10月1日は「生涯現役の日」

記者発表する清家篤前慶應義塾長、秋山弘子東京大学特任教授(著者撮影)

 筆者もメンバーとして参加している「生涯現役の日」制定・普及委員会による「生涯現役の日」発表が先日、厚生労働省記者クラブで実施されました。これは毎年10月1日を「生涯現役の日」と定め、生涯現役に向けたさまざまな活動を支援していこうというものです。

 しかしなぜ「生涯現役」なのか、なぜ10月1日なのか、そのことに疑問を抱かれる方も数多くいらっしゃるのではと思います。そこで、この「生涯現役の日」の趣旨についてご説明します。

「生涯現役」の持つ意味

 なぜいま「生涯現役」なのか。その大前提となるのは、日本における長寿社会の到来です。

 最近、「人生100年時代」というキーワードを良く目にします。現在、日本人の平均寿命は世界1、2位をほこる有数の長寿大国となりました。しかしそうなったものの現在の日本は「長寿大国における暮らし方モデル」がまだ確立出来ていないのではないでしょうか。

 定年で会社を60歳で退職。その後、子会社の契約社員となり65歳まで働き続ける。年金を63歳から受給し、リタイアした65歳からは、自宅で趣味を楽しみながら、たまに孫の世話をして、80歳過ぎまで15年以上を余生として過ごす。

 60歳定年制や、65歳年金支給開始といったモデルは、まだ平均寿命が70代の時代に成立したライフスタイル・モデルであり、人生100年時代が近づいてきた現在は、新しい形の「人生後半モデル」構築が求められています。

 昔、皆が憧れていた「長寿社会」を私たちは実現するに至りました。しかしそれは残念ながら、全員がハッピーになれる社会ではありませんでした。高齢化を理由とする医療・介護を始めとする社会保障問題、社会格差、世代間格差など、数多くの社会課題が浮上してきています。

 その意味においても、高齢者のみならず、すべての世代の人々がより良く生きるための生活様式のあり方(ライフスタイル・モデル)が改めて問われているのです。

 それは、言うなれば大人になるまで「学び」、その後就職後は「働き」、定年後は「余生」や「老後」を楽しむという単線的な人生モデルからの脱却です。人々を年齢によって一律に、「学ぶ世代」「働く世代(=支える世代)」「引退する世代(=支えられる世代)」に分けるのでは無く、年齢にかかわりなく老若すべての世代が、それぞれの状況に応じて、「学べる」「働ける」「休める」時代に変えていく必要があるのです。

 そのためのキーワードのひとつが「生涯現役」です。ここで言う「生涯現役」は、単に高齢者を対象にした現役のことだけを指しているのではありません。すべての世代が自立し、活躍できる社会、すべての世代が何らかの役割を持って支え合う社会、それがすなわち、生涯現役社会の持つ意味です。

「生涯現役社会」の実現のために

 では、生涯現役社会の実現のためには何が必要とされるのでしょうか。まず、ひとつは一人ひとりが単線型人生モデルからの脱皮を自覚することです。若いうちから自分の生涯について展望を持ち、それに向けて活動を行っていくことが必要となります。特に男性は、会社一色に染められた人生でなく、現役時代より意識的にボランティア活動、地域活動に参加し、セカンドキャリア教育に取り組むなど、複線型人生の備えが重要になってくるでしょう。

 加えて、高齢期になっても何らかのかたちで社会と関わりつづけることが、本人自身にとっても、また社会にとっても望ましいことは間違いありません。社会に於いて何らかのかたちで役に立っていると思えることは、自己効力感の向上にも繋がります。

 年金だけに頼らず働き続ける、地域社会やコミュニティで何らかのかたちで貢献するなど、本人の出来ることや能力、やりたいことに基づいて多様な働き方が選択できる社会、それがすなわち生涯現役社会なのです。

 生涯現役社会の実現に向けては、本人の自覚に加えて、それをバックアップするような仕組みづくりも重要となります。ボランティア休暇やセカンドキャリア教育の取得を認める企業の福利厚生制度の創設、地域でのボランティアをマッチングさせる行政や社会福祉協議会による仕組みづくり、長年の就労キャリアをきちんと評価し高齢期の就労継続に繋げる仕組みづくりなど、社会全体として生涯現役社会の実現に向けてバックアップすることが重要になります。

 少子化が進み、毎年数十万人の勢いで人口減少が進む日本社会。その中で、さまざまな課題解決を図っていくためにも、全ての人々が生涯現役意識を持つことは極めて大切です。日本全体に今後拡がるであろう社会課題の解決に向けては、全ての人々が総掛かりで取り組もうとする意識改革が必要とされるのです。

 ※「生涯現役の日」に関するより詳しい解説はこちらから