スタートアップフィーバーの再燃に期待

 1980年代後半、米国シリコンバレーでは、半導体ベンチャー(注)が雨後のタケノコのように続々生まれた。当時、日経エレクトロニクスの姉妹誌であった米Electronics誌の半導体エディターだったJohn Posa氏は、「まるでスタートアップフィーバーだね」と表現した。

 当時、日本はバブル経済の真っ最中で、そこら中でディスコティックが盛んになり、東京六本木のディスコでは毎晩、踊り狂っていた人たちがいた。Bee Geesが音楽を担当した映画「サタデー・ナイト・フィーバー」がはやり、何かというと「フィーバー:fever(熱)」という言葉が日米を問わず流行っていた。Johnは、それを半導体ベンチャーの熱狂という意味で使った。

図1 シリーズAの資金調達額が5.71億ドルにも達した 出典:Global Semiconductor Alliance
図1 シリーズAの資金調達額が5.71億ドルにも達した 出典:Global Semiconductor Alliance

 実はいま、半導体の世界ではスタートアップが続出している。自分のためたお金や知り合いなどから借りて起業し、さらにエンジェルやベンチャーキャピタルから最初に出資してもらう資金調達をシリーズAと呼ぶが、この2~3年シリーズAの調達が世界で急増している(図1)。うれしいことに、日本でもスタートアップが誕生し始めている。直近の2020年10月における世界24社のスタートアップの資金調達額は合計で、16億ドルを超えた(参考資料1)。

 なぜうれしいか。日本の半導体を復活してくれる可能性を秘めているからだ。今や、ITの3大要素の一つとなった半導体(参考資料2)は、世界は成長を続けてきたのに、日本だけが30年間失速したままになっている。その敗因は10以上あるが、ここでは一つだけ議論すると日本の場合、大手半導体メーカーは全て総合電機の一部門であった。半導体は本来、ITと同様、ビジネススピードが極めて速い業種である。にもかかわらず、総合電機が支配し続けたために、タイムリーな投資ができず、親会社とは独自にビジネスを展開すればトップは解雇されるという親会社に逆らえない異常な経営をとってきた。世界の半導体では、サムスン以外は全て完全独立した半導体専業メーカーである。親会社の株が1株も入っていない独立企業がほとんどである。

 これに対して日本の総合電機は、子会社扱いすることで、人事権を握り、いつでも子会社のトップの首を飛ばせる体制をとってきた。総合電機のトップが半導体を理解できないのであれば、さっさと自立させるべきで、海外の半導体はそのようにして完全独立で業績を上げてきた。フィリップスから独立したASML、NXPや、シーメンスから独立したインフィニオンテクノロジーズなどは親会社の株式はゼロだ。半導体を理解できない経営者がトップで、半導体を子会社扱いして、独立させずに手足を縛っている日本の状況は、今の東芝でも見られるようにとても危険である。キオクシアの上場を阻止したのはキオクシアではなく、東芝の経営陣である。

 こういった状況からまず脱却しなければ日本の半導体に明日はない。最初から独立したスタートアップに期待するのは、少なくとも親会社の人事権が存在しないということがある。半導体スタートアップが世界に負けない製品やサービスを作り、日本ではなく世界を相手に戦うことで、日本の半導体の復活がある。かつて日本が得意だったDRAMはもっぱら世界のメインフレームコンピュータメーカーを相手に販売していた。日本の今の半導体製造装置や検査装置メーカーの相手もやはり世界の半導体メーカーだ。日本の半導体メーカーの相手(ユーザー)は世界でなければ成長しない。

注)ここではベンチャーをスタートアップと同じ意味の日本語で使っている。米国でベンチャーというと、ベンチャーキャピタルのことを思い浮かべる人が多い。日本語ではベンチャーといった方が通じるとして最初はベンチャーという言葉を使ったが、後半以降はスタートアップに替えた。

参考資料

1. Startup Funding: October 2020(2020/11/2)

2. ITの3大要素が誕生して70余年、三位一体に(2020/10/18)