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F1初開催コース、アルガルヴェでのポルトガルGP。レッドブル・ホンダにチャンスあり?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
アイフェルGPで2位表彰台を獲得したレッドブルのフェルスタッペン(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

コロナ禍の「F1世界選手権」2020年シーズンも残り6戦となった。今年はトスカーナGPとして開催されたムジェロサーキットでのレースや復活開催となるニュルブルクリンク、イモラ、イスタンブールなど、当初予定していたサーキットとは違うコースでのレースがあるのが特徴的だ。

第12戦・ポルトガルGPはポルトガル南部のリゾート地、ポルティマオの山手に作られた「アルガルヴェ・サーキット」で開催される。

ポルトガルGPは24年ぶり

ヨーロッパ北部はすっかり冬の気候になっているため、ここからはF1サーカスはヨーロッパ南部あるいは中東を転戦していく。

アルガルヴェで開催されることになったポルトガルGPは1996年以来24年ぶりの開催。当時のサーキットは首都リスボンから近いエストリルサーキットだったので、2008年に完成したアルガルヴェでポルトガルGPが開催されるのは初である。

アルガルヴェ・サーキット【資料:PIRELLI】
アルガルヴェ・サーキット【資料:PIRELLI】

ただ、完成当初はF1誘致を狙って積極的にアプローチしており、2009年にはF1のウインターテストの舞台となった。当時すでにF1ドライバーだったルイス・ハミルトンは当時所属したマクラーレン・メルセデスのマシンでこのサーキットを走行した経験を持つ。

また、2009年にはGP2(現在のF2)のレースが開催されたり、最近では2015年にF3のレースが開催されたりと、意外と走行経験者が多いのも特徴だ。

初開催のムジェロで初となる3位表彰台を獲得したレッドブルのアレクサンダー・アルボン【写真:Red Bull】
初開催のムジェロで初となる3位表彰台を獲得したレッドブルのアレクサンダー・アルボン【写真:Red Bull】

レッドブルのアレクサンダー・アルボンは2015年にヨーロッパF3でアルガルヴェを走っており、「最大の特徴はその高低差。強烈に大きくて、印象的なんだ」と起伏に富んだサーキットであることを特徴にあげる。

「たしかターン7だったか、8か9あたりは丘を登って、その先がブラインドコーナーで、クルマがまるで離陸しちゃうんじゃないかっていう気分になるよ」とアルボン。

このコースは高速コーナーも多く、トスカーナGPで使用したムジェロサーキットと似た雰囲気があるが、ムジェロと違いコース幅は少し広めだ。アルボンが言うようにコース全体のアンジュレーションが大きく、特に最終コーナーから約1kmのホームストレートに戻ってくるあたりはまるでジェットコースターのようだ。

ただ、コース上でのオーバーテイクポイントはムジェロ同様にフルブレーキングポイントが少なく、DRSゾーンとなるホームストレートから第1コーナーが最大のオーバーテイクポイントになるだろう。

(YouTube : アルガルヴェ・サーキットの空撮映像)

フェルスタッペンは未経験のコース

今回のポルトガルGP は事前テストも行なっていない新コースであるだけに、メルセデスを追うレッドブル・ホンダにとっては勝利する最大のチャンスと言えるだろう。

今季は17戦中3戦が初開催のコースレイアウトで、3戦が復活開催のコースになっている。通常であれば、1年のうちの新しいサーキットといえば、1つあるかないかだった(今年でいえばベトナムGP=中止)ところに、今年は6つもイレギュラーなコースがあるため、各チームのコンピューター上でのシミュレーションは例年以上に各チームの労力が必要となっている。

先日、メルセデスの代表のトト・ウォルフは今季型マシン、メルセデス・W11の開発は終わっており、来季に向けた開発に集中していることを明らかにした。ここからの残り6戦はレッドブル・ホンダの躍進が期待したいところだが、メルセデスもサーキット入りする前のシミュレーションは念入りに進めているだけに、新サーキットといえども、そう簡単に番狂わせは起こらないかもしれない。

アイフェルGPで2位に入り喜ぶフェルスタッペン【写真:Red Bull】
アイフェルGPで2位に入り喜ぶフェルスタッペン【写真:Red Bull】

前戦・アイフェルGPを「ポジティブな結果だった」と振り返ったフェルスタッペンが未知数のコースでマシンのポテンシャルをどこまで引き出せるかがシーズン終盤戦を占う上で重要な指標になってくるだろう。最近はフェルスタッペンの才能が際立ちすぎている部分が強く、彼だけでなくアルボンも浮上できるなら良いのだが。

24年ぶりとなるポルトガルGPは新型コロナウィルスの感染拡大が続く中で、有観客での開催。しかし、急遽、入場できる人数が1日2万7500人に削減された。

アイフェルGPを欠場したランス・ストロール(レーシングポイント)が新型コロナに感染したことが明らかになるなど、コロナの状況が血ちょっと心配な中、第12戦・ポルトガルGPは10月25日(日)に決勝レースが開催される。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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