「ショッピングモール」から「パブリックモール」の時代へ

都市の中心性をいかに担保するかが重要(元町商店街)(ペイレスイメージズ/アフロ)

中心商店街の危機・郊外の危機・商業の危機

高齢化、人口減少が進行する中、かつて高度経済成長時代に成立した多くの都市や商業のモデルが存続の危機に陥っているのは、すでに多くの人の知るところです。古くは戦前から1980年代頃に至るまで、長く力を持ち続けていたのは中心地区の都市商業でした。そこでは地元商店街に加え、百貨店や駅前立地型の大型スーパーが商業の核となりました。しかしその後、居住地域の郊外化とともに、郊外にロードサイド店舗が林立し、大型ショッピングモールが進出していく中で、売り上げ低下に見舞われた中心商業地区は、商店主の代替わりもかなわず次々と廃業を余儀なくされ、加えて商業の覇者ともてはやされた百貨店も存続の危機に陥っています。

しかしながらその後、一時隆盛を極めた郊外商業も、21世紀を迎えて以降、高齢化・人口減少に加え、オンラインショッピングにも押される形で、次第に厳しい売上状況が明らかになってきています。

このような環境下、私たちが住みたい街のあり方とは一体どのようなものなのか、再度、私たち自身が問われています。かつてのような中心市街地の賑わいもなく、一方で郊外も歯抜けの商業地区。それは、私たちが考える理想的な生活環境とはほど遠いむしろ「廃墟」と呼ぶにもふさわしい地区であると言えるでしょう。

「デッドモール」が示す未来の商業

デッドモール・コムのサイト
デッドモール・コムのサイト

このような行き過ぎた郊外化の未来を象徴するサイトが米国にあります。デッドモール・コム(DeadMalls.com)というサイトです。これは、都市環境・競合環境の変化により、売り上げ不振により閉鎖してしまったショッピングモール遺産を紹介するもので、マニアたちにより全米の閉じてしまったモールが紹介されています。現在約400のモールがアップされています。日本でもショッピングモールに限らず、人口減少に伴い閉店を余儀なくされるスーパーも増加しており、早晩同じような状況に陥ることは想像に難くありません。

高齢化が進む日本の場合、商業の撤退の結果現れてくるのが「買い物難民」です。この言葉がマスコミに登場するようになってから、どのくらい経つでしょうか。限界集落化が進む中、商業施設が撤退し、日常の買い物が困難に落ちいっている地域は次第に増加しています。農林水産省による全国市町村へのアンケート調査では、1,245市町村中、8割以上が何らかの形で対策が必要と回答しています。(農林水産省『 「食料品アクセス問題」に関する全国市町村アンケート調査結果』平成29年3月)

「商業」という機能は、人々が生活を送っていく上での基本機能でもあり、この問題に対して地方行政は真摯に取り組まなくてはなりません。それを、「これはあくまで民間事業者の問題だから」と放置するのは、電気や水道が止まってしまっても無視するのと全く同義ではないでしょうか。

日本に現在のような流通網が整備される以前、「公設市場」という名の市場があったことを知る人は、今では数少ないでしょう。今でも牧瀬市場など沖縄の一部に残っていますが、これは元々、まだ日本に流通網が整備されていなかった戦前時代、流通機能の向上を目的に行政が用意したものでした。市場原理のメカニズムに乗りづらい機能を補完、補填するのが行政の役割であるとするならば、民間商業の展開できない機能を補うのは行政の役割です。その意味において、行政は積極的に買い物難民問題に介入すべきであろうと考えます。

現在、行われている方法論は大きく2つあります。一つは買い物が出来る「買い場」までの輸送手段を確保すること。現在、多くの自治体が買い物難民対策として採用している「コミュニティバスや乗り合いタクシーによる支援」がこれにあたります。もうひとつは、「移動販売車や御用聞き」といった買い物機能を提供するといった方法です。しかし、これらの手段はいわば対処療法的な手法であり、本来は地域の商業機能を崩壊させないために、市町村の中心機能をいかに維持、担保するかということが重要なのではないでしょうか。

商業機能の代替を「公共性」で担保

さて、先に述べたデッドモール化を、防ぐための一つの事例が先日のウォール・ストリートジャーナルで紹介されていました(『未来のショッピングモールは小売店なし』

この記事によると、ショッピングモールの核テナントが撤退した跡地に、小売業ではなく、企業のオフィスや教会、営利目的の学校などに貸すケースが増えてきているといいます。それだけでなく、モールをライフスタイル・センターと呼ばれるレストラン、オフィス、住居が混在する街に変えてしまうケースも広がっているそうです。屋根で覆われたモールの周りに大型店や商店を配置するという金太郎飴的な商業施設開発は、すでに半世紀を過ぎ耐用年数が次第に期限切れを迎えつつあるのです。

「ショッピングモール」から「パブリックモール」の時代へ

さて、この米国のケースから得られるヒントは、「商業」を「商業機能の集積」だけに留めておくことなく、「様々な機能の集合体として再編成すべき」という示唆でしょう。

実は、このようなケースは米国だけでなくすでに日本国内においてもいくつかの事例が現れてきています。例えば、かつてダイエーが入居していた弘前駅前の商業施設「ヒロロ」(旧「ジョッパル」では、3階に弘前市の行政フロア「ヒロロスクエア」が入居し、行政窓口、市民生活センター、児童センター、就労支援センター、高齢者健康施設、イベントスクエアなどが、他層の商業施設と共に展開されています。また埼玉県桶川市駅前のショッピングセンター「パトリア」桶川店の三階には市立図書館と大型書店(丸善ジュンク堂)が入居し、元々全フロアを借りていた東武ストアの一部撤退を補完しています。

また日本における大手企業ショッピングモールにおいても、単に小売店舗を並べるだけでなく各種診療所を併設し、メディカルモール化するケースや、デイサービスやフィットネススタジオを併設するケースが増えて来ています。

近年、図書館は地域再生の核施設として導入されるケースも目立ってきており、岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」は都市と農村の新しい結びつきを目指した施設開発の事例で、庁舎、スポーツ施設、商業施設、図書館などが複合的に組み合わされており、賑わい性を創出しています。このように商業施設再生のプロセスで、施設内にさまざまな行政、市民サービス機能を組み込もうとする試みは、地域が弱体化していく中で、小売を中心とした「ショッピングモール」単独で成立することを困難とし「パブリックモール」化せざるを得ない現象を象徴的に示していると言えないでしょうか。

人口減少が続く高齢社会の中では、従来の民間、行政といった事業者の枠や立場を超えて、地域ぐるみ総がかりで住民の生活インフラを守るための努力・方策がなされていくべき時代となっているという認識が必要でしょう。