個人破産の増加、その裏に何があるのか?

(写真:ロイター/アフロ)

最近の広告、どこか変?

 最近、テレビ、新聞やネットなどで、銀行カードローンや消費者金融の広告が多いのに気付いていますか?なぜ、金融機関は、銀行カードローンに力を入れているのでしょうか?そして、消費者金融は、イメージが悪いにもかかわらず、大々的に広告を打ってきているのでしょうか?

個人破産が増加、景気の現状は?

 こうした銀行カードローンや消費者金融の広告が増える一方で、2015年まで減少していた個人破産が、昨年から再び増加しています。景気が良くなっていると政府は言いますが、どうして個人破産が増えるのでしょうか?

 日本の景気は、景気指標を見る限りでは、生産や設備投資、輸出などの面では悪くない上に、雇用に至っては、2.8%の完全失業率、1.51倍の有効求人倍率と人手不足が深刻になるほどひっ迫しています。

 それでも、国民の間に景気回復感が薄いのはなぜでしょうか?それは消費に表れています。家計調査によれば、6月の実質家計支出は2.3%増でした(このままプラスが続くか微妙です)が、それは1年4か月ぶりのプラスで、それまではマイナスであったことに窺えます。

そうなったのは、給料が思ったほどには上がっていないこと、特に税金や社会保障費などが引き上げられたことで差し引いた可処分所得が伸びていないことが背景にあると見られています。また、個人消費が伸びていないのは、定年退職した年金受給者への年金支給額の減額も大きな理由になっています。

今回の景気回復感が感じられないのは、国が実質的な増税と年金などの支給減額を行ったことが要因の一つであるといえます。しかも、問題の根源には今後も負担が増えるという将来不安が背景にあり、これを払しょくしない限り、景気は思うように回復しないのではないでしょうか。

なぜ個人への融資が増えるのか?

 消費の伸び悩みで上がらない物価に対して、2%を物価目標にデフレを解消し、景気回復につなげたいと考えて、日銀の異次元緩和政策が行われてきたのですが、結果的には、期待に反して物価は思うように上がりません。将来不安が消えない中では消費を控え、貯蓄に流れるからで、経済構造がこれまでと違ったステージにいて、過去の金融政策では通用しないからです。

 それでも異次元緩和政策を拡大してきた日銀が最終段階で採用したマイナス金利政策は、貯蓄しても、金利がゼロ近辺にあるため金利収入がなく、個人消費をさらに抑制させているといえます。そうなれば、将来不安がますます大きくなる中で、一層消費を控え、景気が思うように回復しないことになります。

 そうなると、必ず落ちこぼれる人が出てきます。ぎりぎりの生活をしている非正規労働者や、最低の年金で生活している人たちには、一時的な失業や出費などちょっとしたことで食べるものや着るものなどの生活資金に窮すれば、消費者金融や銀行カードローンを借りることになります。そして一旦借りてしまうと、金利が高い分返済に窮し、雪だるま式に膨らんでいきます。

個人への融資が増えた背景は?

 一方、個人への融資が増えたのは、日銀のマイナス金利政策が大きく影響して銀行の行動を変えつつあります。多くの銀行などは、国債などの債券で運用しています。しかし、金融機関は毎年80兆円の国債を日銀に吸い上げられて運用する国債が減少し続けています。またマイナス金利政策で長期金利がマイナスまで誘導されて、もはや新規の国債の金利もゼロに近く、利金収入は目減りする一方投資する魅力もなく、運用先に困っているのが実情です。また為替リスクのある海外投資には限界があります。

そこで、銀行等は、融資を増やそうとする動きを強めています。しかし、内部留保を大量に抱えている大手を中心とした企業では、銀行からの融資は必要がなく、融資しようとしても金利競争で貸出金利が1%を割るまでに下がり、利ザヤが縮小して銀行にとって魅力が薄れてきています。これは、住宅ローンについても言えます。

 残った貸出先は、個人しかありません。つまりマイナス金利政策で、銀行が稼げる分野が少なくなり、貸出金利が2~18%と高金利で利ザヤが大きい個人への融資に力を入れ始めるのは自然です。

個人への融資で中心は銀行カードローンへ

 以前は、消費者金融が個人の融資の中心でしたが、多重債務者が問題になり、06年貸出限度額が年収の3分の1とする総量規制や上限金利の引き下げなどを盛り込んだ貸金業法の改正で、消費者金融の融資残高は大きく減少しました。代わって銀行のカードローンが増加しています。

 銀行カードローンの融資残高は、11年末で3.2兆円が16年末5.4兆円と5年間で約7割増加しています。なぜかといえば、消費者金融にある年収3分の1の融資額上限規制がなく、年収証明書が不要で、簡便な審査で迅速に融資できるシステムにして、借りやすくしているためです。

 もう一つは、消費者金融会社が、06年の貸金業法改正で経営が成り立たなくなり、アコムやプロミスの大手は銀行の傘下に入り、銀行と一体となっています。銀行は系列の消費者金融会社に融資をし、そこでの利ザヤを得る一方、消費者金融で融資が難しくなれば、一部が銀行カードローンに流れていきます(もちろん、そのように誘導しているとは思いませんが)。また、銀行カードローンに対して消費者金融が信用保証をするなどして、銀行から借りやすくしているとも言われ、その信用保証額も増え続けています。

このままでは個人破産の増加は止まらないのでは?

 とは言っても、融資額全体に占める銀行カードローン残高は、1%未満でまだ小さいです。ただ、今の日銀の異次元緩和政策、マイナス金利政策が続くのであれば、貸出金利の高い銀行カードローンは、広告に力が入り、貸出上限規制がなく、年収証明書も不要である限り、さらに拡大してくると思われます。そうなれば、融資残高が増加し、個人破産は増加し続けることになりましょう。

 そして、地方の金融機関は、利ザヤを稼ぐ力を失いつつある中で、これまで出遅れていた個人へのローンに、今後力を入れ始めることが予想されます。そうなれば地方においても個人破産が増え、それが地方の経済に暗い影を投げかけ、地方経済の一段の衰退につながるのではないかと危惧されます。

 この状況を食い止めるには、銀行カードローンにも、貸出規制や年収証明書の提出などある程度消費者金融と同じような規制を設ける一方、審査の厳格化などを行うことが求められるのではないでしょうか。

最後に

 個人への融資及び破産の増加は、現在の景気の状況と現在の日銀の金融政策が大きく影響しています。国は、国民が景気の実感、将来不安の緩和につながるような改革を行うこと、そして日銀は、金融政策の正常化の道筋を早く見出し、金融機関が正常な経営に戻れるようにすることが、本当は必要なのかもしれません。