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ANA、エアバスA380のホノルル線就航日が5月24日に。マイル特典利用と受け入れ体制強化で差別化へ

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
ANAは5月24日からエアバスA380を成田~ホノルル線に投入する(筆者撮影)

 ANA(全日本空輸)は、11月27日に東京都内で記者発表会を開催し、成田~ホノルル線に就航予定の総2階建て飛行機エアバスA380型機(以下A380)の就航日を来年5月24日にすることを発表した。来年5月24日~6月末までは週3往復(火・金・日)で運航を開始し、2号機目が投入される来年7月1日以降は週10往復がA380での運航となる。

座席数は520。エコノミークラスには日本初のカウチシートを導入

 座席数は全部で520席。ファーストクラス8席、ビジネスクラス56席、プレミアムエコノミー73席、エコノミークラス383席となっており、エコノミークラスには1階席後方に国内航空会社では初めてカウチシート「ANA COUCHii(ANAカウチ)」を60席導入する。カウチシートは、通常足下の部分のレッグレストを上げることで、窓側席であれば3席、中央席であれば4席をベッドのように利用できるシートとなっている。料金については、通常のエコノミークラス運賃に追加料金を支払う形で利用となる。現在、5月24日から投入される初号機は、ドイツのハンブルクにあるエアバス社の工場で塗装作業を行っており、12月中旬に完了する予定となっている。

最終的に3機体制となるANAのエアバスA380型機。空飛ぶウミガメをイメージした「FLYING HONU」と呼ばれる特別塗装機で運航する(特記以外は筆者撮影)
最終的に3機体制となるANAのエアバスA380型機。空飛ぶウミガメをイメージした「FLYING HONU」と呼ばれる特別塗装機で運航する(特記以外は筆者撮影)
日本の航空会社では初導入となるカウチシート「ANA COUCHii(ANAカウチ)」
日本の航空会社では初導入となるカウチシート「ANA COUCHii(ANAカウチ)」
シーツも敷いてもらえるので目的地まで熟睡できる
シーツも敷いてもらえるので目的地まで熟睡できる
綾瀬はるかさんもカウチシートを体験した
綾瀬はるかさんもカウチシートを体験した

特典航空券が取りやすくなる

 今回の発表会を通じ、ANAが強く意識しているのは「マイレージを使った特典利用」と「ホノルルでの受け入れ体制強化」の2つだと思う。この点を強化することでハワイ線では先行するJAL(日本航空)やJALのコードシェア便やマイル提携のパートナーであるハワイアン航空との差別化を進める。

 「マイレージを使った特典利用」については、これまでもANAの平子祐志社長は、筆者とのインタビューの中でも、A380の運航開始を機にハワイ線の特典航空券の提供座席数を増やすことを明言していたが、今回の発表会の中で、提供座席数を拡大すると共に、従来は特典航空券の対象外であったプレミアムエコノミーも特典航空券で利用できるように改定することを明らかにした。平子社長は「現在の座席数の2倍になることで、ANAマイレージクラブ会員のお客様が特典航空券で利用できる機会が高まります」とアピールした。

発表会で挨拶するANA平子祐志社長
発表会で挨拶するANA平子祐志社長

 レギュラーシーズン(通常期)においては、エコノミークラス往復4万マイル、プレミアムエコノミー往復5万8000マイル、ビジネスクラス往復6万5000マイルが必要マイル数となる。また今回の発表では、マイルの活用が飛行機だけに留まらないことが明らかになった。

フルフラットになるビジネスクラスシートは往復6万5000マイル
フルフラットになるビジネスクラスシートは往復6万5000マイル
プレミアムエコノミーは過去最大の73席を設置する。マイル利用では往復5万8000マイル
プレミアムエコノミーは過去最大の73席を設置する。マイル利用では往復5万8000マイル

ハワイ滞在中のホテル、レンタカー、現地ツアー、お土産にもマイルが使える

 日本~ハワイへの特典航空券の提供座席数の増加だけでなく、ハワイ滞在中に必要となるホテルやレンタカー、更にはオプショナルツアー、免税店やショップでの買い物でもマイルを活用できるようにする。専用サイト「ANA HAWAii for ANA」を開設することで、マイルを使った滞在プランを紹介していくことになるが、例えばオプショナルツアーでは、現地オプショナルツアー専用予約サイトとして近年取り扱いが増えている「VELTRA」と連携することでマイルを使ったオプショナルツアーに申し込みができるほか、空港送迎、人気レストランのコースメニュー、更には免税店「Tギャラリア ハワイ by DFS」や日本人に人気のある「ABC STORES HAWAII」での買い物に使えるカード式のショッピング商品券への交換も可能となる。

 マイルを使ったアクティビティやレストラン、ショッピング商品券などはANAグループの旅行会社であるANAセールスが展開するカラカウア通り沿いのワイキキ・ショッピングプラザ内の「マハロラウンジ」で直接申し込みすることもできる。

ANAグループの旅行会社であるANAセールスがワイキキに展開する「マハロラウンジ」
ANAグループの旅行会社であるANAセールスがワイキキに展開する「マハロラウンジ」

 今回のイベントに登壇した女優の綾瀬はるかさんは「昔からマイルを貯めており、マイルを使って旅行とかさせてもらってます。マイラーとして貯めてハワイへ行くことを目標とします」と話すなど、ハワイへの特典航空券を目標にマイルを貯めるマイラーも増えそうだ。

昔からマイルをしっかり貯めている女優の綾瀬はるかさん
昔からマイルをしっかり貯めている女優の綾瀬はるかさん

アラモアナセンターへワイキキからANA便利用者向けの無料バスを運行

 もう1つの強化部分は「ホノルルにおける受け入れ体制の強化」だ。その中でもインパクトがあったのが、ANA便でハワイに到着したANAマイレージクラブ会員を対象にワイキキ中心部にあるTギャラリアから大型ショッピングモールとして日本人に大人気のアラモアナセンターまでの区間において無料の電気バス「ANAエクスプレスバス」(座席は31席だが立ち乗りも可能)を運行することだ。これまでもトロリーや路線バスなどでもアクセスできるが、2地点をダイレクトに結ぶことによるメリットは大きい。所要時間は片道12分で、運行間隔も15分間隔であることで利便性が高い。

 ANAマイレージクラブは年会費も不要なので、入会してANA便を利用するだけで無料で使えることはメリットがあるだろう。気軽に利用できることから、他社利用との差別化にもなる。

ワイキキのDFSギャラリアからアラモアナセンターまで、電気バス「ANAエクスプレスバス」をANA便利用者向けに運行を開始する(ANA提供画像)
ワイキキのDFSギャラリアからアラモアナセンターまで、電気バス「ANAエクスプレスバス」をANA便利用者向けに運行を開始する(ANA提供画像)
日本人に人気のアラモアナセンター
日本人に人気のアラモアナセンター

 更にこれまで以上に特典航空券利用者が増えることを想定し、ANAセールスでは特典航空券を含むANAのホノルル線利用者を対象に、ワイキキのホテルへの送迎とホテルをセットした「ANAホテル&送迎パック」の販売を強化する。現地のツアーデスクでのサポートやオプショナルツアーの充実などにおいて、OTA(オンライン旅行会社)で販売されている飛行機とホテルをセットしたダイナミックパッケージとの差別化を図る。クレジットカードや現金に加えて、マイルでの支払いも可能とする。

ワイキキビーチ
ワイキキビーチ

勝負は来年の夏休み。特典航空券で希望日にどれだけ取れるのかに注目

 出張や日常のショッピングでマイルを貯めて、貯まったマイルでハワイへ家族旅行。現状では特典航空券の予約において、希望する便が満席でほとんど取れないが、A380の導入を機に、まずは乗りたいと思っている日にどの程度の確率で特典航空券が取れるのかが注目される。当初は週3往復のみのA380投入となるが、7月以降は週10往復(その他の便は現在保有する機材で運航※A380運航便を含めて成田~ホノルル線、羽田~ホノルル線を合わせて1日3往復)となることから、夏休みに乗れる可能性は高いだろう。

 希望する便が取れる確率が高くなれば当然、これまで以上にANAにマイルを貯めたい人がより増えることになるだろう。逆にマイルが取れないとマイレージ会員の不満にも繋がることになる。とはいえ、首都圏からハワイへ出かけやすくなることだけは間違いなさそうだ。

最終的に3機のA380がハワイへ飛ぶことになる
最終的に3機のA380がハワイへ飛ぶことになる
航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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