将棋界の世代論 ー「藤井聡太世代」は黄金世代となるのか?

当時16歳の藤井七段が黄金世代の阿部(光)六段とニコニコ超会議2019で共演(写真:森田直樹/アフロ)

 スポーツの世界、勝負の世界では「世代」によってくくられることが多い。

 筆者が好きということもあるが、サッカーの世界でよく聞く言葉だと思う。

 その世代の人数と活躍度合いから、黄金世代谷間世代、といった言い方をなされる。

10代棋士は藤井七段のみ

 藤井聡太七段(17)は現在、王将リーグでトップ棋士をむこうにまわし暫定トップに立っている。

 初めてのタイトル戦登場なるか、ファンの期待は高まるばかりだ。

 藤井七段の活躍をみていると、将棋界では10代の活躍が目立っているように感じるだろう。

 ところがプロ棋士で10代なのは17歳の藤井七段だけなのだ。藤井聡太世代のプロ棋士は藤井七段しかいない。

 藤井七段の同世代も今後プロ入りすることは間違いないが、その人数が増えていき黄金世代となるのだろうか?

黄金世代

 羽生善治九段(49)の同世代には森内俊之九段(49)、佐藤康光九段(50)など時代を彩ったプロが多くいて、人数自体も多い。将棋界で一番の黄金世代だ。

 広瀬章人竜王(32)の世代も、佐藤天彦九段(31)、中村太地七段(31)などタイトル経験者が名を連ね、人数も多い黄金世代だ。

 永瀬拓矢二冠(27)の世代も、菅井竜也七段(27)、斎藤慎太郎七段(26)、高見泰地七段(26)などこちらもタイトル経験者が名を連ねる黄金世代といえる。

谷間世代

 一方、黄金世代もあれば谷間の世代もある。

 渡辺明三冠(35)の世代は、同学年のプロ棋士はわずかに2名、1学年上に至っては一人もプロ棋士がいない。

 豊島将之名人(29)の場合、同学年のプロ棋士が一人もいない。1学年上も1名しかいない。

 一人突出した人がいると谷間の世代といえるか微妙ではあるが、人数の面では谷間世代といえる。

 こうして世代によってプロの人数にばらつきがあるのは、原則としてプロ入りが年に4名と決まっているからだ(プロ入りには下部組織「奨励会」の最終関門である三段リーグを半年戦い、上位2名に入る必要がある)。

 つまり、黄金世代がプロ入りの席を独占している間に、谷間世代がプロ入りを逃し、年齢制限(原則26歳まで)で辞めていっているのだ。

 渡辺三冠の世代は、下から上がってきた広瀬竜王の世代にプロ入りの席を奪われ、有望と思われた人もプロ入りを果たせなかった。

 渡辺三冠や豊島名人のように若くしてプロ入りする人には影響ないが、プロ入りの人数に制限がある以上、上か下に黄金世代があるとプロ入りが難しくなるのだ。

藤井聡太世代はどうなるか?

 では藤井七段の世代はどうなるだろうか。

 三段リーグには現在30名が在籍している。現在17歳の藤井七段の同世代を16~18歳と考えると、三段リーグに在籍しているのはそのうちの5名だ。

 この現状をみると、黄金世代になる確率は高くないと予想される。現在三段リーグに在籍する5名がこの先全員プロになっても、黄金世代と呼べるほどの人数にはならないからだ。

 ただし、まだ三段リーグに到達していない人も奨励会に多くいる。

 藤井猛九段(49)は羽生九段がプロ入りした年に奨励会に入ったためプロ入りが遅れたが、プロ入り後に大活躍してタイトルを複数回獲得した。

 若い人たちにはそういう可能性も十分に残されている。

 先日、筆者が共演したトークショーで森内九段は、

「強くなるためには良いライバルに恵まれることが大切」

 とお話されていた。

 これは当然、羽生九段を念頭に置いた発言であろう。プロ棋士が多く、そのメンバーで切磋琢磨したからこそ、羽生九段の世代があそこまでの戦績を残したのだ。

 永世名人を2名(森内十八世名人、羽生十九世名人)も輩出した世代は空前絶後といっていい。

 藤井七段の世代が黄金世代となり、羽生九段にとっての森内九段のような生涯のライバルが誕生するかどうか。

 そのことが藤井七段の今後の活躍に影響を与えるだろう。