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あなたの「戻りたい年齢」は何歳ですか?

斉藤徹超高齢未来観測所
(写真:イメージマート)

あなたは何歳に戻りたいですか?

人は誰しも、戻りたい過去を抱えているのではないでしょうか。

松任谷(荒井)由実には、青春時代を振り返る楽曲がたくさんあります。「あの日にかえりたい」「卒業写真」「海を見ていた午後」「悲しいほどお天気」は、いずれも青春の頃に付き合ったり、別れた彼とのほろ苦い思い出を振り返った曲ですが、それらの曲に親近感をおぼえるのは、わたしたちも、その曲と同じように過去の懐かしい想い出を抱えているからでしょう。

なぜか過去の記憶は、時間の経過とともに美化される傾向があります。

もちろん、過去には思い出したくないことや、なかったことにしたい出来事も多数あります。

では、そうした過去の思い出を抱えた中で、わたしたちは、もし戻ることができるならば何歳に戻りたいと考えているのでしょうか。

アンケートシステム「ミルトーク」を使い、20歳から89歳までの1550名に、「もし、あなたが若い頃や昔に戻れるとするならば、何歳に戻りたいと思いますか?」という設問を投げかけてみました。(調査期間:2022年8月24日〜31日)以下、その結果をご紹介したいと思います。

昔に戻りたいと考える人は86.5%、戻りたくない人は13.5%

まず、全体から説明しましょう。

戻りたい年齢を具体的に数字(年齢)で回答した人は86.5%の1341名、13.5%(209名)の方は、特に昔に戻りたいとは思わない、今のままがいいという回答でした。

では、戻りたい年齢は何歳と答えたのか。それを散布図として図示したものが図表1となります。ここでは、横軸が「実年齢」、縦軸は「戻りたい年齢」を示しています。

13.5%の「今のままがいい」と回答された方は、「戻りたい年齢」と「実年齢」が一致しているので、右斜め上にあがる直線状の点線として表現されています。

図表1 「実年齢」と「戻りたい年齢」散布図

作成:筆者
作成:筆者

これを見ると、実年齢の老若に関わらず、多くの人が「戻りたい年齢」をティーンエイジ(10代)から20代前半と答えていることが分かります。ティーンエイジは、身体面でも精神面でも、いわゆる子供から大人に移行する時期、思春期にあたる時期です。

小学校・中学校という義務教育期間から、高校、大学へと学業や、就職へと環境が変化することで、人間関係にも変化が訪れます。学業やクラブ活動に没頭したり、一生付き合える親友が出来たり、ボーイフレンドやガールフレンドが出来た人も多いでしょう。

そうした青春の多感な時期、楽しい思い出を抱えた頃に再び戻りたいと考える人が多数いるのは納得できることです。また、その時期に戻ることで、その後の人生を「もう一度やり直したい」と考える人もいるでしょう。

一番戻りたい平均年齢は16.63歳

では、実際に何歳に戻りたいと回答されたのかを5歳刻みのヒストグラムで示したものが図表2となります。

図表2 戻りたい年齢ヒストグラム

作成:筆者
作成:筆者

これを見ると、一番戻りたいと回答された年齢層は「15ー19歳」で、全体の3分の1である34.6%が、ほぼ高校から大学時代にあたるこの時期と答えています。

その前後の年齢もほぼ正規分布のようになっているのも興味深いところです。今回は単純に戻りたい「年齢」のみをお伺いしましたが、併せてその理由も聞くとさらに興味深い結果が得られるでしょう。

では次に、男女別、もしくは年代別に「戻りたい年齢」がどう変化するのかを見ていきましょう。

まず、全体の「戻りたい年齢」(「今のままがいい」と答えた人を除く)は、

「戻りたい平均年齢」:16.63歳(回答者の全体平均年齢 49.57歳)に対して

・男性の戻りたい平均年齢:16.43歳(男性回答者の平均年齢54.18歳)

・女性の戻りたい平均年齢:16.78歳(女性回答者の平均年齢46.31歳)

と、ほぼ同じ回答となりました。

次に年代別では、

・20代の戻りたい平均年齢:16.4歳(20代回答者の平均年齢26.3歳)

・30代の戻りたい平均年齢:17.8歳(30代回答者の平均年齢34.8歳)

・40代の戻りたい平均年齢:20.4歳(40代回答者の平均年齢44.8歳)

・50代の戻りたい平均年齢:23.4歳(50代回答者の平均年齢54.1歳)

・60代の戻りたい平均年齢:21.4歳(60代回答者の平均年齢64.1歳)

・70代の戻りたい平均年齢:25.4歳(70代回答者の平均年齢73.1歳)

・80代の戻りたい平均年齢:14.6歳(80代回答者の平均年齢81.8歳)

と、年代が上になるほど、少しずつ戻りたい平均年齢が上昇していることがわかります。

しかし、いずれにしても、おおむね10代から20代前半に集中していることは確かです。

過去の心理学研究によると、人は過去の自分の出来事に関する記憶(自伝的記憶)を均一に覚えているのではなく、特に10代から30代に経験した事を強く覚えているという研究結果があるそうです。

やはり、青春の多感な時期の記憶は、甘酸っぱく物悲しいものでもあります。

そうした事も、このグラフ結果に反映しているのかもしれません。

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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