開通前の高速道路でF1マシンが初走行。フェラーリF187で地元出身の松田次生が駆け抜けた!

開通前の新名神高速を駆け抜けるF1マシン(鈴鹿市山本町)

F1マシンが高速道路を疾走!こんなシーンが三重県鈴鹿市で実現した。これは2019年3月17日(日)16時に開通予定の「新名神高速道路」の開通記念イベントで行われたもの。過去に国内レースのレーシングカーが開通イベントでデモ走行した実績はあるが、本物のF1マシンが開通前とは言え、高速道路を走るというのは前代未聞だ。

F1の走行に来場者は興奮気味

今回のイベントに用意されたマシンは、1987年に鈴鹿サーキット(三重県)で開催された初めての「F1日本グランプリ」で優勝したフェラーリF187。今から32年も前のマシンだが、情熱あるオーナーによって動態保存され、鈴鹿サーキットのイベントにも度々登場しているマシン。ただ、サーキットを飛び出して高速道路を走行するというのは初めてのことである。

フェラーリF187
フェラーリF187

そのステアリングを握り、フェラーリF187を走らせたのは地元、三重県出身のレーシングドライバーである松田次生(まつだ・つぎお)。フォーミュラニッポン、SUPER GT(GT500)でチャンピオン経験を持つ、まさに三重県を代表する選手がこの画期的な特別走行のドライバーを担当。松田は以前にもフェラーリF187で鈴鹿サーキットをデモ走行した経験がある。

F187をドライブした松田次生 【写真:鈴鹿市】
F187をドライブした松田次生 【写真:鈴鹿市】

「(フェラーリF187の)オーナーさんとは以前から知り合いで、三重県のイベントだからとドライバーのオファーが来ました。実は他に予定が入っていたんですが、調整してこの話を受けることができました。地元ゆかりのプロドライバーとして盛り上げたいという気持ちがありましたね」と松田は嬉しそうに語る。やはり高速道路をF1マシンで走るという特別な経験はレーシングドライバーなら誰でもやってみたい夢のようなチャンスなのだ。

2月23日(土)、快晴に恵まれた建設準備中の「鈴鹿パーキングエリア」(鈴鹿市山本町)には事前参加申し込みを行ったF1ファンや沿線地域の関係者など約5000人が来場。高速道路をF1が走るというのは日本で初めての試みであり、めったに見れないF1マシンのエキゾーストノートを堪能できるとあって、参加申し込み開始後の僅か5分で定員に到達。抽選による追加申し込みを実施するも応募者が多く、イベント参加権を得た人たちは幸運な人達。参加者はワクワクしながら、その時を待っていた。

フェラーリF187が高速道路を疾走!

新名神を走るF1マシン【写真:鈴鹿市】
新名神を走るF1マシン【写真:鈴鹿市】

松田次生のドライブで走り始めたフェラーリF187はまず鈴鹿パーキングエリア付近の下り車線を逆走する形で走行。上り車線で参加者たちがカメラを構える中、松田のドライブするフェラーリF187が高速道路の本線上をアクセル全開で駆け抜ける。来場者からは感嘆の声と共に「速すぎて、写真が撮れない」との声が上がったほどの速さ。32年前のF1とはいえ、やはりF1はF1だった。

アクセル全開のF1マシンを前にカメラを構える参加者たち【写真:鈴鹿市】
アクセル全開のF1マシンを前にカメラを構える参加者たち【写真:鈴鹿市】

片道約2kmの高速道路本線を2往復してマシンを降りた松田は「改めてF1はすごいパワーだと思いました。車重も軽い(540kg)ので2速、3速とつなぐ時にホイールスピンするくらい。SUPER GTのGT500よりも強いパワーを感じましたね」と興奮気味。集まった来場者のためにさらに1往復のサービス走行も披露した。

モータースポーツの街、鈴鹿ならでは

松田は20年近く前にもフォーミュラニッポンのレーシングカーを山口県の高速道路イベントで走らせた経験があるというが、「あの時は走行に制約が色々あって抑え気味の走行だったんですけど、鈴鹿市は僕らプロドライバーを信用して頂いているので、好きなように走ってくださいと言ってくれました」と松田は鈴鹿市のモータースポーツに対する理解度を賞賛。

「でも、(F1マシンが持っている速さの)6割、7割くらいの力で走らせましたよ。新しい高速道路は路面がフラットで、マシンが底を打つこともなく快適に走れました」と路面の完成度の高さを語っていた。

フェラーリF187に乗り込む松田次生【写真:鈴鹿市】
フェラーリF187に乗り込む松田次生【写真:鈴鹿市】

鈴鹿市は平成16年(2004年)12月24日に「モータースポーツ都市宣言」を行って以来、地域資源としてモータースポーツを積極的に活用している。行政主導のモータースポーツイベントを定期的に実施する自治体は全国的にも珍しく、過去には中勢バイパス(国道23号線)の開通前に地元チームのスーパーフォーミュラやレーシングバイクを走らせたこともある。

今回の記念イベントは中日本高速道路、国土交通省北勢国道事務所と沿線自治体の鈴鹿市、四日市市、亀山市、菰野町による実行委員会による主催だが、F1マシン走行の提案が行われた背景には鈴鹿市の取り組みがあった。モータースポーツ都市宣言以来15年近くになっている行政とモータースポーツ関係者との信頼関係がこういう夢のような企画を実現に導いていると言える。

2014年に中勢バイパス開通イベントで走行した鈴鹿8耐のホンダCBR1000RR
2014年に中勢バイパス開通イベントで走行した鈴鹿8耐のホンダCBR1000RR

参考記事:開通前の国道をレーシングカーが走った! 三重県・鈴鹿市/中勢バイパス

開通したら安全運転でと呼びかけ

F1マシンを開通前の高速道路で走らせた松田次生は自身も日産GT-R NISMOを所有するクルマ好きとして知られるが、「僕らもレースはルールに基づいてやっています。そして愛車で走る時は制限速度や交通ルールを守って運転しています。だから皆さんも開通したら安全運転でお願いします」と来場者に呼びかけていた。

それこそ10年ほど前まではモータースポーツは暴走行為を助長すると見なされ、このような開通イベントにモータースポーツは無縁というか御法度なコンテンツだったと言える。しかし、実際にはモータースポーツでドライバーたちは無謀な運転を行っているわけではなく、松田が述べた通り、厳格なルールに基づいて競技が行われている。選手同士の技術力、信頼関係があるからこそ成り立つスポーツなのだ。

選手やモータースポーツ関係者が行政や警察、様々な団体と協力し合う努力を続けてきたことが、F1マシンの高速道路走行という夢の企画に結びついた。

末松則子・鈴鹿市長(右)と松田次生(左)【写真:鈴鹿市】
末松則子・鈴鹿市長(右)と松田次生(左)【写真:鈴鹿市】

「(電気自動車の)フォーミュラEは公道で開催されていますし、モータースポーツの発展という意味では、いつか日本でも公道レースをという思いがあります」と松田次生は一人のモータースポーツ人として夢を語る。「今回はF1で走行しましたが、そういうキッカケになって欲しいし、垣根を一つ一つ越えていると思うんです。鈴鹿市は末松則子・市長がモータースポーツを盛り上げてくれていますし、モータースポーツに熱い人が多くて嬉しいです」

静かな山里に木霊したフェラーリF187のV6ターボサウンド。その迫力と鈴鹿ならではの特別なアトラクションに参加者は興奮気味に拍手を送っていた。

パワーの大きさを感じる野太いターボサウンドが響き渡った【写真:鈴鹿市】
パワーの大きさを感じる野太いターボサウンドが響き渡った【写真:鈴鹿市】

新名神高速道路(新四日市ジャンクション~新亀山ジャンクション/約23km)は春休みを前にした2019年3月17日(日)16時に開通予定。慢性的な渋滞が発生している東名阪高速道路上り区間(亀山~四日市)の渋滞緩和が期待されている。開通後、ハンドルを握るドライバーたち一人一人が無事故・無違反の安全運転を意識して走れば、今後もこういったイベントが実施されていくことになるのだろう。

【関連リンク】

新名神開通イベント ホームページ

新名神高速道路プレスリリース(NEXCO中日本)

鈴鹿市 ホームページ