「ゆるキャン△」ともコラボ決定!富士24時間レースに見るモータースポーツの未来像

ROOKIE Racingが走らせる GRスープラ 【写真:富士スピードウェイ】

日本最長の耐久レース「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間耐久レース」(以下、富士24時間)が今年2021年も5月21日(金)〜23日(日)に静岡県の富士スピードウェイで開催される。

昨年の富士24時間優勝車はメルセデスAMG GT3【写真:DRAFTING】
昨年の富士24時間優勝車はメルセデスAMG GT3【写真:DRAFTING】

1960年代の開催を含めると6回目、現行の「スーパー耐久シリーズ」の1戦になってからは4回目の開催と、歴史や伝統がまだ根付く段階にはないイベントではあるものの、実はこのレースでは毎年、モータースポーツの未来像に向けた様々な施策がトライされている。

今年のイベントテーマは「FUTURE on Track」。未来がトラック(=コース上)を走る、とも訳せるし、未来に向けて進んでいるとも解釈できる。いったいどんな未来像が富士24時間レースに詰まっているのか、今年も大会実況アナウンサーを務める筆者がご紹介しよう。

なぜ漫画「ゆるキャン△」とコラボ?

富士スピードウェイは先日、キャンプなどのアウトドアをテーマにした人気漫画「ゆるキャン△」とのコラボレーションを発表。『ゆるキャン△』×GR Supra オリジナルラッピングカーが展示されるほか、会場限定グッズの販売も行われる。

ゆるキャン△と富士24時間レースのコラボレーション【写真:富士スピードウェイ】
ゆるキャン△と富士24時間レースのコラボレーション【写真:富士スピードウェイ】

人気漫画アニメとモータースポーツのコラボレーションは「新世紀エヴァンゲリオン」を筆頭に多数実施されており、サーキットに新たな層のファンを生み出してきた経緯がある。

今回コラボする「ゆるキャン△」は富士山周辺の山梨県・静岡県を舞台に女子高生たちがキャンプなどアウトドアを楽しむ姿を描いた作品であり、ロケーションもアウトドアというテーマが富士24時間レースとピッタリなのだ。

2019年の富士24時間レースで行われたテントの貸し出し。富士24時間はアウトドア観戦推しだ。【写真:DRAFTING】
2019年の富士24時間レースで行われたテントの貸し出し。富士24時間はアウトドア観戦推しだ。【写真:DRAFTING】

都市型のサーキットと違い、自家用車でそのまま入場する観客が多い富士スピードウェイは場内での宿泊が可能なレースもあり、車中泊をしたり、テントを張ってキャンプを楽しんだりする人が多く、アウトドア文化が根付いている。

24 時間ずっとレースを見続ける人は少なく、BBQをしたり、友人や家族と語り合ったり、好きな時間に寝たりできる「キャンプ」という楽しみ方はまさに富士24時間レースに適した観戦方法。実際にレース中に観客席に行ってみると、いかにもレースファンらしいレプリカユニフォームを着た人が少なく、普段着の人が目立つ。実はレースの応援よりも「キャンプ」を主目的として来場する観客も多いという。

2019年の富士24時間。朝のADVANコーナー。エキゾーストノートを聞きながらテントで休む人が多い。【写真:DRAFTING】
2019年の富士24時間。朝のADVANコーナー。エキゾーストノートを聞きながらテントで休む人が多い。【写真:DRAFTING】

アウトドアを楽しむ層の人たちにとって富士24 時間レースは、自然音とはまた違うシチュエーションで楽しめるキャンプサイトであり、新たな層の観客の取り込みに成功していると言える。フランスのル・マン24時間レースやドイツのニュルブルクリンク24時間レースも、レースをアウトドアレジャーとして楽しむ人たちによって長年支えられてきた側面があるので、アフターコロナの時代はそういった楽しみ方が主流になるかもしれない。

トヨタが水素エンジンで24時間参戦!

2021年の富士24時間レースには世界初となる「水素エンジン」を搭載したレースカーが出場する。

水素エンジンを搭載するカローラ・スポーツ【写真:トヨタ自動車】
水素エンジンを搭載するカローラ・スポーツ【写真:トヨタ自動車】

この新たな挑戦を行うのはトヨタ自動車で、豊田章男社長が自らプライベート所有するチーム「ORC ROOKIE Racing」が水素エンジンを搭載したカローラ・スポーツを参戦させるのだ。この水素エンジンは従来のガソリンエンジンから燃料供給系、噴射系を変更し、圧縮気体水素を燃料にして動力を発生させる構造になっており、これまで培ってきた技術を活かしながらカーボンニュートラルの実現を目指すものだ。

水素エンジンのイメージ【写真:トヨタ自動車】
水素エンジンのイメージ【写真:トヨタ自動車】

この発表は新聞、テレビなど国内メディアが即座に報道。その凄さがどこまで一般レベルに伝わったかは微妙だが、こういう新たな挑戦が始まることは国内の自動車関連部品メーカーにとっても朗報。今の時点では実用化を前提にしているわけではないとはいえ、日本の自動車産業の強みでもあったエンジンの技術を活かしながら、電気自動車や燃料電池車と同様にカーボンニュートラルを実現できるのであれば、これは未来に向けた道筋の第一歩になるだろう。それはエンジンのパワーと音の迫力で魅力を作ってきたモータースポーツ業界にとっても大きな一歩だ。

トヨタは過去にも2006年の十勝24時間レースにレーシングハイブリッドシステムを搭載したレクサスGSを参戦させ、翌2007年にはGT500のスープラに同システムを搭載して総合優勝を達成。そこで培われた技術がのちにFIA WEC、ル・マン24時間レースを走るプロトタイプカーに応用されていったのだ。

自らMORIZOとしてドライバー参戦し、昨年はクラス優勝を達成した豊田章男社長【写真:DRAFTING】
自らMORIZOとしてドライバー参戦し、昨年はクラス優勝を達成した豊田章男社長【写真:DRAFTING】

日本で唯一の24時間レース、富士24時間を「走る実験室」と捉えて新技術に挑戦するトヨタ。自身のプライベート所有のチーム「ROOKIE Racing」を立ち上げ、MORIZOのドライバーネームで自らステアリングを握って出場する豊田章男社長がこんな事を考えていたとは、誰も予想できなかった。

このカローラスポーツは新設されたST-Qクラスに参戦し、MORIZOこと豊田章男の他に小林可夢偉らがステアリングを握り、24時間後のゴールを目指していく。

今まで以上に豪華な布陣!総合優勝を争うのは 7台

2021年の富士24時間レースには注目の水素エンジン車をはじめ、全51台のマシンが参戦する。シリーズ戦のスーパー耐久シリーズではクルマのジャンル別、排気量別に9つのクラスに別れて順位を争っているが、スープラはタイプの異なるモデルが3つのクラスに参戦していたりと、レースの全貌を把握するのはちょっとマニアックな知識が必要だ。

2018年、19年と総合連覇したニッサンGT-R ニスモGT3 (写真は2020年)【写真:DRAFTING】
2018年、19年と総合連覇したニッサンGT-R ニスモGT3 (写真は2020年)【写真:DRAFTING】

スーパー耐久に詳しくない人は最高峰のST-Xクラス(FIA GT3車両)に注目して観戦するとレースの流れを把握しやすいだろう。今年のST-Xクラス(FIA GT3車両)はエントリーが昨年の5台から7台に増加しているので、総合優勝をかけた争いが例年以上に白熱しそう。昨年優勝のメルセデスAMG GT3は出場しないものの、アストンマーティン・ヴァンテージGT3マクラーレン720S GT3アウディR8 LMSレクサスRC F GT3ニッサンGT-R ニスモGT3ホンダNSX GT3と人気の車種が揃っている。

また、FIA GT4車両を使うST-Zクラスも昨年の7台から9台に増加。トヨタ・スープラGT4が台数増加に貢献しており、メルセデスAMG、アウディ、ポルシェ、BMW、アストンマーティンなどこちらも注目車が満載だ。

富士24時間レースのスターティンググリッド【写真:DRAFTING】
富士24時間レースのスターティンググリッド【写真:DRAFTING】

そして、参戦ドライバーも豪華。富士24時間には毎年SUPER GTの人気ドライバーが多数参戦するが、宮田莉朋がアウディR8、千代勝正がポルシェ・ケイマン、関口雄飛がメルセデスAMG GT4をそれぞれドライブするなど契約メーカーを超え外国車のドライバーになることも興味深い点だ。

とにかく長い24時間レースなので、レースの見どころはレース中に見つけ出すのもOK。自宅でテレビ観戦する人も現地観戦する人も、肩肘張らずにそれぞれのペースで日本で唯一の24時間耐久レースをゆったり楽しんで頂きたい。