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雅子さまのクラスと合唱コンクールで競った日 高校時代の忘れ得ぬ思い出とは?

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
皇后雅子さま(写真:Motoo Naka/アフロ)

■雅子さまの高校時代

 今年の春、愛子さまは学習院女子高等科を卒業され、学習院大学へ進学。しかし今年はコロナ禍の影響を受け、対面での授業は始まっていないという。

 それでも健やかに成長されている愛子さまのお姿を、天皇皇后両陛下もきっと嬉しく思うとともに、かつてのご自分と重ね合わせていらっしゃるのではないだろうか。

 そこで雅子さまの高校時代を知る、田園調布雙葉中学高等学校の校長・滝口佳津江さんに、当時の忘れ得ぬ思い出のエピソードを伺った。

 今から約40年前、雅子さまは田園調布雙葉高等学校に通われていた。1学年130名ほどで人数も限られている幼・小・中高一貫校のため、全員が顔を覚えているほど仲が良かったという。

 雅子さまが高校1年生の夏、お父様の仕事の関係でアメリカに引っ越すことになり、そのことをクラスメイトに伝えると、教室は別れの悲しさに包まれた。

 海外へ旅立つ友のために何かできることはないのだろうか…。クラスメイトの皆がそう考えていた時、誰かがクラス対抗の合唱コンクールで、雅子さまへのはなむけとして思い出に残る合唱をしようと言い出した。するとクラス中が賛同し、一致団結して盛り上がったという。

 その頃、2学年上の3年生だったのが、滝口さんだった。当時のことを、こう振り返る。

「私たちは高校最後の年でしたから、参加するからには優勝したいと練習に熱が入っていました。実際、ソプラノソロパートは声楽科に進む子が担当し、指揮者や伴奏者も音楽学校に進学するくらい力のある子が引き受けるなど、音楽に長けた人材が揃っていました」

 クラス全員で朝礼の時や帰りのホームルームの後に練習するなど、滝口さんのクラスも練習に力を入れ、レベルアップを図っていたという。この調子なら優勝間違いなしと思われたのだが、ある日、思いがけない情報が飛び込んできた。

「1年C組は、クラスの中に今度アメリカに転校する子がいて、その子との最後の思い出として優勝を狙っている」

 という情報だった。それを知って、滝口さんのクラスは騒然となった。

 早速、1年C組が練習している様子を、気づかれないようにこっそり偵察に行ったところ、クラス全員の歌声がまとまっていて大変上手だった。

「このクラスは、ここまで練習が進んでいる。私たちも負けてはいられないわ!」

 と、皆でライバル意識を燃やし、ますます練習に情熱を注いだという。

 後で知ったことだが、1年C組でアメリカに転校する子というのは、雅子さまのことだった。

 将来、その女性が皇室に嫁ぎ、皇后陛下になられることなど、当時はまったく知る由もなく、ただ夢中で合唱コンクール本番に向けて練習に励んでいた。

■優勝を狙ってのぞんだ、合唱コンクール

 そして迎えた、合唱コンクール当日。玉川区民会館に、田園調布雙葉高等学校の各クラスが集まり、順番に合唱を披露。滝口さんのクラスは早い順番になり、毛糸で作ったミサンガのようなお揃いの組み紐を全員が小指に巻き、これまでの練習の成果を存分に発揮した。

 合唱コンクールでは課題曲と自由曲があり、自由曲はクラスそれぞれで選ぶことができた。滝口さんのクラスは古くから日本に伝わる童謡「ずいずいずっころばし」。

 雅子さまのクラスである1年C組は、岩谷時子の作詞、冨田勲の作曲による、昭和49年度の「NHK全国学校音楽コンクール」高校の部課題曲として作られた、「ともしびを高くかかげて」を選んだ。

「今から思うと、歌詞には、世界に羽ばたく友へのエールが込められていて、アメリカに旅立つ雅子さまにお贈りするにはぴったりの歌だと思います。1年C組は歌の途中で、空に向かって手を掲げる振付まで入れていて、一生懸命さが伝わってきましたね」

 その高らかな歌声は、今も心に蘇るという。

 結果として、3年生だった滝口さんのクラスが優勝したものの、1年C組の頑張りは高く評価され、特別賞を獲得した。この日のことは、雅子さまをはじめクラスメイトの心に、高校時代の忘れられない記憶として鮮明に刻まれているに違いない。

■雅子さまの印象は

 滝口さんは大学を卒業後、教員として再び母校へ帰った。現在、校長の滝口さんは、2年後輩の雅子さまにどのような印象を持っているのだろうか?

「雅子さまは自分たちでソフトボール部を創設して、頑張っていらっしゃいました。連日の練習で日焼けされて、ボーイッシュなイメージでおられました」

 取材に伺った日も、運動場でソフトボール部の部員たちが元気に声を掛け合い、練習に勤しんでいた。雅子さまが友との絆を深めた日々は、今もこの場所に息づいているのだろう。

 続編では、母校・田園調布雙葉と深く関係する、雅子さまの好きな言葉について、ご紹介したいと思う。

 多くの思い出が残る学び舎、そしてともに学生生活を過ごした友は、人生のかけがえのない宝物だ。雅子さまが心の中でずっと大切にしてこられたのは、どのような言葉なのか、迫っていきたい。

続編:https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20200928-00198291/

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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