親の人生を一冊に凝縮する『親の雑誌』

『親の雑誌』表紙(提供こころみ)

あなたは親のこと、どれだけ知っていますか

 あなたの親が、もしご高齢ならば、それまで長い人生を歩んできたあなたは親のこと、どれだけご存じですか?

 どこで生まれ育ったのか、どのような幼少期を過ごしてきたか。学生時代のキャンパスライフは?結婚に至るまでの恋愛体験は?どのようなサラリーマン人生であったのか、人生の浮き沈みや紆余曲折など。おそらく断片的には知っていたとしても、十全に理解している人はそんなにいないでしょう。若い頃、両親の口から、それぞれの人生の歩みを聞く機会はあまりないでしょう。

 しかし、自分も中高年となり、親の老い先に想いを馳せるようになると、改めて両親の人生について知りたいという気持ちにならないでしょうか。

人生をまとめる「自分史」ブーム

 最近は自分自身の人生史を記録として残す「自分史」ブームでもあります。大手出版社や新聞社も自分史作成をビジネスとして展開してくるようになっています。本格的な自叙伝本を作成するコースから、簡易作成バージョン、ライターが聞き書きしてくれるものまで、バリエーションは多種多様です。しかし、基本はある程度自分で原稿を執筆する必要もあり、文章執筆に不慣れな人にとってはハードルが高いのも事実でしょう。価格的にも自費出版でも、書籍ならば100万円以上かかり、難易度は相当高いとも言えるでしょう。

『親の雑誌』とは

 そのような中で、比較的気軽に親の人生を雑誌として作成してくれるサービスが生まれています。それが今回ご紹介する『親の雑誌』です。

商品内容を簡単に紹介しましょう。『親の雑誌』は、親のことを紹介してくれる雑誌です。

 表紙は、ご本人の近影が表紙を飾ります。雑誌名は、そのものずばり「名前」がタイトルとなります。人物紹介「○○(名前)のすべて」、インタビュー「○○として生きてきて」、特集「○○の“幸せ”」に迫る、などの記事タイトルが表紙を飾ります。内容は、人生年表、訪問取材インタビューによる人生遍歴、趣味、旅行、子どもなどに関するトピックスコラム、自分の“幸せ”に関して語るページ

や家族コメントなどで構成されています。

インタビューページ(提供こころみ)
インタビューページ(提供こころみ)

 なかでも一番ボリュームを占めるのが、インタビューにより自らの人生を語られる「インタビュー」パートです。何冊か筆者も拝見させていただきましたが、改めて「人に歴史あり」という言葉を感じる内容でした。親の雑誌という名前の通り、この雑誌の主人公は70代から80代の方々が中心です。長年生きていれば、自ずと人それぞれの人生遍歴が生まれてきます。普段高齢者の方々と接していても、お伺いすることができないその方の人生の一片を垣間見ることができたのは、得ることのできない経験でした。それだけ、人の人生は個々に面白くかつ興味深いものです。

 個々人の人生をA4版全20ページにコンパクトに凝縮して、雑誌という形にしたところがこのアイデアのミソでしょう。

『親の雑誌』発想の背景

 このユニークな雑誌を発案した株式会社こころみ代表取締役社長神山晃男さん、取締役早川次郎さんにお話をお伺いしました。神山さんは、かつては投資ファンドに所属していましたが、その後高齢社会が進む中でシニアマーケットに可能性があるのではないかと考え、この分野での起業を決意したそうです。

 最初に彼が手がけたのが、一人暮らし高齢者向け会話サービス「つながりプラス」でした。これは担当のコミュニケーターが、お子さんやお孫さんに代わり、親御さんに毎週定期的にお電話し、そのお話の内容を家族にメールでレポートするという会話サービスです。

 事業をスタートさせてみて、改めて気づいたのが、親御さんがお話しする内容が非常に面白いことでした。おそらく、親子間ではなかなか話す機会がない自分の人生に関する本音も、他人であるコミュニケーターの方が気軽に遠慮なく話すことが出来る。本音語りが記録されたレポート内容を読み、初めて「自分の親にはこんな人生があったのか、初めて知った!」と驚かれるご家族の方も多かったそうです。

 「こんなに面白い親の話なのだから、これを切り出して新しいビジネスにしてみようと考えたのです。」(神山さん)

そして生まれたのが、『親の雑誌』でした。つながりプラスの事業を通じて得た、「話したい欲求を持つ」親世代、そして親のことを知りたい 「子・孫世代」。この両世代を繋ぎ、しっかり記録として残すことを狙いとして選んだのが雑誌というスタイルでした。

 しかし、なぜ雑誌というスタイルを選んだのでしょうか?

 「例えば、自分史などの場合、ややもすると本人の満足感だけが先に立ってしまう場合もあり、受け取った子どもや親族たちは押しつけられたと思ってしまうこともあります。

 私たちが考えたのは、受け取ったときに家族や知り合いで一緒に盛り上がることの出来るコミュケーションのツールです。加えて、読みやすいこと、目につくことが条件でした。そのコンセプトを考えると雑誌というスタイルが自ずと最適という結果に落ち着きました。」(神山晃男さん、早川次郎さん)

こころみ社長神山晃男さん(著者撮影)
こころみ社長神山晃男さん(著者撮影)

 現在では、累計で600名ほど完成しており、バックオーダーも好調だそうです。最近では、つくられた雑誌を目にした人からなど口コミが広がり、それを通じた受注も増えているそう。申し込みは喜寿や米寿などの記念として、息子さんや娘さんがオーダーされる場合が多いそうです。加えて最近は、年老いた親の人生を記録として残しておきたいと考える場合も増えてきているそうです。

 株式会社こころみの今後のビジョンとしては、こうした高齢者とのコミュニケーション・ノウハウなどを資産とした「聞き上手カンパニー」として、さまざまな領域に事業の幅を拡げていきたいと考えているそうです。

 超高齢社会が進むなか、シニアと人々とのコミュニケーションを豊かにすることは、高齢者の孤立を防ぎ、地域での社会関係資本を豊かにすることに繋がっていくでしょう。

『親の雑誌』ホームページはこちら