島。実力は認められていたとはいえ、そんな彼を「朝の顔」として抜擢したのは制作者側の「見たことのない朝の番組」を作るという強い意思のあらわれだろう。

MCとなった川島は、それまでも得意としていたVTR中のワイプでの一言、VTRから下りた後のコメントなどはさらに冴え渡り、出演者に対して振り方、番組の回し方などバランス感覚も抜群で、朝に笑いを生み出し続けている、

朝のアンチテーゼ

レギュラー陣もビビる大木、ぼる塾、NON STYLE・石田明、アンタッチャブル・柴田英嗣、ニューヨーク、見取り図、果ては野性爆弾・くっきー!に至るまで、朝の番組には似つかわしくないお笑い色の強いメンバーだ。

ニューヨークの嶋佐和也と屋敷裕政 (c)TBS
ニューヨークの嶋佐和也と屋敷裕政 (c)TBS

「日本でいちばん明るい朝番組」を目指していたので、芸人さんを軸にしていきたいと。今までコメンテーターとして安定感がある人とかを呼ぶよりも、情報ものを扱うにしても、やっぱりそれを笑いに受けてくれる芸人さんを第一優先で決めていこうという感じで、この人たちがいたら、何より僕たち自身が見てみたいよね、と。

そんな中でレギュラーに加わった女優の矢田亜希子もロケにスタジオにと芸人顔負けの活躍を見せている。

矢田さんのような女優さんがバラエティでどこまでやってくれるか番組開始前は分からなかったのですが、めちゃくちゃ楽しそうにやってくださっているのでとてもありがたいです。そこはやっぱり、川島さんへの信頼とか、矢田さんで言えば、一緒にロケに行った芸人さんの腕もあるんでしょうけど、とても前向きに参加してくださってます。先日も斉藤由貴さんに出てもらったんですが、そういった女優の方と、実力のある芸人さんが絡むと、こんなにもポップになって、演者さん自身も楽しんでやってくれるんだなというのは、いい意味で予想外で可能性が広がりました。

見取り図の盛山晋太郎とリリー (c)TBS
見取り図の盛山晋太郎とリリー (c)TBS

ゲストの人選も多彩で柔軟だ。たとえばチャンカワイは、ビビる大木が悪ノリで彼の名をプレゼント応募用のキーワードにしたことで番組に出演してもないのにTwitterのトレンド入り。その流れでゲスト出演し、そのロケの上手さからか、頻繁に出演するようになった。

その中でオードリー・春日俊彰は、全曜日にゲスト出演。「グランドスラム」を果たし「2周目」に突入している。

春日さんは何を振ってもいいし、どんな大喜利でもクイズを仕掛けても必ず笑いにしてくれる。それをさらに川島さんが笑いを増幅してくれるんで、この番組において春日さんは無敵。なので、どの曜日も春日さんに来てほしいと思っている状態ですね。

番組内容も朝の番組としては異質だ。

You Tubでの佐久間宣行との対談で、番組開始前にスタッフから「ちょっとぐらいニュース扱うかもしれません」「『ヒルナンデス!』みたいに報道フロアからのニュースについて、一言やりとりはできますか?」などと提案され「できません、申し訳ない。これをやりだすと自分に嘘つくことになります」と断ったと川島が語っているように、オリンピックのときでさえ番組内でそうしたニュースは扱わなかった。

情報を扱うVTRでも、もう中学生やロバート・秋山竜次扮する「天才子役」みちくんらが出演など、お笑い要素が濃くなっていっている。

せっかく情報をお届けするなら、バラエティ班の僕たちらしいやり方で出来ないかと思い、その中で何かしら芸人さんに掛けられないかなというところをすごく考えるようになってきています。それこそ「冷やし中華ランキング」をやった時、AMEMIYAさんに出てもらったら、それ用に歌も作ってくださったりとかして、めちゃくちゃ面白くて。単純に情報性だけを届けるというのもいいとは思うんですが、そこに芸人さんが入ってくださることで、より面白くとっつきやすく見やすくなるのかなと。

ミキの亜生と昴生 (c)TBS
ミキの亜生と昴生 (c)TBS

『あちこちオードリー』(テレビ東京)に川島が出演した際、毎回スタッフとの「反省会」があると明かされた。

例えば「ここはこういうのがスタジオとしても面白かったし、見ている側としても僕たちも面白かった、そういうところを伸ばしていこう」みたいなスタジオの展開であったりとか、VTRの内容に関しても、「こういう振り方だとスタジオだと受けづらいから、こういう振り方のほうがいいんじゃないか」とか、かなり細かく、番組全体の内容を川島さんと意見交換します。川島さんは笑いへのこだわりがすごい強い方なので、どうやったら芸人さんをVTRでうまく使えるか、面白く見せることができるのかみたいなことはすごく話し合います。その話し合いは毎回勉強になります。

そうして番組がブラッシュアップしていく中で“川島色”が強くなっていっているのだ。

「きょうの占い いきなり答え合わせ!」も川島の「“朝のアンチテーゼ”をやりたい」という意向を受けて朝の番組の定番企画を使って「遊ぶ」企画として生まれた。オープニングトークが回を重ねるごとに長くなっているのも特徴的。もはやオープニングトークと言うより「1コーナー」と言っても過言ではない。当初は、VTRから始まったほうがいいのではないかという意見もあったそうだが、川島の回しが「予想以上」で、時間が長くなっていっているそう。大喜利部分もたとえ視聴率が下がったとしても、内容自体が悪いわけではなく、それを「入れるタイミングが悪かった」のではないかと考え、そのタイミングを工夫しているという。こうして川島の“理想”に番組が近づいていっているのだ。

『ラヴィット』の原液

『真夏の夜のラヴィット!』より (c)TBS
『真夏の夜のラヴィット!』より (c)TBS

そうした中で「真夏の夜のParaviスピンオフ」企画の一環として『真夏の夜のラヴィット!』がParaviで配信開始された。

朝の時間はどうしても見ていただけない人も多いし、録画して見るという習慣も基本的にはないと思うんです。なので、何かしらの形で配信はできたらいいなと思っていたところにParaviさんから「スピンオフという形でやりませんか」と声をかけていただいて、こんな絶好の機会はないと思いやらせていただきました。ずっと川島さんもお笑いを思い切りやりたいとおっしゃっていたので、朝の制約を取っ払って、いまバキバキの芸人さんたちと目一杯お笑いをやるという方向で作りました。

川島はそれを「『ラヴィット!』の原液のようなもの」と表現している。

出演は川島の他、パネラーにミキ、見取り図、ニューヨークのレギュラー陣3組だ。

あの世代でいま乗りに乗っている3組。それが『ラヴィット!』がレギュラーとして抑えられていることってなかなかないことですから、彼らの世代と川島さんの対決ができたら最高だなと。そしたらちょうどオリンピックとかで収録が休みになったりして、たまたま3組が空いている日があって、奇跡的に揃えることができたんです。

この3組と川島さんを揃えて、面白いものにできなかったら相当ヤバいなというところもあって、僕たちもかなり緊張感がありました。

『真夏の夜のラヴィット!』より (c)TBS
『真夏の夜のラヴィット!』より (c)TBS

番組の形式はVTRの合間にクイズと称して大喜利が始まる普段の『ラヴィット!』とほぼ同じ構成。だが、そのVTRも朝の時間帯ではありえないシュールでふざけた内容。さらに異質なのは川島の司会っぷりだ。

川島さんのいい意味での意地悪な部分というか、普段の『ラヴィット!』ではあまり出さない、相手を追い込んでいくSっ気の部分がめちゃくちゃ発揮されていて。あんなに実力ある芸人たちがわたわたしていく様子が見られるとは思っていなかったので、予想以上の面白さでした。

さらに普段、VTR中に突如登場し無茶ぶりをする番組マスコットキャラクターの「ラッピー」も登場する。もともといつか登場させるためにきぐるみは作成しており、初出しのタイミングを悩んでいたところ、このスピンオフの話があり、「こんなにいい機会はない」と真っ先に決まったのがこの企画だったという。本編でラッピーに対し「ラッピー、スタジオに来い!」などと対決姿勢を示していた盛山との因縁の大喜利対決が実現した。しかもそのラッピーを“操る”のは川島。

大喜利をするにあたって、ラッピーにどうしても喋って欲しく、ダメ元で相談したところ川島さんは即断で「いいですよ」と。やっぱりそこはさすがだなと思いました。実際、ちゃんと面白く、いろんな角度の答えで圧倒していましたから本当にスゴかったです。

『真夏の夜のラヴィット!』より (c)TBS
『真夏の夜のラヴィット!』より (c)TBS

そんなラッピーが本編に登場する日も近いかもしれない。また普段の『ラヴィット!』では進行に徹しざるを得ない田村真子アナウンサーが新たな引き出しを見せているのも印象的。そうした側面が“逆輸入”されたりもするだろう。本編との相乗効果が期待できる配信だ。

『ラヴィット!』を見ていない人が見たら訳が分からない、『ラヴィット!』ありきの企画になっているんじゃないのかというのが、一番心配していた部分なんですが、逆に配信きっかけで普段の『ラヴィット!』を見てみようみたいな声も多くいただきました。「また半年後に!」というのは、その場ででてきた言葉なんですけど、作った側の僕たち的にも「もうちょっとこういうことをしたい」みたいなところはあったりしたんで、またやっていきたいです。

『ラヴィット!』本編では、「日本でいちばん明るい朝番組」というキャッチフレーズ通り、「ただただ楽しい映像、楽しい情報」を目指しているという。

何となく見るだけでも面白い番組だとは思うので、とにかく一回、気軽に見てほしい。どこのタイミングで見ていただいても笑顔になれる番組を目指し、日々試行錯誤しています。

川島はスタッフとスクラムを組み着々と自らの“理想郷”ともいえるお笑い番組を朝に築き上げようとしている。

『真夏の夜のラヴィット!』 (c)TBS
『真夏の夜のラヴィット!』 (c)TBS

■『真夏の夜のラヴィット!』

出演:川島明、田村真子、見取り図、ニューヨーク、ミキ

Paraviで配信中

https://www.paravi.jp/title/76035

■山家稔貴

1989年生まれ。2012年にTBSに入社。営業を約7年間務めた後、制作局へ。『この差って何ですか?』でディレクターデビュー。『ラヴィット!』で初めてプロデューサーを務める。