コロナ禍で観光客がめっきり減り、観光列車にも都会から乗りに来るお客様がここ1年半ほどめっきり減ってしまいました。

鉄道会社では手をこまねいて見ているわけにはいきません。

そこで、沿線の地元に住んでいる人たちに向けて「観光列車に乗りませんか?」というキャンペーンをここ1年ほど実施しています。

実際問題として都会から観光客が来ないということは、地元の皆さんも都会へ行かれないということで、本当ならばお休みの時には皆さん東京や大阪に遊びに行くのでしょうけど、今はそれができません。

だったら、観光客が来ない観光列車にどこへも行かれない地元の皆様方にご乗車いただこうと、えちごトキめきリゾート列車「雪月花」をはじめ、地元の皆様方に特別価格でお乗りいただこうと各種観光列車を走らせてみました。

▲今年の春に運転した上越市民限定のえちごトキめきリゾート「雪月花」(写真提供 佐藤大悟氏)

こちらは夏休み中に運転された地元糸魚川市民親子限定の雪月花「親子ツアー号」です。

こうやってインバウンドや都会からのお客様がいなくなってしまったリゾート列車に地元の皆様方に乗っていただくと、面白いことがわかりました。

皆さん口を揃えて、「列車に乗って景色を眺めると、いつも見ている地元の景色が違って見える。」と言われるのです。

やはりそうか。

筆者はそう思いました。

実は筆者も以前から同じ区間を車で走るのと列車で走るのとでは景色の見え方が違うと感じておりまして、不思議に思っていたのですが、地元の皆様方もいつも見慣れているはずの街並みなどが、いつもとは違って見えると感じられているのです。

地方都市では地元の皆様方はなかなか鉄道に乗る機会がありません。

ふだんはどこへ行くのも車が基本です。

子供たちも列車に乗ったことがない子が多くいます。

ではなぜ、ふだん乗らない列車に乗ると、いつもの景色が違って見えるのでしょうか。

もちろんこういう窓の大きな観光列車に乗って、おいしいお料理を食べたりすると気分も高まりますから、自己暗示のようなところもあるかもしれませんし、列車の窓の位置は車に比べて少し高いところにありますから、そういうこともあるかもしれません。

車の場合は運転者も助手席の人も前を向いていますが、列車は基本的には左右の景色を見ることになりますから、そういう違いもあるでしょう。

でも、筆者は以前より車と列車で見える景色の決定的な違いというのがあると考えているのです。

それは、車では町の表側を見るのですが、列車の場合は町の裏側を見ることが多いからです。

建物というのは基本的には道路に面して立っています。家もお店も、玄関は道路に向いています。線路に向いて家やお店の玄関があるということはありませんね。

これが決定的な違いなのです。

車で道路を走っていると、町並みがすべて表側なのですが、線路を列車で走っていると町並みの裏側を通るのです。

だから、いつもの知ってる町でも景色が違って見える。

これが筆者の答えです。

1977年 都電荒川線 撮影:青森恒憲氏

この写真は今から40年ほど前に撮影された豊島区内を走る都電です。

このように列車の車窓風景は絵になると言いますか、こういうところから旅人は旅情を感じるものなのだと思います。

今でも神奈川県の江ノ電などは民家の裏庭や軒先をかすめるようにして走っていますね。首都圏でも高架化や地下化されていない私鉄の電車などでは町の裏側を抜けて走ります。

そして町の裏側にはその土地土地の人々の生活がある。

列車の旅の醍醐味というのは、通り過ぎるほんの一瞬ではありますが、人々の生活臭を感じることができるというのも大きな要因なのではないでしょうか。

コロナがまだまだ油断できない状況のようです。

なかなか遠くへ行くことはできませんが、皆様、お休みの日にはどうぞ地元の鉄道に乗られてみてはいかがでしょうか。

ふだん見慣れている当たり前の景色が違って見えるかもしれません。

そういうところも昨今言われるマイクロツーリズムの面白さなのではないでしょうか。

※本文中に使用した写真は特におことわりがあるものを除き、筆者が撮影したものです。