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新潟県の直江津で、地元の鉄道を熱心に勉強し、キラキラ輝く瞳の小学生に出会ったトキめき体験談。

鳥塚亮えちごトキめき鉄道代表取締役社長。元いすみ鉄道社長。
学校で1年間かけて地元の鉄道を研究した直江津小学校の5年生のみなさん。

新潟県の直江津は北陸本線と信越本線が交わる交通の要衝として長年にわたって栄えた町です。

その歴史は古く、1886年(明治19年)の開業にさかのぼり、130年以上にわたって地域はもちろんのこと、国鉄の重要幹線として日本全体の発展に寄与してきた町です。

ところが、北陸新幹線の開通で直江津駅は幹線のルートから外れ、それまで頻繁に走っていた特急列車が減り、どことなく寂しくなったという印象を持たれる方も多いのではないでしょうか。

交通には大きく2つの役割があります。

1つは、地域輸送。

これは通勤通学といった地域の足としての役割です。

もう1つは都市間輸送。

東京ー大阪や東京ー新潟といった都市間を結ぶ役割です。

北陸新幹線が開業して大きく変わったのがこの都市間輸送の役割。

東京から富山、金沢方面へのお客様が、それまでは越後湯沢乗換で直江津を経由していたものが、北陸新幹線で直通するようになり、都市間輸送としてのこのルートの役割は終わったと言われるようになりました。

それとともに、地域の人々も東京方面へ行く時にはそれまでのように直江津駅ではなくて、北陸新幹線の上越妙高駅を利用するようになりましたので、直江津駅は何となく寂しくなった印象があるようです。

でも、交通のもう1つの役割である地域輸送は以前と変わらずに存在するわけで、その日々の地域輸送を担うのが新幹線開業後に今までの北陸本線、信越本線区間の旅客列車を運行する新潟県の第3セクター鉄道の「えちごトキめき鉄道」です。

そして、そのえちごトキめき鉄道(以下トキ鉄)の本社がある直江津駅にほど近い上越市立直江津小学校の子供たちが、1年間にわたり地元の鉄道であるトキ鉄を調べ、研究した成果を発表するということで、2月28日に筆者は直江津小学校を訪ねました。

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校舎の中に案内されるとさっそく目に飛び込んできたのはこういうポスター。

トキ鉄のイベントに合わせて子供たちが製作した力作ぞろいです。

これは直江津小学校の5年生の皆様方の作品。

実は、前述の通り、北陸新幹線の開業後、直江津駅がなんだかさみしくなってきたということで、子供たちが駅頭で町行く人たちにインタビューして、アンケートを取ったそうなんです。その結果、町の人たちは直江津駅に対して、「あまり利用しない」とか「有名だとは思わない」という答えが多く、これではいけないと、5年生全員でほぼ1年間かけて総合的な学習の時間を利用して自分たちの地元の駅、地元の鉄道を調べてみようということになったそうです。

そして、筆者が訪れた日は、その1年間の成果を発表する日でありました。

最初のアンケートではネガティブな反応が多かったようです。
最初のアンケートではネガティブな反応が多かったようです。

校外学習の一環として、トキ鉄を訪ね、駅長さんや職員の皆さんからたくさんのことを教えていただいたことや、自分たちの体験や、わかったこと、新しい考えなどが教室中に所狭しと掲示されていました。

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直江津は新潟県の鉄道発祥の地ということで、SLについても調べてあります。車両も細かく描けていますね。
直江津は新潟県の鉄道発祥の地ということで、SLについても調べてあります。車両も細かく描けていますね。
トキ鉄には「はねうまライン」と「ひすいライン」がありますが、子供たちが作った両線の地図です。
トキ鉄には「はねうまライン」と「ひすいライン」がありますが、子供たちが作った両線の地図です。
そしてトキ鉄の看板列車「雪月花」についても書かれています。
そしてトキ鉄の看板列車「雪月花」についても書かれています。
鉄道のまち 直江津から発信
鉄道のまち 直江津から発信
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壁には大きく「鉄道のまち 直江津から 発信」と書かれて、詳細な研究発表が掲示されています。

これはなかなかすごいことですね。

直江津小学校の教室の中だけではもったいないと思いまして、本日の記事にしてみました。

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直江津小学校の5年生の皆さんです。

どうです、みんな目がキラキラ輝いているでしょう。

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ご案内いただきました吉田校長先生(右)、須田亮子先生(中央)、小池教頭先生(左)です。

とても素晴らしい教育で感動いたしました。

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はねうまライン(旧信越本線区間)にはスイッチバックの二本木駅があります。

山を越える急勾配区間に駅を設けるために、一旦平らな部分に引き上げて、行ったり来たりしながら発着する全国でも珍しい駅です。

その二本木駅についてもきちんと調べてありますね。

二本木駅を発着するトキ鉄の列車。
二本木駅を発着するトキ鉄の列車。

そんな5年生の皆様方に「何が一番好きですか?」と聞いてみたところ、皆さん口をそろえて「雪月花!」と言いましたので、写真を見せて、「私は乗ったことがありますよ。」と申し上げると、「え~、いいなあ。」と言われました。

えちごトキめき鉄道の観光列車「雪月花」
えちごトキめき鉄道の観光列車「雪月花」
おいしいものをいただきながら、ゆったりと汽車旅が楽しめる観光専用車両です。
おいしいものをいただきながら、ゆったりと汽車旅が楽しめる観光専用車両です。

子供たちの御自慢の車両がこの「雪月花」。

自分たちの地域を走る自分たちの鉄道。その看板列車の「雪月花」を誇りに思う子どもたちがいることに筆者は感動しました。

帰りがけに直江津駅に立ちって、えちごトキめき鉄道の嶋津忠裕社長さんにお話をお伺いしました。

「トキ鉄は今、地域の皆様方が積極的に係わってくれるようになりました。観光列車が走ることでおもてなしを積極的にやっていただいております。子供たちにも体験乗車や車両基地の見学を含め、いろいろ関心を持っていただくように職員一同努力しています。」

とのことでした。

直江津小学校の取り組みの様子を掲載するトキ鉄のホームページ

直江津駅・二本木駅で小学生の見学相次ぐ!

▲えちごトキめき鉄道のHPは「お知らせ欄」が大変こまめに更新されていて、読んでいても面白いですね。

地域鉄道の情報発信は、今の時代はとても大切なものですから。

地域の人たちが地域の鉄道に関心を持って積極的に係わる。

子供たちがしっかりと地域の鉄道を勉強することで、鉄道を大事に思ってくれる。

このような地道な活動が、地域の鉄道を支え、未来を作って行くとあらためて感じることができた直江津小学校の取り組みでした。

ご協力いただきました直江津小学校の皆様、ありがとうございました。

これは、ローカルニュースではなく、全国ニュースですね。

全国の皆様、ぜひ地元の鉄道をもう一度振り返ってみてください。

たくさんの宝物が埋もれているのにお気づきになられると思いますよ。

筆者のNPOはそういう宝探しのお手伝いをさせていただいております。

えちごトキめき鉄道 雪月花公式サイト

※文中の写真はすべて筆者撮影です。

えちごトキめき鉄道代表取締役社長。元いすみ鉄道社長。

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長に就任。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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