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星野源バーチャルライブで考える、メタバース本命の1つであるフォートナイトの可能性

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
授賞式での星野源さん(写真:アフロ)

星野源さんが、6月9日からゲームのフォートナイトでバーチャルライブを開催されていたのをご存じでしょうか。

これはフォートナイトが世界中のアーティストを招いて開催している「サウンドウェーブシリーズ」というイベントで、過去に米津玄師さんが実施したライブイベントなどの延長線上にあるものです。

ライブ自体は6月9日の21時に公開された後、フォートナイト上で72時間アクセス可能という形での実施でしたが、多くの星野源さんのファンやフォートナイトユーザーが6月9日21時に参加した結果、ツイート数も急増していることが確認できます。

(出典:Yahoo!リアルタイム検索 「星野源」言及数推移)
(出典:Yahoo!リアルタイム検索 「星野源」言及数推移)

また、Googleトレンドで見る限り、海外における星野源さんについての検索数も、急増しているようです。

(出典:Googleトレンド 世界における「Gen Hoshino」の検索数推移)
(出典:Googleトレンド 世界における「Gen Hoshino」の検索数推移)

特にこうやって海外での検索数が急増するのが、世界に5億を超えるアカウントがあるとも言われるフォートナイトならではの現象と言えるでしょう。

コロナ禍で注目されるようになったバーチャルライブ

こうしたフォートナイトでのバーチャルライブが最初に大きな話題になったのは、2020年にコロナ禍が世界を襲った直後の4月に開催されたトラヴィス・スコットのものでしょう。

このライブのタイミングでフォートナイトは同時接続数1230万人を記録したといわれている上に、このバーチャルライブを通じてトラヴィス・スコットは20億円もの売上をあげたといわれています。

参考:米歌手「フォートナイト」バーチャルライブで20億円の売上

さらに8月には日本人初のアーティストとして米津玄師さんがフォートナイトでのライブを開催して話題になりました。

参考:米津玄師とフォートナイトのコラボから空想する未来の「ライブ」の姿

あれから2年の月日がたち、フォートナイトでも様々なバーチャルライブが開催され、他のサービスでもバーチャルライブが増えてきていますから、星野源さんのバーチャルライブは目新しさという意味ではそれほど大きな話題にはなっていないようです。

ただ、個人的に今回の星野源さんのバーチャルライブで感じたのは、フォートナイト側の進化です。

バーチャルライブで恋ダンス

今回のバーチャルライブで、1つの目玉となっていたのは、星野源さんが出演していたことでも有名なドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」主題歌のいわゆる「恋ダンス」を参加者が踊れるようになっていたことでした。

フォートナイトには「エモート」と呼ばれる様々なジェスチャーをすることができる機能があるのですが、今回の星野源さんのバーチャルライブの開催期間だけ、この「エモート」に恋ダンスが追加。

ライブでも、「恋」の楽曲が流れると、当然のように参加者が思い思いに「恋ダンス」を踊っているのが非常に印象的でした。

(出典:フォートナイトバーチャルライブ 筆者撮影)
(出典:フォートナイトバーチャルライブ 筆者撮影)

フォートナイトのプレイになれている参加者からすると、奇妙な一体感を感じた瞬間だったと言えるでしょう。

さらに、参加者にはフォートナイト上の特別なインクが発射される武器が配られ、その武器で会場内をインクで塗ると、そのインクのしぶきにライブ映像が映し出されるという演出もされるようになっているなど、フォートナイトのバーチャルライブが着実に進化していることを感じることができました。

メタバースの本命の1つとしてのフォートナイト

マーク・ザッカーバーグ氏が、Facebookグループの社名をメタに変更し、メタバースファーストを打ち出してから、世界的にメタバースビジネスブームが巻き起こり、様々なサービスへの注目度が増しています。

特にメタ社がVR技術を中心にしたメタバースを軸にしていることから、メタバースというとVRゴーグルを使う仮想空間のことと思っている方も少なくないようですが、もともとはメタバースの定義はもう少し広い仮想空間系サービスを対象としていた言葉で、その例の1つとして取り上げられることが多いのがフォートナイトです。

フォートナイト自体はVRゴーグルで利用するサービスではありませんが、その空間は3次元でできており、シューティングゲームとしての側面が強い一方で、利用者が自由に空間をデザインするクリエイティブモードが実装されているために、今回のバーチャルライブのような様々なイベントも開催できる仮想空間サービスにもなっているのです。

VRゴーグルにはどうしても普及台数の壁があることを考えると、現時点でメタバース的な仮想空間サービスの可能性を感じたければ、フォートナイトの方が明らかに近道とも言えるわけです。

実はフォートナイトは巨大なファッション企業

「実はフォートナイトはファッション企業として見た方がいい」

これは、メタバースの歴史に詳しいOff Topicの宮武さんにインタビューさせて頂いた際に印象的だった発言です。

フォートナイトは無料でプレイできるゲームですが、課金をすると自分の見た目や服装を変えることができるようになります。

この課金ではプレイヤーの強さは一切変わらないのがポイントです。

通常のスマホゲームでは、「ガチャ」と呼ばれる課金で強いカードを獲得するために課金をし続けるケースがありますが、このフォートナイトでは課金をしてもしなくても一切強さは変わりません。

それにもかかわらず、課金をして自分の見た目を変えたい人がいるということは、まさにメタバースの世界での「ファッション」に課金する市場が既に生まれているということでもあるのです。

しかも宮武さんの言葉を借りると、フォートナイトは約4000〜6000億円ぐらいの売り上げ規模なので、すでにPRADAと同規模のファッション企業になっていると言えるわけです。

参考:ビリオネア目前のクリエイターも出現──米国「クリエイターエコノミー」

今回の星野源さんのバーチャルライブにおいても、恋ダンスが期間限定で購入できないことを残念がる声が多かったほど。

(出典:フォートナイトバーチャルライブ 筆者撮影)
(出典:フォートナイトバーチャルライブ 筆者撮影)

今はまだフォートナイト上のバーチャルライブは、フォートナイト自体のプロモーションとして無料で実施されていますが、将来的に通常のライブと同様にチケット制になったり、アーティストのグッズが販売される可能性もあるわけです。

「メタバース」という言葉を聞いて、自分には関係ない遠い未来の話と思っている方は、是非フォートナイトのバーチャルライブを1度覗いてみることをお勧めしたいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

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