雅楽の演奏会を鑑賞された愛子さまと佳子さま お二人が交わされた笑顔のわけ
◆宮内庁楽部による秋の定期演奏会
神社に参拝した折や神前結婚式で流れる、あの厳かなゆったりとした和の旋律を、誰もが聞いたことがあるだろう。それが雅楽の調べである。
17本の細い竹管から成る笙(しょう)や、縦笛の一種である篳篥(ひちりき)をはじめ、独特のリズムを刻む打楽器、そして日本古来の神楽笛・和琴などによって奏でられる雅楽は、5世紀頃にアジア各国から伝来した音楽が、日本古来の神楽歌などと融合。平安時代に完成したと言われ、宮内庁楽部によって継承されてきた。
ちなみに、宮内庁楽部が演奏する雅楽は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている。
春と秋の年2回、宮内庁楽部の定期演奏会が催され、今年11月5日の秋の演奏会には、天皇皇后両陛下の長女・愛子さまと、秋篠宮家の次女・佳子さまが出席された。
久し振りに公の場にお出ましとなった愛子さまは、淡くピンク色がさすホワイト系のお召し物、佳子さまは鮮やかなワインレッドのお召し物であった。お二人で相談されたのだろうか、まるで日の丸を意識されたような登場であった。
爽やかで初々しい若き女性皇族方のお出ましは、皇室に新たな風が吹きつつあるように感じられた。演奏の前にお二人が何か話され、頷き合い、にこやかな笑顔を交わす微笑ましい姿から、信頼し合う仲の良さが伝わって来た。
◆愛子さま誕生から育まれた佳子さまの愛情
それもそのはずで、実は愛子さまと佳子さまは従姉妹同士というより、姉妹と言っても過言ではないほどの間柄なのだ。
愛子さまがお生まれになった翌年、美智子さまはこのように綴られていた。
「数年前から、時々『妹が欲しい』といっていた秋篠宮家の次女の佳子が、敬宮と一緒になりますと、今まで姉の眞子が自分にしてくれていたのと同じように、優しく敬宮の相手をしている様子も可愛く思います。」
愛子さまが、まだ言葉を発せない頃から、すでに佳子さまは、妹のように愛情を注がれていたのである。
同じ年、上皇ご夫妻と天皇ご一家、秋篠宮ご一家が勢揃いされ、須崎御用邸の浜辺を散策した時のことを、紀子さまは以下のように話された。
「今年の夏も両陛下のお優しいお心遣いにより、須崎御用邸で皆さまと大変和やかな時を過ごさせていただきました。その折には、眞子と佳子が自分たちは小さい時どのようなことで喜んだのかと私に尋ねながら、御用邸でどのようにすれば敬宮さまがお喜びになるかを相談しながら旅の支度をしておりました。御用邸ではしっかりと座られるようになりました敬宮さまと娘たちがととのえたおもちゃで遊びましたり、初めて浮き輪をおつけになって海で泳ぎになりました敬宮さまのそばで娘たちも泳ぎましたり、おかわいらしい表情豊かな敬宮さまと娘たちは夏の時を大変楽しく過ごさせていただきました。」
◆佳子さまは愛子さまのお手本
愛子さまは、秋篠宮家の佳子さま、そして嫁がれた眞子さんと、三姉妹のように親しく交流をされてきたのだろう。
そんな親しさも加わり、愛子さまにとっての佳子さまは、憧れの女性皇族であるようだと、度々、漏れ伝わっていた。おそらく実際のところ、その通りなのかもしれない。
最近、公務に積極的に取り組まれ、お出ましになる機会も増えた佳子さまは、常に凛とした気品にあふれ、現れると一瞬にして周囲を華やかな雰囲気に包む。
学習院大学の学生である愛子さまは、今はまだ時間的な制約がある上に、沈静化したとは言え新型コロナの影響を考慮せざるを得ない状況では、公務を進んで担う機会はまだ少ない。
ただいずれ、両陛下の長女として、公務に携わる多忙な日々が訪れるのはそれほど遠くなく、その日のために愛子さまは、佳子さまのなさりようを吸収しようと考えていらっしゃるのではないだろうか。
今回の愛子さまと佳子さま、お二人での雅楽の鑑賞は、公の場へのご出席というだけではなく、愛子さまにとって得難い学びの時間だったように筆者には感じられた。
ひょっとしたら愛子さまが、佳子さまをお誘いされた可能性もあると推察される。
現在、学習院大学文学部日本語日本文学科に在籍されている愛子さまは、成年を迎えた記者会見で、このように述べている。
「関心のある分野は、いまだ模索中といったところではございますが、以前から興味を持っておりました、『源氏物語』などの平安時代の文学作品、物語作品を始め、古典文学には、引き続き関心を持っております。」
宮内庁楽部による定期演奏会へのご出席は、愛子さまが自ら希望されたと報じられているが、平安時代の文学と雅楽は相通じるところがあるのだろう。
そうした愛子さまの興味や関心事を、姉のように慕う佳子さまにもお伝えになりたかったのかもしれない。