『タイムスクープハンター』に異様な臨場感がある秘密

『タイムスクープハンター』劇場版はいよいよ8月31日公開!

矢が怖い!

そんな当たり前のことを実感させてくれたのが『タイムスクープハンター』(NHK総合)だ。

もちろんこれまでも様々な映画やドラマで弓矢が使われた戦闘シーンを見てきたがこれほどまでに矢の怖さを実感することはなかった。

それが体感できたのは『タイムスクープハンター』の異様な臨場感のなせる業だろう。果たして、その臨場感はどこから生まれてくるものなのか。

『タイムスクープハンター』はすべての監督・脚本を務める中尾浩之の「時代劇をドキュメンタリーとして撮ったら面白いんじゃないか?」という学生時代からの発想から生まれた。それがNHKの番組コンペ「番組たまご」に採用され、2008年9月13日に加賀藩の大名飛脚を描いた「お氷様はかくして運ばれた」が放送。好評を得て、2009年6月からシーズン1が開始された。

未来からタイムワープしてきた「時空ジャーナリスト」沢嶋雄一(要潤)が、各時代の、教科書には載らないような名もなき人々に密着取材するという設定のフェイクドキュメンタリーである。

時代劇用のかつらは使わず実際に剃髪する、照明機材やスタジオセットを使わない、台詞は当時の言葉を使い現代語訳したテロップを流す、細かい台本は役者に渡さない、リハーサルはしない……などなど独特な演出方法で唯一無二な映像を作り出した。これが大きな支持を得て、2013年現在シーズン5まで放送。遂に『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の一日』として映画化(2013年8月31日公開)までされるのだ。

監督の中尾は言う。

「ドキュメンタリースタイルで撮っているので割とシナリオ通りっていうよりも現場でのハプニングとか、そこで生まれるアドリブを引き出す撮り方をしている」

出典:『あさイチ』

たとえば天候などもリアリティを重視する。

普通のドラマや映画であればいわゆる「天気待ち」がある。雨が降ってはいけない場面で雨が降っていたら撮影を中止するしかない。しかし『タイムスクープハンター』は違う。雨が降れば、その場で雨が降ったシナリオに書き換えられる。事実、『劇場版 タイムスクープハンター』の撮影中、現場には台風が直撃したという。それでも撮影が中止になることはなかった。

琵琶湖を小舟に乗って安土城に決死の覚悟で乗り込むシーンは台風が迫る中撮影された。その結果、狙ってもなかなか撮ることが出来ない史上稀に見るリアリティの緊迫感溢れるド迫力な映像が収められたのだ。

『タイムスクープハンター』が独特なのはそれだけではない。

主役である沢嶋(要潤)が画面に登場するシーンが極端に少ないのだ。それは、彼がジャーナリストとして取材対象者をカメラで撮っているという設定のためだ。

しかし、印象としてはずっといるかのような錯覚を受ける。

もちろん常に、彼の声が聞こえてくるのもその一因だが、それだけでは説明がつかない存在感がある。

実は彼は実際に、そこにいるのだ。

声の出演だけならば、撮られた映像に後から声を吹き込めばいい。しかし、それでは彼の存在感は生まれない。実際に要は沢嶋としてカメラの脇にピッタリと張り付いて撮影しているのだ。

「要君がいつもカメラサイドにいることにビックリした。映っても映らなくても、常にそこで“自分の目線”を確認している。改めてすごい役者だと思った」

出典:劇場版公式パンフレット

と、劇場版にゲスト出演した時任三郎は語っている。

要は言う。

ハプニングを撮ろうとしているので僕がそこに(常に)いないと成立しない

出典:『あさイチ』

そうしてカメラに映らない時でもカメラとともに走り回っているからこそ、監督から突然「要さん、レポートしてください」と振られても、急にカメラの前に出て今目の前で見たもの、起きたことをそのまま臨場感たっぷりにレポートすることができる。

要潤自身が実際に間近で爆破の爆風や砂埃を受け、弓矢に倒れる名もなき人々の返り血を浴びている。その事実がリアリティ溢れるリアクションを生み、異様な臨場感を作り出したのだ。