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天皇陛下と雅子さま、そして佳子さまも… コロナ禍における公務の新たなスタイル

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
佳子さま(写真:ロイター/アフロ)

■佳子さま、初めての動画メッセージ

 9月27日、秋篠宮家の次女・佳子さまは、鳥取県で行われた「第7回全国高校生手話パフォーマンス甲子園」を、インターネットを通じて視聴された。

 この行事は第1回以来、佳子さまがイギリス・リーズ大学に留学していた年を除いて毎回出席されてきた、思い入れのある公務である。

 今年は新型コロナウイルス感染防止のためにオンライン上で開かれ、鳥取県内の2チーム以外はリモートで参加。高校生たちの熱のこもったパフォーマンスを、佳子さまはお住まいの御仮寓所で動画配信サイト「ユーチューブ」を通じてご覧になった。

 例年は佳子さまが開会式で手話の挨拶をされるのだが、今年は初めての試みが行われた。

 約5分半にわたって、佳子さまが手話を交えながらお言葉を述べられる動画が、会場で上映されたのである。その佳子さまのお言葉は……

 

「新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、全国各地の参加者と鳥取県倉吉の会場の参加者がインターネットを通じてともに集うことができました。様々な工夫を凝らし、新しい形の手話パフォーマンス甲子園に向けて尽力された皆様に深く敬意を表します。(中略)

 それぞれの舞台をつくりあげるまでには、うれしいことも大変なこともあったかと思います。皆様のあふれる思いと熱意のこもった舞台は、きっとたくさんの人の心に届くことでしょう。わたくしもこれから発表されるパフォーマンスの動画を、鑑賞することを楽しみにしております」

 佳子さまが映像でお言葉を寄せられるのは、初めてのことだった。

 高校生たちのパフォーマンスを鑑賞されている間、時折、佳子さまは胸の前で両手をひらひらと動かされていた。

 実はこれは、手話の拍手。

 聴覚障がい者の方には、拍手も音ではなく、ひらひらと手のひらを動かす方が分かりやすいという。にこやかな表情で両手をひらひらとさせる佳子さまのお姿から、高校生たちへの労いと応援の気持ちが伝わってくるようだった。

 コロナ禍が長引く中、皇室の方々の公務も新しいスタイルへと変わりつつある。

■天皇陛下と雅子さま、初のオンライン会議

 天皇皇后両陛下は8月20日、お住まいの赤坂御所で、コロナ禍における水と防災についての国際会議を、インターネットを通じて聴講された。

 「水」に関する問題は、天皇陛下が長年にわたってご研究を続けている、ライフワーク。2007年には国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任し、国際会議で基調講演をされるなど、このテーマに力を注いでこられた。

 両陛下がオンラインの会議に参加されるのは、今回が初めて。

 この国際会議には、約40カ国から政府の代表や専門家らが参加し、両陛下はメモを取るなどして熱心に耳を傾けられたという。

 去年、陛下はお誕生日にあたっての記者会見で、新たな時代に臨む決意として、

「『水』問題への取組で得られた知見も、これからの務めの中で、国民生活の安定と発展を願い、また、防災・減災の重要性を考えていく上で、大切にいかしていきたいと思います」

 と話された。

 そのお言葉を、コロナ禍のさまざまな制約ある中で、どのようにすれば最善なのかをお考えになりながら、雅子さまとともに着実に実践されているのである。

■時代に即した令和の皇室へ

 秋篠宮ご夫妻と長男の悠仁さまも、毎年出席していた全国高等学校総合文化祭の開会式を、今年はお住まいの御仮寓所でインターネットを通じて視聴された。

 皇室の方々は、人々と触れ合い、常に国民に寄り添ってこられた。

 withコロナの時代を経験する中、皇室にこれまでにはなかった公務のスタイルが加わり、さらに多くの人たちの声に耳を傾けていくことができるのではないだろうか。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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