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破棄条項もなし?前田健太は広島に戻るべきではないか

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:ロイター/アフロ)

前田健太のドジャースとの契約の細部が憶測を呼んでいる。保証額は300万ドル/年(312.5万ドルという報道もある)と低くかつ8年と言う長期にわたっており、出来高払いは1000-1200万ドル/年と高額というドジャースにはノーリスク契約だとの噂が広まっているからだ。

それでも「オプト・アウト」(opt-out 契約期間内の破棄条項)が設定されていれば、契約期間途中でFA市場に打って出ることもできるのでまだマシだと別のコラムで書いたが、どうやらそれも設定されていない可能性が高いらしい。地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』がそう報じていると『Full-Count』が伝えている。

長期契約の場合、選手は契約期間の途中で破棄できる条項が盛り込まれるケースが多い。たとえば、2014年に楽天からポスティングを経てヤンキースに移籍した田中将大投手は7年総額1億5500万ドルという超大型契約に加え、4年目のシーズン終了後に契約を破棄し、フリーエージェントとなれる条項がついている。

活躍した場合に新たに高条件の契約を結び直すため、選手にとっては大きなメリットとなるが、今回は事情が違うと地元メディアは指摘。前田の場合は契約を途中で破棄する権利がなく、8年という長期契約に縛られる内容となると伝えている。

出典:Full-Count

なお、『ロサンゼルス・タイムズ』の原文はぼくもチェックしたが、破棄条項自体の設定を否定しているのかそれとも単に契約期間内の年俸調停権が無効なのかはニュアンスはやや微妙だ。

しかし、仮にFull- Countが報じている通りなら、彼は今回の契約を見合わせ来季以降に再度ポスティングなり海外FA権を得るなりでメジャー移籍を目指すことも視野に入れるべきだと思う。

思い出せは2010年のオフにポスティング移籍を目指した岩隈久志(当時楽天)も、交渉権を得たアスレチックスとの契約を見送って、翌11年は再び楽天でプレーした。アスレチックスの条件が、4年総額1525万ドル(年平均381万ドル)と低かったこと、かつFA権を得る6年間のメジャー登録を完了するまで保有権を同球団が保持し続けることだったからだと言われている。

今回の前田の場合は、当時の岩隈より保証額で低く(出来高を加味すると話は別だが)、かつ長期に渡り拘束される。これは拒否しても良いのではないか。

おそらく前田の意識としては、「広島に戻っては、せっかくポスティングで送り出してくれたカープに申し訳ない」というものがあるだろう。しかし、これはビジネスだ。契約は当事者同士が納得して初めて締結されるべきもので、前田がドジャースの条件に不満があるなら契約は見送るべきだと思う。少なくとも、広島への義理で無理をすることはない。カープにしても、ポスティングフィー2000万ドルが得られるのは、あくまで「契約が成立した場合」だ。破談となる可能性を踏まえていなければならないのは、ポスティングを利用するにあたっての前提条件だ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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