14日に2日目が指し継がれた第62期お~いお茶杯王位戦七番勝負第2局は、藤井聡太王位(18)が挑戦者の豊島将之竜王(31)に102手で勝利し、シリーズ通算1勝1敗とした。

 角換わり相早繰り銀という珍しい戦法に進み、一手一手が非常に難しく互いに長考を繰り返す将棋となった。

 中盤までは豊島竜王がペースを握っていたが、終盤に入って藤井王位が逆転。最後は長手数の即詰みに討ち取った。

相早繰り銀

 先手番の豊島竜王が選択した戦法は得意の角換わりだったが、「早繰り銀」という選択には意表を突かれた。

 豊島竜王は角換わりの中でも「腰掛け銀」を得意としており、「早繰り銀」はあまり指していないからだ。

 対する藤井王位は「早繰り銀」で対抗して、「相早繰り銀」という珍しい戦型となった。

 この「相早繰り銀」は公式戦での登場が少なく、経験を積みにくい。そしてこの形特有の手筋が多くあり、指し手の難易度が高く指しこなすのは大変とされる戦型だ。

 しかも互いに似た格好をしているだけに、差がついてしまうと取り返しがつかないケースが多くある。

 慎重を期して指していっても、気が付かないうちに地雷を踏んでしまう恐ろしい戦型なのだ。

 本局も互いに長考を重ねる、一手が重い展開となった。

 豊島竜王は「早繰り銀」でいけば「相早繰り銀」になると予想し、戦略を練って臨んできたようだった。

 対する藤井王位は「早繰り銀はあまり想定していなくて、手探りな感じでした」と局後に語っており、二人の準備に差があったように思う。

 中盤に入ったところで豊島竜王がうまい手筋を見せて、1日目の終了段階では豊島竜王がペースを握っていた。藤井王位としては何が悪いのか気づかないうちにリードを許してしまった感じだろう。

難解さが引き起こす疲労

 しかし2日目に入って藤井王位は崩れなかった。駒損ながら飛車を成って豊島玉に迫る。瞬間的に藤井玉も危ない形ながらギリギリで持ちこたえられるという確かな読みがあった。

 勝ちへの道筋が見つけられない中で豊島竜王が互いの玉への距離感を見誤る。

 そのスキをついた藤井王位が一気に即詰みまで持っていった。

 豊島竜王としては、形勢有利を自覚しながらも具体的な手順が見つけられないうちに自爆する展開になってしまった。豊島竜王ほどの強者がこういう負け方をするのは珍しい。

 要因の一つに藤井王位の粘り強さがあげられる。苦しいながら相手へプレッシャーをかける指しまわしはさすがだった。

 もう一つの要因として、超難解な将棋を考え続けたことで疲弊したことがあげられる。

 前述のように「相早繰り銀」は非常に難解な将棋であり、一手一手を慎重に指し継ぐ必要がある。

 そういう展開はプロといえども疲労が蓄積するものだ。

 悪くなってからの粘り強さにも定評のある豊島竜王だが、本局はポッキリと折れるような負け方となった。そこには2日間考え続けた疲労感が現れており、肉体的な疲労によって踏み止まる精神力も保てなかったように感じ取れた。

未来への道しるべに

 七番勝負は1勝1敗となり、五分の星となった。次局は間隔を開けず21・22日に兵庫県神戸市で行われる。

 この第3局を終えると第4局まで間が空く。

 両者は7月25日に開幕する第6期叡王戦五番勝負でも顔を合わせるので対戦は続くのだが、それでもこの七番勝負の流れは第3局である程度決まるだろう。

 そして、いつの時代でもトップ棋士の指す将棋は未来への道しるべとなる。

 本局の「相早繰り銀」のような一手の密度が濃く綱渡りのような将棋を正確に指しこなす人が勝ち残る時代が来るのだろう。

 実際、藤井王位を追う新鋭棋士達はこうした綱渡りのような将棋を指しこなし、先輩棋士から勝ち星を積み重ねている。

 若者達は時代の転換を嗅ぎ取っているのかもしれない。

 本局のような戦いがメインストリームとなる時代が早晩やってくるのか、一局を通じて筆者はそう感じた。