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[訃報]イギリス・ジャズのゴッド・ファーザーと呼ばれたスタン・トレーシーさん逝去

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

イギリスのジャズ・シーンで“ゴッド・ファーザー”と呼ばれたピアニストのスタン・トレーシーさんが亡くなられました。

英国の新聞The Guardianなどによれば、英国ジャズのゴッドファーザー、ジャズ・ピアニスト/作曲家、スタン・トレーシー(Stan Tracey)が12月6日、癌のため死去。86歳でした。

出典:英ジャズ・ピアニストのスタン・トレーシーが死去|AMASS

Stan Tracey Trio『For All We Know』
Stan Tracey Trio『For All We Know』

ローランド・カークとの共演歴やウェス・モンゴメリーのDVDが残っているので見聞きしたことはあるはずなのですが、寡聞にして存じ上げなかったのがこのスタン・トレーシーさん。

イギリスのジャズ・シーンはクセモノが多いのですが、この人はその最たる例のようです。

というのは、動画を探してみて気がついたのですが。

♪Stan Tracey solo

“イギリスのセロニアス・モンク”というような評価もされているようですが、なるほど右手と左手を折り重ねるようにチョップする珍しい奏法を披露してくれています。音が非常に固く攻撃的であるゆえに、好みが分かれるところかもしれませんね。

♪Stan Tracey Quartet on Later

2009年のTVショーの映像のようです。テナー・サックスのサイモン・アレンもイギリス・ジャズっぽいと感じさせるサウンドですが、ピアノのブロック・コードの用い方も変わってるなぁと感じます。デューク・エリントンを意識しているのかもしれませんね。

訃報は残念ですが、おかげでとても刺激的なジャズをまた1つ心にとめて聴くことができました。天国のスタン・トレーシーさん、ありがとうございます!

ご冥福をお祈りします。

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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