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夏の国内線、沖縄・札幌など24時~朝6時までに発着する夏季限定深夜早朝便の可能性と課題

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
深夜1時半過ぎの那覇空港。深夜便利用者が多く見られる(筆者撮影、2018年7月)

 夏休み期間中、旅行客や帰省客を中心に国内線の利用者は年間で最も多いシーズンとなる。各航空会社では、通常の便に加えて臨時便や期間限定増便を設定し、少しでも席を取りやすくする工夫をしている。今年の夏は、国内線において24時~朝6時までに発着する深夜・早朝便が数多く設定されている。

スカイマークは3路線(羽田~那覇、中部~那覇、羽田~新千歳)で深夜便

 その中でも深夜便において特に積極的なのがスカイマーク。羽田発着便では、7月14日~9月30日までの月曜日以外の毎日、羽田空港を深夜2時40分に出発して那覇空港に朝5時15分、那覇空港を深夜2時40分に出発して羽田空港に朝4時55分に到着する便を運航する。

 更に今年からは新たに7月14日~10月27日までの期間、新千歳空港を深夜0時10分に出発して羽田空港に深夜2時に到着する便と、更に新千歳空港を深夜1時10分に出発して羽田空港に深夜2時50分に到着する便を運航する(一部運航しない日もある)。それ以外でも中部~那覇線についても深夜便を運航するなど深夜便に積極的だ。

深夜便の運航に積極的なスカイマーク
深夜便の運航に積極的なスカイマーク

ANAの深夜早朝便「ギャラクシーフライト」は今年で5年目に突入

 またANA(全日本空輸)でも、2014年から夏休み期間中に羽田~那覇線の深夜早朝便として「ギャラクシーフライト」を運航しており、毎年利用するリピーターも多い便となっている。今年は、7月13日~8月31日までの期間(一部運航しない日もある)、羽田空港を夜22時55分に出発して那覇空港に深夜1時35分、那覇空港を深夜3時35分に出発して羽田空港に朝5時55分に到着する。

 那覇空港には深夜の到着になるが、空港ではタクシーが待っているので、那覇市内のホテルへの移動には特段問題なく、何よりも仕事を終えてからでも十分に間に合うのは便利だ。

今年で5年目を迎えたANAの羽田~那覇線の深夜便「ギャラクシーフライト」
今年で5年目を迎えたANAの羽田~那覇線の深夜便「ギャラクシーフライト」
深夜の那覇空港はタクシーが並ぶ
深夜の那覇空港はタクシーが並ぶ

JALは早朝便を羽田~那覇線で運航

 JAL(日本航空)は、深夜便ではなく早朝便を設定する。羽田空港を朝5時55分に出発して那覇空港に朝8時20分に到着する便を8月8日~10月26日までの間、8月及び10月の水曜・金曜を中心に運航する。那覇空港には朝8時20分に到着することから、お昼前には目的地となるビーチリゾートにも到着できる。

特にスカイマークの新千歳を深夜1時10分発は安い

 深夜早朝便の最大のメリットは何よりも航空券の安さにある。夏休み期間中は航空券の価格は上昇するが、深夜便を上手に活用することで割安に旅行できるというメリットがある。スカイマークの新千歳を深夜0時台・1時台に出発する羽田行きでは多くの日で片道8890円での購入が可能で、LCC(格安航空会社)の成田~新千歳線よりも安い。

 羽田空港に出発時に駐車しておくか、もしくはタクシーで移動することになるが、日中の便の利用に比べると半額もしくは3分の1程度のお金で済む。また、ANAの羽田~那覇線の「ギャラクシーフライト」でも日中のフライトに比べると割安になっている。機内では、若者だけではなく家族連れも目立っていたのが印象的だった。

 JALの羽田発那覇行きの早朝便も7月30日に検索したところ、お盆の8月8日の朝5時55分発で片道2万6990円だったが、日中便と比べると割安な設定となっており、5時55分発であれば、浜松町を朝4時59分発の空港快速に乗れば羽田空港第1ビル駅に5時15分に着くので十分に間に合う。加えて、朝4時台に羽田空港国際線ターミナルに到着する深夜早朝バスが都心部の主要ターミナル及び横浜・川崎などから出ているおり、タクシーや自家用車以外の交通機関でも間に合うので、航空券が安く買えるのであれば利用するメリットはあるだろう。

深夜の那覇空港の到着案内版
深夜の那覇空港の到着案内版

羽田空港は24時間オープンの国際線ターミナルへの移動手段がない

 運賃が安いというメリットと時間を効率的に使うことがある一方、深夜早朝便の課題は多い。最大の問題はターミナルの閉館だ。深夜便で羽田空港や那覇空港に到着した場合にはターミナル内で朝まで過ごすことはできない。羽田空港では24時間開館している国際線ターミナルへ移動する方法もあるが、国内線の第2ターミナルからは深夜0時50分、第1ターミナルからは深夜0時55分が最終となり、その後は朝5時まで連絡バスがない。

 国際線ターミナルへ移動するのにもタクシーを使うしか方法がなく、深夜早朝便が増えている中で、国内線ターミナルの一部を24時間開放するか、1時間に1本程度でも国内線と国際線のターミナル間バスを運行してもいいだろう。

深夜時間帯を上手に使いこなすスターフライヤー

 地上交通の課題も多い中、深夜早朝便を既に確立しているのが北九州空港を拠点とするスターフライヤー。年間を通じて羽田~北九州線において深夜早朝便を運航している。羽田空港を22時55分に出発して北九州空港に深夜0時35分、北九州空港を朝5時30分に出発して羽田空港に朝7時に到着する便が運航されている。北九州空港へは、福岡県内を中心に山口県の下関や大分県北部から自家用車でアクセスする人が多いほか、両便に接続する形で福岡駅や天神などからもバスでアクセスできるようにしている。

 羽田から深夜0時35分に北九州空港に到着した後、0時45分発のバスを利用することで、博多駅前に深夜2時18分、天神に深夜2時30分に到着できるほか、朝5時30分の羽田行き出発に合わせて天神を深夜3時20分、博多駅を3時30分に出発するバスを運行することで、空港に滞留せずにアクセスできる工夫がされている。

深夜の北九州空港ターミナルビル
深夜の北九州空港ターミナルビル
北九州空港に駐機するスターフライヤー機
北九州空港に駐機するスターフライヤー機

24時間空港を最大限活用すべき

 羽田空港や那覇空港、関西国際空港、中部国際空港(セントレア)、新千歳空港など24時間空港もしくはそれに準ずる形で深夜早朝便が可能な空港においては、深夜早朝の公共交通機関や深夜も滞在しやすい環境の整備が必要である。この時間帯は新幹線が運行できないことから飛行機が優位になる時間帯でもあるり、時間を最大限活用できる深夜早朝便を繁忙期だけでなく年間を通じて運航して欲しいところだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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