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【JAZZ】〔訃報〕80年近くのキャリアでジャズを守り育てたクラーク・テリーさん逝去

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
クラーク・テリー『ハヴィング・ファン』
クラーク・テリー『ハヴィング・ファン』

ジャズ・トランペット奏者のクラーク・テリーさんが亡くなりました。享年94歳。

1920年にミズーリ州セントルイスに生まれたクラーク・テリーさんは、1930年代半ば、すなわち高校生のころからプロとして活動を開始しました。

同郷出身のマイルス・デイヴィスのアイドル的存在であったことでも知られ、6歳年下のまだ高校生だったマイルスに「クラーク・テリー以上にヒップになってやろうと決心した」と言わしめる実力と人気をすでに備えていたというのが1940年代の彼。

1960年代にかけては、カウント・ベイシー楽団、デューク・エリントン楽団、クインシー・ジョーンズ楽団に在籍して、トップ・トランペッターとしての功績を残しています。

1970年代にはフリューゲルホルンを手にすることが多くなり、独特の音色でビッグバンドの伝統継承と革新を同時に成し続けてきました。

天使たちが歌い演奏する楽団を率いるために旅立つ

彼の公式サイトのトップページを開くと、訃報が掲載されています。

「我が最愛のクラーク・テリーが、天国のビッグバンドの一員になりました」という冒頭の一文は、まさに彼の生涯を凝縮し、その安らかな眠りに捧げるにふさわしい喩えと言えるでしょう。

「家族や友人、そして多くの生徒たちに見守られて旅立った」とあるように、クラーク・テリーさんは30年にわたって後進の育成にも尽力。

生涯に900以上のレコーディングへの参加という他の追従を許さない人気と実績を誇るとともに、自らが架け橋となってジャズのエッセンスを惜しみなく伝えようとした、まさに“生きる伝説”と呼ぶにふさわしいジャイアントでした。

ご冥福をお祈りいたします。

Clark Terry- Mumbles

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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