テレビとネットの境界線がAbemaTVにより消えて無くなる日

3月のアベマ像除幕式の頃に、誰が今のAbemaTV躍進を想像できたでしょうか(写真:MANTAN/アフロ)

4月に始まったネットテレビの新サービスAbemaTV(アベマTV)が着実にそのテリトリーを拡げているようです。

4月11日の本開局から

5月3日に200万ダウンロードを突破

5月30日に300万ダウンロード

6月20日に400万ダウンロード 

と、今のところは20日前後で100万ダウンロードのペースで着実にダウンロード数を増やしている模様。

当然、スマホアプリにおいて重要なのはダウンロード数ではなくアクティブ数なのでダウンロード数だけ見ていても仕方が無いのですが。ニコニコ動画モバイルの登録数が2015年8月時点で623万人で、ドコモが鳴り物入りで実施して今月末に終了するNOTTVの会員数が147万契約だったことを考えると、AbemaTVの存在感は一定の水準を超えつつある印象もあります。

AbemaTVが、いわゆる「ネットテレビ」という分野におけるメジャーアプリになる可能性は非常に高いと言えるでしょう。

もちろん、今までもネットで動画やテレビ番組を見るという意味では似たようなサービスが既に存在していました。

初期の頃からテレビ番組の違法コピーによるアップロードが物議を醸したYouTubeをはじめ、独特な文化を確立したニコニコ動画。

さらに昨年は、定額制の動画配信サービス大手である米ネットフリックスの日本参入が話題となり、dTVやHuluなどの顧客獲得競争が激しさを増していますし、テレビ局が連携して開始した見逃し配信のポータルであるTVerも注目されています。

最近ではスマホに特化した動画配信サービスであるLINE LIVEやC Channelなども話題です。

ただ、これらの競合事業者に対してAbemaTVが非常にユニークなのは、いわゆるテレビ放送のフォーマットをそのままネットに持ち込んだことにあると言えるでしょう。

AbemaTVの番組は基本的にテレビ同様ライブで配信。有料会員になればオンデマンド再生も可能のようですが、視聴者が無料で見れるのはライブ配信のみ。通常はAbemaTVを立ち上げると、視聴者はテレビ同様番組を途中から見ることになります。

従来のネットの動画配信サービスのほとんどが、再生ボタンを押して最初から動画を見る形を想定しているのとは対称的です。

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さらに放送中にはテレビCMと同様に広告が随時挿入。20チャンネル以上が同時に配信される形態のためテレビ同様にチャンネルをザッピングすることが可能で、特にスマホ視聴時のザッピングはストレスなくできます。

個人的にも、AbemaTVがネットの特徴であり優位性であるオンデマンド配信ではなく、あえてテレビと同じライブ配信にこだわったのは目から鱗でした。

結局人間って何千とか何万とある選択肢から一つの動画を選んで再生ボタンを押すよりも、チャンネルを一つずつザッピングして自分が興味ある番組を探す方が簡単なのかもしれないな、と思ったりします。

正直、AbemaTVは、スマホのワンセグ視聴よりもチャンネル切り替えの操作感とかが明らかに優れてますし、今後は地上波もAbemaTV経由で配信した方が良いんじゃないかと思えるレベル。

また、AbemaTVで放映されている番組が、いわゆるテレビクオリティである点も注目でしょう。

これは主要テレビ局の一社であるテレビ朝日と、ネット事業者のサイバーエージェントが共同で始めた無料の動画配信サービスならではだと思うのですが。

主力チャネルはテレビ朝日が制作を請け負っておりいわゆるテレビで見るような芸能人も多数出演。さらにはスペースシャワーTVやMTVのようなケーブルテレビで番組を配信しているようなコンテンツパートナーもチャンネルに参加しており、アニメチャンネルも複数チャンネル用意。

ある意味有料が当然のケーブルテレビが、無料でネット視聴できる錯覚を感じるようなチャンネル構成になっています。

いわゆる地上波のテレビ番組が、視聴者からのクレームの頻発によってだんだんとつまらないものになっているという議論は良く聞かれますが、AbemaTVであればある程度番組作りにも幅を持てるはずで、今後は深夜番組の代わりにAbemaTVで実験的な番組を試してみて、人気が出たら地上波に出していくという流れも増えるように感じます。

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参考:AbemaTVの舞台裏! テレビ朝日とサイバーエージェントはなぜ融合できたの?

個人的に、このAbemaTVに特に注目しているのは、この取り組みがテレビとネットの境界線を、良い意味でかき消そうとしている印象が強い点です。

特にテレビ局とのタッグによる番組制作が非常に印象的。テレビ朝日の人気番組「お願い!ランキング」では、地上波の放送裏番組としてAbemaTVとコラボ、表と裏で同時に番組が進行するという取り組みを行っていて、文字通りテレビ番組とネット番組の間の境界線は非常にあいまいです。

従来の日本の「テレビ」が、基本的に「ネット」とは一線を画し続けてきたのとは対称的と言えるかもしれません。

若者のテレビ離れが叫ばれて久しいですが、若者がテレビを見なくなっている一つはテレビという受像器を持っていない点にあるだけで、実際に若者は動画を見なくなっているわけでは無く自分専用の受像器であるスマホで、YouTubeなどの動画配信サービスをテレビ代わりに見ているわけで、AbemaTVはそんな若者にとっての新しい「テレビ」になる可能性が十分あるように感じます。

AbemaTVの広告モデルが、テレビCM並に効果があることが証明され、テレビ局にとっての第二の収入になることが証明されさえすれば、テレビ朝日の本放送自体もAbemaTVで見れるようになる日はそう遠くないと感じます。

AbemaTVをスマホで見てても、テレビの大画面に出せるなら出したくなりますからね。おそらくAbemaTVとテレビ放送は直接カニバリ関係になるのではなく、相互補完の意味合いの方が強くなるはずです。

当然、今後注目されるのはLINEやYahoo!、Google、ニコニコ動画などのネット事業者がテレビ朝日以外のテレビ局と提携して類似のサービスを開始し、ネットテレビ同士の戦国時代が始まるのか、AbemaTVがテレビ局にとってのネットテレビの中心になるのかという点でしょう。

既に5月には早速、テレビ東京がAbemaTVにドラマやバラエティー番組を配信することを発表し話題になっていましたが、今後どのテレビ局がどこと組んでいくのかというのが、各テレビ局にとってもテレビ業界やネット業界全体にとっても非常に重要な選択になっていくと思います。

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参考記事:AbemaTV、テレビ東京の人気ドラマ&バラエティーを順次配信

米国でもHuluが2017年にテレビ放送のライブ配信サービスを開始すると発表しており、テレビ放送のネット配信もいよいよ本格的に視野に入ってきています。

いよいよ「テレビ」と「ネット」の本格的な「融合」が始まるのは間違いなさそうです。

個人的には、ライブドアの堀江さんや楽天の三木谷さんがテレビ局を買収しようとしてでも強引に成し遂げようとしてできなかった「ネットとテレビの融合」が、サイバーエージェントの藤田さんが長い年月かけてテレビ朝日の信頼を勝ち得ることで形になりつつあるという点に、「北風と太陽」の逸話の凄さを改めて感じたりもするわけですが。

長くなりましたので、今日のところはこの辺で。