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27日、最終決戦!「将棋界の一番長い日」にA級残留を決めるのは誰か?

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 2月27日(木)に第78期A級順位戦最終9回戦一斉対局が行われる。

 ここまで全勝の渡辺明三冠(35)がすでに挑戦権を獲得しており、焦点は残留争いだ。

最終一斉対局

 最終戦の対戦カードは下記の表でもご確認いただきたい。

 全勝の渡辺三冠は三浦弘行九段(46)と、羽生善治九段(49)は佐藤康光九段(50)と対戦する。

 残留争いは、すでに久保利明九段(44)の降級が決まっており、あと1つの枠を下記3名で争う。

  • 木村一基王位(46)
  • 佐藤天彦九段(32)
  • 糸谷哲郎八段(31)
最終戦を迎える前のリーグ表
最終戦を迎える前のリーグ表

木村王位―広瀬八段

 木村王位は3人の中でリーグの順位が最も低いため、自身が負けると降級が決まってしまう。

 また、競争相手の佐藤(天)九段と糸谷八段がどちらも勝つとその時点で降級となる。

 対戦するのは広瀬章人八段(33)だ。

 木村王位は先々週の対局で詰みを逃して敗れるなど、タイトル獲得後は星が伸びていない。

 一方の広瀬八段は、先週の王将戦七番勝負第4局で渡辺三冠に競り勝ち、調子は上向きだ。

 木村王位にとって先手番でこの一戦に臨めるのは好材料といえよう。

 広瀬八段はタイトル戦が続いていることもあり、後手番の研究に不安を抱えているように見える。

 木村王位はタイトル獲得の原動力となった相掛かり戦法をぶつけると予想する。

 先手番の利を生かして主導権を握れるか。

残留を争う3名のリーグ表
残留を争う3名のリーグ表

久保九段ー糸谷八段

 糸谷八段は、自身が負けて木村王位が勝つと降級となる。

 対戦するのは久保九段だ。

 糸谷八段は現在4連敗中で、調子を落としている。

 対する久保九段は降級が決まっているものの、最近は調子を戻している印象だ。

 糸谷八段は後手番で苦戦が続いている。それだけにこの重要な一戦を先手番で迎えられるのは好材料だ。

 振り飛車党の久保九段がどんな作戦をぶつけるのか。来期へつなげるためにも、久保九段はいつもの粘り強い戦いを見せるだろう。

佐藤(天)九段―稲葉八段

 佐藤(天)九段は、自身が負けて木村王位と糸谷八段が勝つと降級となる。

 対戦するのは稲葉八段だ。

 この二人は23日に竜王戦1組ランキング戦で対戦し、稲葉八段が勝った。

 稲葉八段は同日放送されたNHK杯でも勝利しており、好調を維持している。

 一方、佐藤(天)九段は名人失冠以降なかなか調子が上がらない。

 直前の対戦は、佐藤(天)九段の先手で角換わり戦法に進んだ。

 稲葉八段は流行の兆しがある右玉を採用し、積極的な指しまわしで勝ち切った。

 今回、再び佐藤(天)九段の先手となる。前回とは趣向を変えて、矢倉戦法になると予想する。

残留争いの行方は

 順位の点で木村王位が不利なのは間違いない。

 佐藤(天)九段は自身が負けても、木村王位と糸谷八段のどちらかが負ければ残留が決まる。

 ただ、すんなりいかないのが順位戦だ。

 過去にも圧倒的に有利な立場の棋士が降級の憂き目にあったこともある。

 実際、勝つしかないのと、負けても他の結果次第で助かる、という状況では気持ちが全然違う。

 木村王位には勝つしかないと開き直れる有利さがある。

 今回の一斉対局は、9時に対局が開始される。

 そのため21時頃に佳境を迎え、全ての対局が終わるのは0時前後となりそうだ。

 最後までご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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