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愛子さまと悠仁さまの映像から発見 カメラに正対する立ち位置の意外な真実

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
成年行事に臨まれた愛子さま(アフロ)

 今年のゴールデンウイークは、3年ぶりにコロナ禍による行動制限がかからず、行楽地は大勢の人びとで賑わった。確かに新型コロナは沈静化の兆しを見せているが、かといって再び感染が増加しないとは限らず、油断はできない状態が続いている。

 こうしたコロナ禍は、皇室の方々にも多大な影響を与え、公務は専らオンラインが主流となって、お出ましされる姿を目にする機会はほぼ無くなって久しい。

 先日の「沖縄復帰50周年記念式典」でも、天皇皇后両陛下はオンラインで出席されていた。

 そんな中、秋篠宮ご夫妻の次女・佳子さまは、5月7日に行われた「森と花の祭典みどりの感謝祭」に出席し、久し振りに直に国民と触れ合われた。

 佳子さまは宮中での行事や陵墓の参拝などを除いて、約2年3カ月ぶりとなるイベントへのご出席だった。やはり直に皇室の方が訪れ、その場でスピーチをされる姿は、注目度をおおいに高めたはずだ。

 公務ではないものの、人生の節目を迎え、報道陣の前で心境を語られたのは、昨年12月、成年となった天皇皇后両陛下の長女・愛子さまと、今年4月に筑波大学附属高校に入学された秋篠宮ご夫妻の長男・悠仁さまだ。

 成年行事を終えた愛子さまが、報道陣が待ち受ける皇居宮殿の車寄に現れた時には、華やかなローブ・デコルテをお召しになり、頭上には叔母の黒田清子さんから借り受けたティアラが輝いていた。

 国民にとって、初めて目にする愛子さまの正装姿を、多くの国民はテレビのニュースを通じて拝見したのだが、筆者はそのシーンを目にして、ある興味にかられてしまったのである。

◆愛子さまと悠仁さまのあるシーンに注目

 それは、皇居宮殿の車寄に現れ、正面を向かれる前の一瞬、愛子さまが足元に視線を落とし、何かを確認した後、カメラに正対する位置に立たれたシーンだ。もしかしたら、愛子さまは、事前に決められたご自分の立つ位置を確認されてから、そこに歩まれたのではないか。

 そして迎えた今年4月の悠仁さまの入学式である。

 その時のニュース映像を見ると、画面の左手奥から徒歩で現れた悠仁さまが、報道陣が待ち構える場所へと進み出て、やはりカメラに正対する位置に立たれた。しかも、悠仁さまの足元に、それらしき印が堂々と残されていた。

 それは一枚の落ち葉。

 悠仁さまも、その落ち葉を確認しつつ、その横に立たれたように見えた。周辺にはチリ一つ無く、その場所にだけ一枚、ひらりと添えられていた落ち葉が、人為的に置かれていたようにも感じた。

 つまり、足元の落ち葉は、悠仁さまの立ち位置を示す、いわば目印。

 テレビ業界では、これを「バミリ」と言って、スタジオ収録でのMCやゲストなどの立つ場所にテープを貼って示すものだ。

 節目の行事を報道する場合、代表カメラで撮影した映像が各局に配られる。したがって、きちんとした映像を撮らなければ、他のテレビ局から文句が出ないとも限らない。

 そこで綺麗に画角に収まるよう、事前にバミリをしていても不思議ではない。愛子さまの時も、もしかしたらそのような印があったのではないだろうか。

 ちなみにバミリという言葉、舞台用語で「場を見る」という意味から来ているらしい。

◆皇室の方々の撮影に「バミリ」はある?

 実際、皇室の方々がカメラの前にお出ましになる際には、こうしたバミリがあるのかどうか、宮内庁で報道担当だった、皇室ジャーナリストの山下晋司さんに聞いてみた。

「立ち止まって頂く場所は、報道室職員など宮内庁側がカメラマンと相談して決めることもありますが、その場所に印を置くかどうかは何ともいえません」

 確かに印がいらない場合もあるようだ。

 愛子さまが学習院大学ご入学に際し、報道陣からの取材に臨まれた時には、皇室関係者らしき人が「こちらへ」と誘導し、そこに立っていただく様子が映像に映っていた。

 愛子さまの成年行事が行われた日の撮影でも、目立つ印がつけられていたかどうかは定かではないが、「ここに立ってください」という段取りは伝わっていたはずだと山下さんは言う。

 山下さんがまだ宮内庁に勤務していた頃、昭和天皇とのやりとりで、とても印象に残っているエピソードがあるという。

 それは昭和63年4月、昭和天皇最後のお誕生日用の映像を撮影した時のこと。

 皇居東御苑でカメラマンから60~70メートル離れたところから、昭和天皇お一人でカメラマンに向かって歩いて頂き、途中で立ち止まって花を愛でるという映像を撮影することになっていた。

「その時は各社取材でしたから、20台くらいのカメラが東御苑の道を塞ぐほどに並んでいました。自然に散策されているご様子を撮影するわけですから、立ち止まって頂く場所に誰かが立っていると不自然です。ですから、どうやってその場所を昭和天皇にお示しするかを思案しました」

 昭和天皇に侍従が「あのあたりで立ち止まって頂いて」と、段取りを説明しているのを山下さんは見ていたというが、「あのあたりで」と侍従が指をさして説明しても、距離があるので、昭和天皇はどこなのかお分かりになりにくいようだった。

 そこで山下さんは、立ち止まって頂きたい場所に、不自然にならない程度に枯れ葉を集め、昭和天皇の方を振り返った。すると、昭和天皇もその様子をご覧になっており、アイコンタクトで、「そこなのだな」とお分かりになったようであったという。

 こうして撮影がスタートした。昭和天皇は歩いてこられると、山下さんが枯れ葉を集めた場所で立ち止まり、撮影は無事成功した。

 皇室の方々の映像は、その後も貴重な記録として残るものだけに、入念な準備はもちろん、その場に応じたセッティングが求められる。カメラのあの画角の中に颯爽と映りこむよう、周囲の人びとは様々な工夫を凝らしているようだ。

「バミリ」も、その一つではあるが、宮内庁では公式にそのことに触れた情報は出していない。

「沖縄復帰50年 昭和天皇の悔恨、上皇陛下の覚悟、そして令和の天皇に引き継がれた願い」

https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20220516-00296211

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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