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愛子さまが陛下に託したご質問、羽生結弦選手の回答は? 皇室が冬スポーツに励む理由

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇ご一家(アフロ)

 いよいよ2月4日から北京冬季オリンピックが始まる。スキーやアイスホッケー、スピードスケート、ボブスレー、スノーボード、花形のフィギュアスケートなど、見どころがいっぱいだ。

 天皇皇后両陛下は、北京冬季オリンピック・パラリンピックに参加する日本代表選手団に、激励のお気持ちを込めて金一封を贈られた。

 これまでにもオリンピック・パラリンピックの選手団に贈られてきたが、ウィンタースポーツは天皇ご一家がずっと親しんでこられた馴染み深いスポーツとあって、より高い関心と期待を託されていたことだろう。

■羽生選手が答えた、愛子さまからのご質問

 天皇ご一家のウィンタースポーツに対する関心の深さを知る、こんなエピソードがある。

 それは2014年、上皇ご夫妻がソチオリンピックの選手たちを皇居宮殿に招き、茶会を催された時のことだった。

 当時皇太子だった陛下も出席され、選手たちの中にはソチオリンピックで金メダルを獲得した羽生結弦選手もいた。

 実は陛下は愛子さまから「羽生選手に会ったら質問してきて」と頼まれたことがあり、羽生選手にその質問をお伝えになったという。この時のことを羽生選手は、茶会の後、カメラの前でこのように話した。

「(皇太子さまを通して)愛子さまから『得意なジャンプは何ですか?』というご質問がありまして、僕はアクセルジャンプが好きなので『アクセルジャンプが好きです、得意ですということを(愛子さまに)お伝えください』と言わせて頂きました」

 愛子さまにとってスケートは、4歳の時から熱心に取り組まれていたスポーツだ。ご自身も親しんでいるとあって、フィギュアスケートの試合をテレビでご覧になり、羽生選手の華麗なジャンプに関心を寄せていらっしゃったのだろう。

 陛下も小学4年生の時からスケートを習い、雅子さまも幼い頃に家族でモスクワに暮らしていた時から、市内の公園にあった屋外のスケートリンクで滑っていらっしゃったとか。

 スケートと並んでスキーもまた、ご一家で毎年のように楽しまれてきたスポーツ。もちろん、愛子さまを含めて皆さん、とてもお上手だ。

 愛子さまは3歳の時に初めてスキーを体験し、今では軽やかなシュプールを描くほどに腕を上げられ、宮内庁から公開された愛子さまのスキー映像には、難しいコースにも挑戦するお姿が映っている。

 今はコロナ禍のため、2年前からスキー場へお出かけになってはいないものの、雪はご一家にとってお友達のようなものなのだろう。

■天皇ご一家がウィンタースポーツに励まれる理由とは?

 このように皇室の方々がスポーツを奨励し、自らも取り組まれるのは、なぜなのだろうか?

 その答えの一端となるのが、上皇さまとスキーの繋がりだ。上皇さまが17歳の時、教育係を務めていた小泉信三氏が、馬術やテニス、卓球以外にも冬のスポーツとしてスキーを勧め、日本スキー界の草分けと言われる猪谷六合雄氏が指南役を務めた。

 当時、上皇さまは毎年のようにスキー場に1週間ほどの日程で滞在し、合宿生活を送られた。猪谷六合雄氏がスキー理論の説明を行い、息子の猪谷千春氏が実際に滑る姿を実践してお見せした。

 上皇さまはしっかりお聞きになって忠実に行い、スキーの上達ぶりは目覚ましく、周囲が舌を巻くほどだったという。

 その後、猪谷千春氏は昭和31年に、イタリアで開かれたコルティナダンペッツォ冬季オリンピックに出場し、回転競技で銀メダルを獲得。日本初の冬季オリンピックメダリストとなった。

 スキーは足腰を強くすると同時に、バランス感覚も磨くことが出来るため、基礎的な体力と運動能力の鍛錬にうってつけのスポーツである。将来、天皇となられる時のために、その激務に耐えられる身体に若いうちから鍛えたほうが良いと、教育係だった小泉氏は考えたのだろう。

 上皇さまはお子さまたちが幼い頃からご家族でゲレンデを訪れ、スキーに励まれてきた。そこには、スポーツの楽しみとともに、将来きちんと公務を務められるように、わが子に強い体と心を鍛えてほしいという思いがおありだったのかもしれない。

■皇室とウィンタースポーツの関わり

 他の皇族の方々も、ウィンタースポーツと関係が深い。スケートでは、三笠宮さまがアイスダンスをお好きだったことから、三笠宮杯アイスダンシング競技大会を自ら設立され、現在も開催されている。

 他にも、スキー競技では、皇族の方々の名前を冠した「秩父宮牌」「寛仁親王牌」「桂宮牌」「高円宮杯」「彬子女王杯」「瑶子女王杯」など、宮様スキー大会も開催され、国民がウィンタースポーツに親しむ活動を積極的に支援されてきた。

 前回の平昌冬季オリンピックでは、日本代表選手は金4個、銀5個、銅4個の合計13個のメダルを獲得し、その活躍ぶりに日本中がおおいに沸いた。私たち国民同様に、両陛下始め皇室の方々も、今回の選手たちの健闘ぶりを楽しみにされていることだろう。

「先々代のトンガ国王は昭和天皇を敬慕…皇室とトンガ王室、知られざる友情の歴史は」https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20220202-00279822

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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