【ローカル鉄道讃歌 5】由利高原鉄道(秋田県)に見る応援団の実力

由利高原鉄道の看板列車「なかよしこよし号」

秋田県の由利本荘市を走る由利高原鉄道は、旧国鉄の矢島線を引き継いだ第3セクター鉄道で、国鉄からJRになった時を同じくして開業しましたが、ご多分にもれず開業以来30年以上厳しい経営が続いています。

この由利高原鉄道で活躍するのが公募社長の春田啓郎社長さん。東京の大手旅行会社を退職後、8年前に秋田に単身で乗り込んで経営改善に当たっています。

その由利高原鉄道の矢島駅が、国鉄時代の開業から80周年を迎え、記念式典が開かれるということで、先月、由利本荘市へ取材へ訪ねました。

記念式典でご挨拶される春田社長さんです。
記念式典でご挨拶される春田社長さんです。
地元の酒蔵が特製ラベルの日本酒をご提供。
地元の酒蔵が特製ラベルの日本酒をご提供。

地元の人たちが大勢集まって開催された矢島駅80周年記念式典で、地元の酒造メーカーさんの80周年記念ラベルのお酒が出されました。

お酒のおいしい秋田ならではの地域密着型鉄道ですね。

ところで、その記念式典の会場入口で気付いたのですが、こんなお花が飾られていました。

由利高原鉄道応援団からのお祝いのお花です。
由利高原鉄道応援団からのお祝いのお花です。

由利高原鉄道応援団の方々から大きなお花が贈られていました。

実はこの由利高原鉄道応援団というのは、秋田県の沿線地域にあるのではなくて、東京や大阪、名古屋などで有志の方々が結成された応援団。ふだん都会で働く皆さん方が、秋田県のローカル線を応援するために都会で告知活動を行っているもので、地元の人たちはほとんどその存在すら知らない状況でしたから、このお祝いのお花を見て、「おや、応援団って誰がやっているんだろうか。」と皆さん不思議そうな顔をしていました。

もちろん、このような記念式典が開かれるぐらいですから、地元の皆様方も由利高原鉄道をしっかり応援しているのは当然ですが、東京や大阪にも自分の地域の鉄道を応援してくれている人たちがいるということは、なかなか気づかないことだと思います。

では、応援団は東京や大阪でどんな活動をしているのかというと、イベントなどで様々な広報活動や、イベントのお手伝いなどで、グッズなどの物販売上にも大きく貢献しているようです。

都内日比谷公園でのイベントに集結した皆さん。チームカラーのおそろいの赤いTシャツが鮮やかです。(FB)
都内日比谷公園でのイベントに集結した皆さん。チームカラーのおそろいの赤いTシャツが鮮やかです。(FB)
大都会のステージの上で由利高原鉄道のPR(FB)
大都会のステージの上で由利高原鉄道のPR(FB)
大阪のイベントでも春田社長と一緒にステージへ上がりPR活動(FB)
大阪のイベントでも春田社長と一緒にステージへ上がりPR活動(FB)
物販コーナーではいすみ鉄道コーナーのお手伝いもしていただきました。(FB)
物販コーナーではいすみ鉄道コーナーのお手伝いもしていただきました。(FB)
こちらは福岡県の平成筑豊鉄道さんのイベント会場。秋田のローカル線が福岡まで来られるのも応援団あってのことです。(FB)
こちらは福岡県の平成筑豊鉄道さんのイベント会場。秋田のローカル線が福岡まで来られるのも応援団あってのことです。(FB)
イベントの後は春田社長さんを囲んでみんなで打ち上げ。楽しいひと時です。(FB)
イベントの後は春田社長さんを囲んでみんなで打ち上げ。楽しいひと時です。(FB)

このように、東京や大阪にお住いの方々が、縁もゆかりもないような遠い秋田のローカル線を応援するということが実際に起きているんですね。田舎のローカル鉄道会社は鉄道以外の物品販売が一つの収入源になっていますが、交通費や人件費を掛けて出かけていく余裕がありません。そんなとき、応援団の皆様方が大都市圏にいらっしゃるということはありがたい力になるでしょう。

応援団の皆様方も、ふだんの都会での生活の中で、お米もお酒ももちろん秋田贔屓。飲むのも食べるのも「秋田」を第一選択する皆さん方が都会で秋田のPRをする。ローカル鉄道ばかりではなく秋田県の沿線地域にとっても実にありがたい存在です。

これがローカル線が持つ地域おこしの底力と言えましょう。

由利高原鉄道の鮎川駅をご案内いただいた春田社長さん。
由利高原鉄道の鮎川駅をご案内いただいた春田社長さん。

80周年記念式典の翌日、春田社長さんに面白いところを案内していただきました。

廃校になった旧鮎川小学校を利用した「鳥海山木のおもちゃ美術館」です。
廃校になった旧鮎川小学校を利用した「鳥海山木のおもちゃ美術館」です。
木造校舎をそのまま利用した懐かしい雰囲気が広がります。
木造校舎をそのまま利用した懐かしい雰囲気が広がります。
木のおもちゃ美術館の猪俣健館長さん(左から2人目)と職員の皆様。
木のおもちゃ美術館の猪俣健館長さん(左から2人目)と職員の皆様。

由利高原鉄道の線路のすぐそばにある廃校となった小学校の木造校舎を丸ごと利用した「鳥海山木のおもちゃ美術館」です。

鉄道と連携して地域を宣伝する観光施設で、オープンからわずか数か月で何万人もの観光客を集客するほどの人気です。

地元の皆様方も、一生懸命鉄道を応援する。

そして地域外の応援団の皆様方も、東京や大阪でローカル線を宣伝する。

この2つの力が合わさって、相乗効果を生んでいるのがここ由利高原鉄道というローカル線であり、その中心で求心力を発揮しているのが春田社長さんなのです。

木のおもちゃ美術館は由利高原鉄道の線路のすぐそばにあります。
木のおもちゃ美術館は由利高原鉄道の線路のすぐそばにあります。
美術館の横を走る「なかよしこよし号」。木のおもちゃ美術館のコンセプトを体験できる由利高原鉄道の看板列車です。
美術館の横を走る「なかよしこよし号」。木のおもちゃ美術館のコンセプトを体験できる由利高原鉄道の看板列車です。
その線路をよく見てみると、一部の枕木がコンクリート製に入れ替えられているのがわかります。
その線路をよく見てみると、一部の枕木がコンクリート製に入れ替えられているのがわかります。

ところで、この木のおもちゃ美術館のすぐ横を、美術館と同じコンセプトで登場した「なかよしこよし号」が走ります。

この列車もたくさんのお客様にご好評をいただいていますが、それだけではありません。

線路をよく見てみると、ところどころにコンクリート製の枕木が入れられています。

コンクリート製の枕木は木製枕木に比べると高価で、経営の厳しいローカル鉄道会社にとってはなかなか入れられるものではありませんが、傷んだ枕木を交換するときに、数メートルに1本ずつ入れることで線路の狂いが無くなり安全性が改善されます。半年近く線路が雪に閉ざされる雪国の鉄道ではこういうこともきちんとやって行く必要がありますが、厳しい経営の中、春田社長さんはしっかりと安全対策も継続しています。これも、予算化していただける地域自治体の皆様方のご理解があってのことですから、由利高原鉄道というローカル鉄道が如何に皆様から愛されているかということがご理解いただけると思います。

鉄道会社というのは、こういう不思議な力がありますから、地域が上手に使うことで、地域のブランド化も可能になると筆者は確信しています。

皆様も、ぜひ、由利高原鉄道をご訪問ください。これからの季節はお酒がおいしくなりますよ。

※取材日 平成30年10月21・22日

写真は(FB)とあるものは春田社長さんのFacebookから。お断りのないものは筆者撮影。