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藤井聡太七段、51年ぶりの記録更新へ!年度最高勝率の達成条件とその関門とは?

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 2019年に入っても藤井聡太七段(16)が好調だ。今年は4戦全勝で、昨年から続く連勝も9に伸ばした。

 本日(30日)は、第45期棋王戦予選で中村亮介六段(33)と対戦している。

 この対局の模様は、

 以上で観戦可能だ。

歴代最高勝率へ向けて

 藤井(聡)七段の1月29日時点での今期成績は、36勝6敗(0.857)。勝率ランキング1位だ。

 年度(将棋界は4月~3月末)における歴代最高勝率は、1967年度に中原誠十六世名人が達成した勝率0.8545(47勝8敗)。現時点で藤井(聡)七段はその勝率をわずかに上回っている。

 この歴代最高勝率を上回る条件は、とにかく負けないことだ。

1/29~3月末までの負け数

0敗:無条件で記録更新

1敗:6勝以上で記録更新

2敗:12勝以上で記録更新、11勝でタイ

 今年度の残りは約2ヶ月。筆者が実際にプロ公式戦を戦っている経験もふまえて判断すると、11戦程度と予想される。

 そうなると、2敗した時点で歴代最高勝率の更新は絶望的となる。12勝をあげるには合計で14戦が必要だからだ。

 よって、歴代最高勝率を上回るために許される負け数はわずか1である。

 3月末までに11戦と仮定すると、1敗で駆け抜けた場合は10勝1敗の成績で46勝7敗(0.868)となり、歴代最高勝率を上回る。

難敵だらけ

 それでは3月までにどんな相手との対戦が予定されているのか。

 本戦トーナメントで準決勝まで勝ち残り連覇を狙う第12回朝日杯将棋オープン戦では、行方尚史八段と対戦する。同棋戦での優勝経験もある難敵だ。

 もし勝つと決勝は、渡辺明棋王か千田翔太六段と対戦する。どちらも絶好調で難敵だ。

 準決勝と決勝は2月16日(土)に行われる。

 第90期棋聖戦二次予選は決勝まで勝ち残っており、決勝トーナメント進出をかけて斎藤慎太郎王座か久保利明王将と対戦する。ここも難敵だ。

 第77期順位戦C級1組で昇級を争う近藤誠也五段とは、順位戦(2月5日)と銀河戦での対戦が決まっている。

 近藤(誠)五段は毎期高勝率をあげている若手棋士で、ここまで藤井(聡)七段の2戦2勝とはいえ、近藤(誠)五段もこれ以上は負けられぬと並々ならぬ闘志で向かってくるであろう。

 これだけの相手を向こうに回して3月末までを1敗で駆け抜けるのは並大抵のことではない。

 本日(30日)対戦している中村(亮)六段は、10代でプロ入りした煌めく才能の持ち主で、振り飛車を得意として粘り強さに定評がある。決して簡単な相手ではない。

 厳しい状況には違いないが、いまの藤井(聡)七段はその実力に加えて勝つオーラをまとっている。51年ぶりの大記録を達成する可能性も十分にありそうだ。

 再び歴史を作るのか、藤井(聡)七段の戦いぶりにご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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