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日本人の老い方をデータ分析してみた 男性は25%が75歳までに亡くなり、女性は80代で3割が要介護に

斉藤徹超高齢未来観測所
(写真:イメージマート)

人生100年時代と言われるなか、老後に対する不安が広がっています。病気になり入院すること、要介護状態となること、認知症になること、そして、年金や老後2000万円問題など、こうした不安要素がさまざまなネットでは蔓延しています。

しかし、私たちは、本当に正しい情報に基づいて理解しているのでしょうか?

歳を取り、要介護状態や、認知症になる人はいるにしても、実際にどのくらいの人々がそうした状態になるのか、正確に理解している人は少ないのではないでしょうか?

そこで、人間はどのような形で老いて、そして亡くなっていくか。各種公的データを活用しながら、私たちはどのように老いて死を迎えるのか、考えてみたいと思います。

男性は4分の1が75歳までに亡くなる

令和3年の簡易生命表によれば、男性の平均寿命は81.47年、女性の平均寿命は87.57年となっています。コロナの影響で直近年の平均寿命は短くなりましたが、戦後の長い期間を通じて平均寿命は伸び続けてきました。その結果が、現在の世界でも有数の長寿国家というわけです。

しかし当然のことながら、全ての人が平均寿命まで生きられるわけでなく、平均ゆえに約半数の人は、その年齢まで辿り着くことなく、何らかの理由で死亡することになります。

では、どれだけの人がどの年齢まで生き、死亡するのか。それを見たものが、図表1になります。これは令和3年の簡易生命表に基づき、特定の年齢まで生存する者の割合を示したものです。

図表1 特定の年齢まで生存する者の割合

令和3年簡易生命表より筆者作成
令和3年簡易生命表より筆者作成

これによると、例えば65歳まで生存している人の割合は、男性で89.8%、女性で94.6%。逆に言うと、男性で10.2%、女性で5.4%が65歳までに亡くなることを意味しています。

当然、年齢を重ねるにつれて生存割合は下がり、男性では75歳前後には4人に一人が亡くなり、平均寿命の81.47年には半数が亡くなります。

女性は、男性よりも生存割合は高いですが、それでも85歳には3割が亡くなり、平均寿命の87.57年までには半数が亡くなるということです。

要介護状態が高くなるのは80代から

健康状態と死亡状態の間に、いわゆる”要介護状態”が存在します。しかし全ての人が、介護が必要になるわけではありません。要介護状態とは、脳血管疾患、関節疾患、骨折・転倒、高齢による衰弱、認知症などを理由に、自立生活が困難になることを意味します。

では、どの程度の人が実際に要介護(要支援も含む)になるのでしょうか。

図表2 男女・年齢階級別要介護認定率

令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成
令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成

健康寿命が尽きると「要介護状態」ではない

図表2は、男女・年齢階級別に見た要介護認定率です。これを見ると60代後半での要介護認定率は、わずか数パーセントに過ぎません。要介護認定率が高くなっていくのは70代後半からで、80代前半で男性が2割、女性が3割要介護認定されるということになります。

よく健康寿命を過ぎると、要介護状態になるのではないかと勘違いされている方がいらっしゃいます。健康寿命は、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されており、これは国民生活基礎調査で、現在の健康状態を「良い」「まあ良い」「普通」と回答した人を「健康」、「あまり良くない」「良くない」と回答した人を「不健康」として健康寿命を割り出しています。

なので、健康寿命は、あくまで健康である状態の平均寿命が現在何歳くらいかを示すひとつの指標であると考えておいた方が良いかもしれません。

では、実際にどの程度の人が要介護状態になるのか。気をつけなければならないのは、実際には要介護認定を受ける前に、病気など何らかの理由でその年齢までに亡くなってしまう人が一定数いるという事です。つまり図表2の認定率は、当該年齢の生存者を母数とする認定率であるということです。当たり前と言えば当たり前ですが、とかく私たちはその事実を忘れがちです。

そこで、当該年齢までの死亡率も考慮し、生存率(要介護率除く)+生存率を考慮した要介護率+死亡率という構成比で、当該年齢の構成を表したものが、図表3-1、3-2となります。

図表3-1 年齢階級別生存率・要介護率・死亡率構成比(男性)

令和3年簡易生命表、令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成
令和3年簡易生命表、令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成

図表3-2 年齢階級別生存率・要介護率・死亡率構成比(女性)

令和3年簡易生命表、令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成
令和3年簡易生命表、令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成

介護予防が必要なのは圧倒的に女性

ここで注目すべきは要介護率の年齢推移でしょう。男性の場合は、女性と比べて平均寿命が短いために、多くは要介護状態とならず、死亡していきます。死亡率を考慮した実介護認定率は、80歳代で1割程度とさほど高くはありません。要はその前に、別の要因で男性は死亡しているのです。

それに対して、平均寿命の長い女性の要介護率は高くなる傾向にあり、80代前半で2割、後半で3割の方が要介護認定を受けています。

このように見ていくと、高齢期の何に備えていくべきかが男女で実は異なることが分かります。

男性は、要介護状態になることを極端に恐れる必要はないのです。むしろ、それよりも死亡要因となる病因を予防するための努力が大切であることがわかります。

一方、女性は要介護となる確率が男性よりも格段に高いことがわかりました。介護予防の備えが重要なのは圧倒的に女性なのです。

死因「ガン」がトップは70代まで、80代からは「その他」がトップ

それでは、それぞれの年齢段階で、どのような理由で人は亡くなるのか。日本人の死亡要因のトップが「ガン(悪性新生物)」であることは良く知られた事実です。しかし、どの年齢でも常にトップということではなく、年齢段階に応じて死亡要因は異なります。

先ほどの図表3の死亡率の部分を死亡要因別に内訳を示したものが、図表4-1と4-2です。

図表4−1 年齢階級別に見た生存・要介護・死亡要因構成比(男性)

令和3年簡易生命表、令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成
令和3年簡易生命表、令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成

図表4−2 年齢階級別に見た生存・要介護・死亡要因構成比(女性)

令和3年簡易生命表、令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成
令和3年簡易生命表、令和2年介護保険事業状況報告(全国計)、2020年人口推計より筆者作成

男性は70代前半までは悪性新生物の比率が高いですが、その後は心疾患(高血圧症を除く)、脳血管疾患、肺炎の比率が高くなることがわかります。最も伸びが高いのは、「その他」です。その他には、「その他の呼吸器系の疾患」「その他の消化器系の疾患」「神経系の疾患」などが含まれます。

女性の場合は、悪性新生物の比率が一定程度高いことがわかります。80代後半から増えてくるのは、心疾患、脳血管疾患と老衰です。老衰とは、加齢に伴うさまざまな身体機能の衰弱に伴う死のことを示します。

老衰は、日本人の死亡要因として悪性新生物、心疾患に次ぐ3位にこの数年浮上してきています(それまでは脳血管疾患が3位)。何らかの病気による死亡ではなく、衰弱による死亡が多いという事実は、裏返せば、それだけ日本の医療技術の向上の結果であるとも言えるでしょう。

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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