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愛子さま人気をめぐる葛藤 伊勢神宮ご参拝はいつになる?

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(写真:毎日新聞社/アフロ)

新型コロナの流行も収束に向かいつつある中、今年5月には5年ぶりに皇室の恒例行事である園遊会が開催されることになった。だんだんと皇室行事も元通りに行われるようになって、以前のように天皇皇后両陛下はじめ皇室の方々を目にする機会が、格段に増えていくことだろう。

両陛下の長女・愛子さまもまた、大学生になってからずっとオンライン授業を続けてきたが、4月の新学期からは学習院大学のキャンパスに通われ、対面授業を受けられるという。

思えば、愛子さまが成年になられた時は、コロナ禍の渦中であった。感染防止のために成年をお祝いする茶会や祝宴は行わず、儀式に着用するティアラも、苦境に直面している国民生活に配慮して新調せず、叔母の黒田清子さんが使っていたものをお借りになった。

そして、結婚や成年など人生の節目には、皇室の祖先とされる天照大神がまつられた伊勢神宮へ参拝するのが皇室の慣習となっているが、愛子さまは成年になられてから1年以上が経過した今も実現していない。それは、なぜなのだろうか?

◆いまだ実現しない伊勢神宮ご参拝

秋篠宮ご夫妻の長女・小室眞子さんは、平成23年10月に20歳を迎え、翌月に成年のご報告のため伊勢神宮を参拝した。

次女の佳子さまの時は、平成26年12月29日に20歳を迎えられたものの、お忙しい年末年始は控え、翌年の3月に伊勢神宮を詣でられた。

しかし、愛子さまの場合は、コロナ禍であったことから、愛子さまのお姿を一目見ようと多くの人が集まって密になることが懸念され、時期未定のまま伸び伸びとなった。

去年秋頃からはコロナの流行も次第に落ち着き、両陛下の地方ご訪問も行われるようになって、10月には、秋篠宮ご夫妻の長男・悠仁さまが初めてお一人で伊勢神宮を参拝されている。

いわば愛子さまの伊勢神宮ご参拝は、悠仁さまに先を越されたような形になってしまったのだ。

◆愛子さま人気をめぐる葛藤

愛子さまが成年になられてから、立派な記者会見や立ち居振る舞いによって、俄然、注目度が上昇した。そして、“愛子さまを将来の天皇に”と言う世論が、多数派を占めるようになった。

しかし、現在の皇室典範では、皇位の継承は男系男子に限られ、天皇陛下の次は秋篠宮さま、その次は悠仁さまとなる。

愛子さまを念頭に置いた「女性天皇容認論」は、皇室典範を変える必要があり、逆に愛子さまの人気が突出することで、皇位継承の秩序と世論の間に混乱をきたす可能性を秘めている。

それを考えると、いささか深読みしすぎかもしれないが、両陛下と愛子さまのお考えとしては、悠仁さまの伊勢神宮ご参拝を待って、その後に詣でようとされているのではないだろうか。

宮内庁関係者は「天皇家の女性は必ずしも成年を機に参拝していない」と語っているということだが、近年では成年した皇室の方は、おしなべて間を空けずに参拝されている。

必ずしも参拝することが義務化されているわけではないものの、伝統的な祭祀を尊ぶ皇室において、成年の報告を行わないというのは考えにくい。

とすれば、伊勢神宮ご参拝が実現しないのには、「愛子さま人気」の鎮静化をはかり、静かにご公務にいそしめる環境を求めていらっしゃるのではないだろうか。

◆憂い無き愛子さまのこれから

愛子さまの謙虚なお人柄や聡明さに、誰もが魅力を感じるところではあるが、世論と現実の板挟みに遭われれば、もっとも心を痛められるのは愛子さまである。

今のところ、国会の場で皇室典範改正はもとより、懸案となっていた旧宮家の養子問題や女性宮家の創設などは棚上げとなって、議論は進んでいない状態だ。

愛子さまをめぐる「女性天皇容認」か、「現状維持」かで国民世論を二分させることは、決して良いことではない。

愛子さまがお立場に気を使うことなく、伊勢神宮に参拝され、にこやかな笑顔でお出ましになられる日を心待ちにしているのは、筆者ばかりではないはずだ。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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