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【F1】来季ストーブリーグの重要な鍵に?ヨーロッパ3連戦で気になるボッタスと角田裕毅

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
角田裕毅(写真:ロイター/アフロ)

アゼルバイジャンGPまでで全23戦中6戦を消化した2021年シーズンのF1。6月20日(日)に決勝レースを迎えるフランスGPからは、レッドブルリンク(オーストリア)での2週連続ダブルヘッダー開催を含めて3連戦でレースが行われる。

メルセデスvsレッドブルのチャンピオン争いはもちろん注目だが、もう一つの注目どころはこの3連戦における「ストーブリーグ」の動向だ。ストーブリーグとは来季どのチームにどのドライバーが乗るかというシート争いの戦いだ。

F1モナコGP
F1モナコGP写真:ロイター/アフロ

シート争いが過熱するF1

例年、夏のイギリスGPに向けては翌年以降のドライバー契約に関する動きが活発になってくる。ドライバーとの契約発表の時期は近年、シーズン序盤の早い段階において発表される第一波があるが、ここでは将来有望な若手ドライバーの契約延長が発表されるケースが多い。

今年でいえば、ランド・ノリス(マクラーレン・メルセデス)が5月に複数年、エステバン・オコン(アルピーヌ)が先日3年の契約延長を発表。彼らはチームからすると、ライバルに交渉される前に好条件を提示してでも確保しておきたいドライバーで、いわばエース指名されたようなものだ。

アルピーヌとの3年契約が発表されたエステバン・オコン
アルピーヌとの3年契約が発表されたエステバン・オコン写真:ロイター/アフロ

そして夏以降は契約が今年で満了するドライバー、来季以降の契約がオプション(仮契約状態)になっているドライバーを残留させるか、放出するかを判断する時期となる。当然、空きになるかもしれないシートに向けて複数のドライバーの代理人たちが交渉を始めているので、ここが「ストーブリーグ」のキーポイントになる部分だ。

特に来季2022年からF1は車体レギュレーションが大幅に変更される。ホンダの撤退によりパワーユニットの開発が凍結されることになり、予算制限も効果を発揮し、今後はメーカー系チームとプライベートチームの間にあった大きな差が縮まっていくと考えられている。そのため、ドライバー選定はこれまで以上に成績を左右する重要なファクターになるのだ。成績によってチームの重要な収入となる「分配金」が上下するため、結果が出せないドライバーが乗り続けることは将来の収入面でも損失になってしまう。

アゼルバイジャンまでの6戦で全戦ポイント獲得を達成しているノリス
アゼルバイジャンまでの6戦で全戦ポイント獲得を達成しているノリス写真:ロイター/アフロ

それだけに来季以降はどのチームも将来を見据えて、勢いのあるドライバーを欲しがっている。

ボッタスの残留か、ラッセルの移籍か

来季のシート争いで最も注目を集めているのは王者「メルセデス」のセカンドシートを巡る争い。もちろんエースの座は7度のワールドチャンピオン、ルイス・ハミルトンだが、5シーズンに渡ってその女房役を務めてきたバルテリ・ボッタスが残留か移籍かの瀬戸際にいるのだ。

バルテリ・ボッタス
バルテリ・ボッタス写真:ロイター/アフロ

今季のボッタスはリタイアが2回、第6戦アゼルバイジャンGPでは予選からペース不足に苦しみ決勝12位と、ノーポイントレースがすでに3戦もできてしまい、ランキング6位と低迷している。とはいえ、それ以外のレースでは3位表彰台を3回獲得しているし、ポルトガルGPではポールポジションを獲得。モナコGPではリタイアするまでハミルトンを上回る速さでレースをしていたことを考えても、ボッタスのパフォーマンスが極端に悪くなっているわけではないのだ。

2019年 鈴鹿の日本GPウイナーであるボッタス
2019年 鈴鹿の日本GPウイナーであるボッタス写真:アフロスポーツ

ボッタスが移籍した2017年以来、「メルセデス」は4シーズンに渡ってドライバーズ王者、コンストラクターズ王者をダブルで獲得し続けてきた。絶対的なエース、ルイス・ハミルトンがいながらも優勝9回、ポールポジションは17回獲得してきたボッタスの貢献度はかなり大きい。しかし、チームとしてはベテランドライバー2人を擁する現体制にいつかは終わりが来ることを考えなければならないのも事実だ。

ジョージ・ラッセル
ジョージ・ラッセル写真:代表撮影/ロイター/アフロ

バルテリ・ボッタスの後釜としてシーズン途中の交替も噂されているのがジョージ・ラッセル(ウィリアムズ・メルセデス)。23歳の英国期待のホープは昨年、新型コロナウィルスに感染して欠場となったハミルトンの代役として「メルセデス」からサクヒールGPに参戦。スタートでボッタスを抜き、トップを快走。タイヤ交換の際、間違えてボッタスのタイヤを装着するというチームのヒューマンエラーさえ無ければ、鮮烈な初優勝を飾っていたはずだった。

レースをリードしたラッセル
レースをリードしたラッセル写真:代表撮影/ロイター/アフロ

結果は9位とファステストラップ獲得というものに留まったが、やはり将来への可能性を誰もが感じるレースをしたラッセル。ウィリアムズ・メルセデスの在籍もすでに3シーズン目になっており、いつまでもポイント獲得すら難しいチームで走らせておくのは実に勿体ない。

ボッタスとラッセルがシーズン中にシートをスワップする噂が囁かれてはいるが、ボッタスにとってフランスGPのポール・リカールは2019年に2位表彰台、2連戦のレッドブルリンクでは2014年のウィリアムズ時代に初表彰台、メルセデス移籍後はポールポジション3回、優勝2回。彼にとって相性の良いサーキットが続くことになり、アゼルバイジャンのようなスランプが続くのか、息を吹き返すのか、ボッタスの走りが注目だ。

ガスリー、角田の3連戦にも要注目

来季に関しては「メルセデス」「レッドブル」「アルファタウリ」「アルファロメオ」「ウィリアムズ」と多くのチームがまだ2つのドライバーシートを確定していない状況にある。

セルジオ・ペレス
セルジオ・ペレス写真:ロイター/アフロ

「レッドブル」はマックス・フェルスタッペンのシートは確定しているものの、今季セルジオ・ペレスが乗るセカンドドライバーのシートはまだ未確定。当初ペレスはレッドブルのマシンになかなか順応できなかったものの、アゼルバイジャンGPでは6番グリッドから移籍後初優勝を達成して株を上げた。

しかしながら、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は残留に関しては今後のレースを見守る必要があると慎重。これからの3連戦の成績はレッドブルが誰を来季以降の戦力選びに重要なポイントになる。ちなみにペレスのフランスGPは過去2回ともポイント獲得なし、レッドブルリンクに関してはポイント獲得回数は多いものの表彰台の経験はない。

アゼルバイジャンで3位のガスリー
アゼルバイジャンで3位のガスリー写真:ロイター/アフロ

そんなセルジオ・ペレスと共にアゼルバイジャンで3位表彰台に上がったのがピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)だ。メインチームのレッドブルに復帰する可能性は低いと考えられており、他チームへの移籍も噂されていたが、自身3度目となる表彰台獲得はその流れを変えることになるかもしれない。

ガスリーにとってフランスGPは母国レースであり、その結果に期待が高まるが、2018年のトロロッソ時代は1周目に接触リタイア、2019年はレッドブル移籍後の強烈なプレッシャーの中かろうじて10位でポイント獲得と相性は良くないコースと言える。しかし、バクーで見せた勢いそのままに母国で再び奇跡を起こせるかガスリーのフランスGPには大いに注目したい。

角田裕毅
角田裕毅写真:ロイター/アフロ

さて、ガスリーのチームメイト、角田裕毅は第6戦アゼルバイジャンGPで開幕戦以来となるポイントを獲得した。結果は7位と自己ベストリザルトになったわけだが、同じレースでガスリーがポディウムの一角を占めたことで、ランキング14位に沈んでいる角田にはメディアからも厳しい目が向けられている。

バクーでのポイント獲得で崖っぷちからはギリギリ這い上がった形だが、角田にとって重要なのはこれからの3連戦である。フランスGP(ポールリカール)もレッドブルリンクもF1では初レースになるが、過去に走ったことがあるサーキットだ。ポールリカールはF3時代に、レッドブルリンクは昨年のF2で4レースを経験。レッドブルリンクは正グリッドのフィーチャーレースで2位表彰台を獲得しているので相性は悪くない。

ヨーロッパラウンドに入ったことでよりレースに集中できる中、角田はポイント獲得レースを続けられるだろうか。来季以降の去就、鈴鹿の日本GPに向けた盛り上がりにも大きく影響しそうな重要な1戦に角田は挑む。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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