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AI+ハードウェア+ソフトウェア : Googleの戦略示した #MadebyGoogle イベント

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
発表されたPixel 2 XL(Googleウェブサイトより)

Googleは米国時間10月4日、「Made by Google」イベントを開催し、新しいハードウェアを発表しました。

イベントでは、スマートスピーカーGoogle Homeの小型廉価版と、音質にこだわった大型版、PixelBookという999ドルから販売されるラップトップ、カメラで最高画質を獲得した新型スマートフォンPixel 2・Pixel 2 XL、パーソナル翻訳者になる機能を備えるワイヤレスヘッドフォンPixelBuds、そしてAIを駆使して自動的に写真を記録できるClipsの各製品が登場しました。

Googleは9月20日に、台湾のHTCのスマートフォン部門を11億ドルで買収することが明らかになっており、2000人の従業員がGoogleに移籍することになっていました。その直後のイベントとあって、どのような戦略を展開するのか、注目が集まっていました。

The Verge: Google is buying part of HTC’s smartphone team for $1.1 billion

イベントでは繰り返し、「AIとハードウェアとソフトウェアが、デバイスの進化を加速させる」と指摘し、Googleの強みである機械学習を最大限に生かすハードウェア展開を行っていくことが強調されました。

競合となるAppleも、機械学習に力を入れており、最新のiPhone 8では、ラップトップPCに匹敵する性能を誇るA11 Bionicプロセッサなどを採用するなど、この分野への関与を強めています。

GoogleとAppleの違い
GoogleとAppleの違い

ただ、取り組み方の違いは、AppleはあくまでハードウェアとOSといった基板を用意するに留まり、具体的な活用はアプリ開発者に委ねている点です。これに対して、Googleは、既に揃えているGmailやGoogleマップ、Googleカレンダーや、AIを活用するGoogleアシスタントを通じて、より具体的なソフトウェアの部分まで提案しています。

これまでGoogleは、ハードウェア部分を他社に委ねていましたが、Made by Googleブランドの拡大とHTCのスマートフォン部門買収によって、Appleのような垂直統合モデルをより強化する展開を可能にしています。

今回発表された新製品を、まとめておきましょう。

2つのサイズを追加したGoogle Homeシリーズ

スマートスピーカー市場は、Amazon Echoが独占的に勢力を伸ばしており、Alexa対応の家電や自動車などが登場し、プラットホームとしても成長を続けています。

Googleは2016年10月にGoogle Homeを登場させ、日頃使い慣れているGoogleをいつでも声で操作できる性能や、Googleが誇る検索技術や人工知能の利用などで、Amazonに引けを取らない機能を実現してきました。ただ、存在感はAmazon EchoやAlexaに劣ります。

Googleはスマートホーム製品を開発するNestを傘下に収め、テレビと接続するChromecastなどを用いて、Google Homeとの連携強化を図ってきました。

今回の新製品は、価格の引き下げとプレミアム版の登場という2つのラインアップ強化となりました。

廉価版のGoogle Home mini(Googleウェブサイトより)
廉価版のGoogle Home mini(Googleウェブサイトより)

Google Home miniは、49ドルで購入できる手の平サイズのスマートスピーカーです。Amazon Echoはいかにもガジェットらしいプラスティックの製品であったため、Googleはファブリックでカバーした柔らかい存在に仕上げました。10月19日に日本を含む7カ国で発売されます。

音質にこだわったGoogle Home Max(Googleウェブサイトより)
音質にこだわったGoogle Home Max(Googleウェブサイトより)

またGoogle Home Maxは、Appleがリリースを計画しているHomePodの競合製品で、音質にこだわったスマートスピーカーとなります。こちらは399ドルでまずは米国から12月出荷の予定です。

Google Homeには、家族の声を判別して最適な個人情報を返す機能や、スマホなどから家中のGoogle Homeにメッセージを流すブロードキャスト、Disneyなどのコンテンツホルダーと組んだ「Action」プラットホームなどを強化し、家庭の中での存在感を強めようとしています。

薄い2-in-1ラップトップ、PixelBookの新しい価値とは

スマホアプリが利用できる、PixelBook(Googleウェブサイトより)
スマホアプリが利用できる、PixelBook(Googleウェブサイトより)

PixelBookは、ChromeOSを搭載した厚さ10mm、重さ1kgの軽量ラップトップです。12.3インチタッチパネルディスプレイを搭載しており、バックライト付きのキーボードを使ってノートPCスタイルで利用できる他、タブレットスタイルでは同時に発表されるペンも利用できます。

また、キーボード部分を折り返して、スタンドのように利用する事ができ、エンターテインメントを楽しんだり、キッチンなどのスペースがない場所で自立させる、と言った使い方が可能で、Googleは「4-in-1」と呼んでいました。

この製品のポイントは、スマホの体験をラップトップに持ち込める点です。

Google Playストアに対応しており、Androidアプリを動作させることができるため、普段Androidスマホで使っているアプリをラップトップで利用できます。

デモでは、Adobe Lightroomモバイルで編集した写真を、Instagramアプリで投稿したり、Snapchatを大画面で楽しんだり。スマホ世代のコミュニケーションやクリエイティブへの訴求をしていました。

またGoogleアシスタントを搭載する初めてのラップトップとしており、こちらもスマホと同じように、声で検索などが行えるほか、ウェブブラウザでページを見ているときに、ペンで画像やテキストをくるりと囲めば、その内容を検索できる仕組みも備えていました。

価格は999ドルからで、米国、カナダ、英国で10月31日発売です。

最高画質のカメラを備えるPixel 2

最高のカメラ画質をうたうPixel 2(Googleウェブサイトより)
最高のカメラ画質をうたうPixel 2(Googleウェブサイトより)

今回のイベントの目玉ともいえるのが、Googleブランドのスマートフォン第2弾となるPixel 2です。有機ELディスプレイを搭載し5インチ・6インチの2つのサイズで登場しました。

Googleが強調していたのは、カメラ性能。デジカメの性能を比較するDxOMarkでスマホ最高得点となる98ポイントを獲得したと発表しました。ちなみにiPhone 8 Plusは94ポイントでした。

iPhone 8 PlusやiPhone Xで注目される、背景をぼかした写真が撮影できるポートレートモードは、GoogleのAIを駆使し、1つのレンズでも同じ効果を得ることができるようにしました。もちろん、セルフィーにもポートレートモードが適用できます。

5月のGoogle I/Oで発表された、カメラを使った画像認識の機能、Google Lensは、Pixel 2が初搭載となるスマートフォンになり、いち早く最新のAR機能を利用できるとしています。

価格は5インチのPixel 2が649ドル、6インチのPixel 2 XLが849ドルで、期間限定で49ドルのGoogle Home miniが着いてくるとしています。なお、発売国に今のところ、日本は含まれていませんでした。

翻訳機能がすごい、PixelBuds

ワイヤレスヘッドフォン、PixelBuds(Googleウェブサイトより)
ワイヤレスヘッドフォン、PixelBuds(Googleウェブサイトより)

Googleは引き続き、AIやソフトウェアの強化を進めていくことになりますが、ハードウェアとの統合が進むことで、非常に面白い製品やサービスの実現が進むと考えられます。

その一端を見せたのがワイヤレスヘッドフォン、PixelBudsのパーソナル翻訳機能です。

この機能は、PixelBudsに触れながら喋ると、Pixelスマートフォンのスピーカーからは相手の言語に翻訳されて流れます。また相手の言語を聞き取って、母国語に翻訳し、イヤホンで相手が喋っていることを聞くことができる仕組みです。

つまり、スマホとワイヤレスヘッドフォンで、同時通訳を行うことができるというわけです。ちょっと夢のようなテクノロジーですよね。

もちろんこの製品はスマホのアクセサリとして用意されたわけですが、Googleのハードウェアが、今後コンピューティングをどう変えていくのかを表す良い例だった、と振り返ることができます。

また、Googleは、家族やペットとの時間を最大限に楽しみながら写真を残すことができるClipsというカメラも登場させました。今後も、Googleブランドのハードウェアはユニークなものが登場しそうで、楽しみです。

製品の詳しい情報は、Googleのウェブサイトで確認できます(https://store.google.com

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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