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佳子さまの”手話力”どれくらいすごい? 紀子さまの手話の師が明かすお人柄

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
秋篠宮家の次女・佳子さま(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 秋篠宮家の次女、佳子さまが今月から全日本ろうあ連盟の嘱託職員として就職されることが発表された。これまで佳子さまが手話に力を注いでこられたことは広く知られており、今後はさらなる貢献が期待されている。

 そこで、長年にわたって佳子さまの手話を見守ってきた人物に話を伺った。

■紀子さまに手話を御指南した先生

 佳子さまの母・秋篠宮妃の紀子さまに10年にわたり手話を教えたのは、生まれつき聴覚障害のある演劇人の井崎哲也さんだ。その経歴は実にユニークである。

 ろう学校卒業後、黒柳徹子さんが日本に招聘した「ナショナル・シアター・オブ・ザ・デフ」(アメリカろう者劇団)を観劇したことがきっかけで、日本でもろう者ができる演劇を作りたいと思い立ち、仲間と一緒にろう者の劇団を立ち上げた。その後渡米し、井崎さんは1年半、アメリカのデフシアターで経験を積んで帰国。日本に戻ってからは演劇活動と並行して、若者の間で手話ブームを巻き起こした日本テレビのドラマ「星の金貨」で手話指導を行い、NHK教育テレビの手話番組で講師を務めるなど、手話の普及に尽力した。

 秋篠宮邸に伺って故貞弘邦彦氏とともに手話を御指導するようになったのは、紀子さまが皇室に入られた数年後のことで、月に1、2回のペースで約10年続いたという。井崎さんは表現力がとても豊かで、取材した折も、その表情や手の動きからほとばしる情熱が伝わって来た。

「まさか佳子さまが手話をできるとは思っていなかったので、驚きました」

と、井崎さんは佳子さまと会った日のことを語ってくれた。

■佳子さまとの手話エピソード

 2015年2月1日、井崎さんが顧問を務めるトット基金の手話狂言が国立能楽堂で行われた時のこと。そこに秋篠宮妃紀子さまと一緒に、20歳になったばかりの佳子さまがお越しになった。鑑賞後、お二人は手話狂言の劇団員と和やかに懇談され、その時に井崎さんは、「楽しくて笑いました」と佳子さまからお言葉をかけられたという。佳子さまの一生懸命な思いが伝わってきて、井崎さんも喜びで胸がいっぱいになった。

 その後も手話を通して、佳子さまと会う機会が何度もあった。中でも井崎さんが忘れられない出来事が、2019年10月に開催された第5回全国高校生手話パフォーマンス甲子園だった。このイベントにゲストとして出席した井崎さんは、交流会の後、手話の要素とパントマイムを組み合わせた「サインマイム」を披露することになっていた。

 交流会には佳子さまが参加されており、この機会に見て頂けると井崎さんは楽しみにしていたという。しかし、いざ披露する時には、スケジュールの関係で佳子さまは帰られた後だったとか。井崎さんは残念な気持ちを抱えていた。

 だが、その後、佳子さまが手話狂言にいらっしゃったとき、井崎さんを見つけると急いで走り寄り、「サインマイムを見られなくて残念でした」と手話で伝えてくださったという。「サインマイム」を手話でどう表現すればいいのか分からなかったようで、口で「サインマイム」と言い、手話で「見られなくて残念でした」と表現された。井崎さんは佳子さまの優しいお心遣いに感銘を受けた。

■手話から分かる佳子さまのお人柄

 「佳子さまの手話は軸が定まっていて身体が揺れず、指の先まで伸びて、滑らかで上品。常に相手の気持ちを考えながら、ゆっくり手を動かしていらっしゃる」

と、井崎さんは佳子さまの手話を評する。手話表現は、その人の内面を映し出すもの。声や話し方を通して人柄が分かるのと同じで、手話にも自然と人となりが表れるという。

 2018年1月、眞子さまと佳子さまが手話狂言にいらっしゃった時は、お二人ともレベルアップし、すべて手話で伝えることができるようになっていた。もはや通訳は必要ないほどで、井崎さんはその上達ぶりに舌を巻いた。

 さらに驚いたのは、お二人の細やかなご配慮だった。「通訳は必要ありません」という態度は絶対になさらず、通訳の人に確認を求めながら、その場を打ち解けた雰囲気に包んで会話を進めていらっしゃったのだ。

■手話というコミュニケーション

 井崎さんに話を聞き終えた筆者は、事前に勉強してきた手話で「ありがとう」と伝えようと、頭を下げながら手の甲にもう片方の手を下ろして、手刀を切る動作を示した。すると、井崎さんからこんな指摘が…。

「“ありがとう”は、手刀を下から上にあげる動作をします。今のように手刀を上から下におろすと、逆にネガティブな意味、“やめる”という意味になります」

 そう教えてもらって以来、誰かに「ありがとう」を伝える時には、井崎さんから習った手話を実践している。初歩の初歩ではあるが、外国語が話せるように、手話というコミュニケーション手段が加わった気がする。

 佳子さまが就職して手話に本格的に取り組まれることで、手話が多くの人たちにとって身近なものになればと願わずにはいられない。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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