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ホンダはF1日本グランプリに向け、ロシアGPで新型パワーユニット投入!来季に繋がるホームレースに。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
ブレンド ン・ハートレーが駆るトロロッソ・ホンダ(写真:ロイター/アフロ)

今年で30回目の記念大会となる鈴鹿サーキット(三重県)の「F1日本グランプリ」。一時は2019年以降の開催継続も危機的状況と伝えられたが、8月31日に鈴鹿サーキットは2021年までの3年開催に合意したことを発表。合わせて、今年の日本グランプリでホンダがタイトルスポンサーを務めることが発表された。ホンダが冠スポンサーを務めるのは今年の大会だけということだが、いよいよ「レッドブル」にパワーユニットを供給することになる来季以降、日本で恒久的にF1が人気を集めるためには、ホンダが優勝争いをすることが重要なファクターとなる。

新PU投入のトロロッソ・ホンダ

今季、ホンダがパワーユニット(PU)を供給する「トロロッソ」は「レッドブル」のジュニアチーム。今季は昨年スーパーフォーミュラで活躍したピエール・ガスリーとル・マン24時間ウイナーのブレンドン・ハートレーというルーキーコンビ。その開発能力が心配されたが、ガスリーが序盤の第2戦・バーレーンGPで4位フィニッシュを飾るなど活躍。サーキットによっては苦しい展開のレースもあるが、ガスリーはその実力が高く評価され、来季「レッドブル」への昇格が決定。スーパーフォーミュラを通じてホンダと共に仕事をし、結果につなげてきたガスリーがいよいよ「レッドブル・ホンダ」で戦うことになる。

「レッドブル・ホンダ」への準備として位置付けられた形で始まった「トロロッソ・ホンダ」。シーズン後半戦は来季、「レッドブル」と「ホンダ」の両者が上位争いをするために非常に重要だ。

イタリアGPを走るトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリー【写真:PIRELLI】
イタリアGPを走るトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリー【写真:PIRELLI】

そのホンダが現在開催中のロシアGPで新型パワーユニットを投入してきた。「スペック3」と位置付けられる新型PUは当然、来季に向けた開発としてのアップデートという意味もあるが、やはり次の「ホンダ・F1日本グランプリ」で入賞するために投入された「鈴鹿スペシャル」的な意味合いを持つ。

今季のF1で使用できるパワーユニットは3基まで。それを超える場合はグリッド降格のペナルティが課され、後方からのレースを強いられることになる。そこで日本GPを前にロシアGPで新しいパワーユニットの投入して、ロシアGPでペナルティをもらい、日本GPでは新型の持つポテンシャルを存分に発揮できる環境を整えようというものだ。

ホンダは2015年の復帰以来、鈴鹿のF1日本グランプリで1度もポイント獲得(10位以内の完走)を果たせていない。今年はタイトルスポンサーを務めるグランプリになるわけだから、観客の前で淡々と走るだけのレースは何としても避けたいところである。

日本のファンも注目のガスリー

今季、ガスリーがシンガポールGPまでに4度の入賞を果たしている一方で、ハートレイは入賞が2回だけ(最高位10位)と苦戦している。

今季の「トロロッソ・ホンダ」はシャシー(車体)がうまく決まったコースではガスリーが期待値以上の走りを展開しているが、以前は好成績を残していたシンガポール市街地コースで入賞できずとコースによって得意不得意にバラツキがある。そして、この夏にはテクニカルディレクターのジェームス・キーがチームを離脱し、マクラーレンへと移籍してしまった。ジュニアチーム以上のポテンシャル発揮に貢献してきたキーの離脱はチームにとって大きな痛手になっていると考えられる。ただ、今後はアップデートされたエアロパーツの投入がある予定で、ポテンシャルアップに期待したい。

バーレーンGPで4位入賞したピエール・ガスリーと田辺豊治テクニカルディレクター【写真:本田技研工業】
バーレーンGPで4位入賞したピエール・ガスリーと田辺豊治テクニカルディレクター【写真:本田技研工業】

そんな中、鈴鹿ではやはり昨年、スーパーフォーミュラでルーキーながらチャンピオン争いを展開したピエール・ガスリーのパフォーマンスに期待だ。ガスリーは過去に走行経験がないツインリンクもてぎとオートポリスで優勝。日本のレースに慣れたドライバーたちを速さで翻弄した。決勝レースのレース運びの巧さはスーパーフォーミュラでも証明済みであるし、パワーアップした新PUがうまく当たれば、ガスリーは決勝でオーバーテイクショーを見せてくれるだろう。

トロロッソのレギュラードライバーになってからは少しワイルドな雰囲気になってきたが、柔らかい口調で話す姿に日本のファンが多いガスリー。日本人ドライバー不在の中、ホンダのパワーユニットを託されたガスリーに感情移入して観戦するファンは多いのではないだろうか。パワードバイホンダの本当の実力を結果で証明してくれるのはガスリーかもしれない。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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